北京冬季五輪で、メディアセンターの食堂が自動化をされていたことが国内外で報道され、国内でも無人化、自動化を進めるレストランが増加をしている。配膳、食材のピックアップなど本質的ではない業務は自動化をして、味や接客という本質的な部分で勝負をするためだと餐飲培訓伍sirが報じた。
北京冬季五輪でブレイクしたロボット食堂
コロナ禍で大きな打撃を受けた飲食業界。それが変わり始めている。以前から無人レストランの試みは行われていたが、加速をして広がりが出てきている。そのきっかけとなったのが、北京冬季五輪のメディアセンターの食堂で、調理から配膳まで全自動というロボットレストランが導入され、これが国内外に大きく報道されたことだ。
この北京冬季五輪の無人システムを担当した千璽機器人(チエンシーロボティクス、https://www.qxfoodom.com)では、北京冬季五輪以降、問い合わせが相次いでおり、すでに複数の導入事例が生まれている。
ロボットによる自動化を進める火鍋チェーン「海底撈」
人気の火鍋チェーン「海底撈」(ハイディーラオ)では、2018年から無人レストランの開発に着手をし、2021年には無人厨房2.0を発表し、無人厨房を活用した店舗の展開を始めている。すでに1.5億元(約28.4億円)の研究開発費を投じている。
火鍋は、調理そのものは客席で客自身が行うため、厨房での作業は具材の下拵えをすることが主になる。これをキッチンで行い、密閉容器に入れ、厨房にセット。タブレットなどから注文が入ると、ロボットアームが必要な具材をピックアップし、移動ロボットが客席に配膳をするというものだ。火鍋専門店という特殊な飲食店業態が自動化になじみやすかった。
自動化により顧客体験をアップグレード
自動化だけでなく、顧客体験もアップグレードされている。海底撈の楽しみは、火鍋のタレを自分好みのものにできること。多彩なタレが用意され、それを自分でブレンドし、好きな薬味を入れ、自分好みのタレで火鍋を楽しむことができる。多くの場合、フロアスタッフが好みを確認して、おすすめのタレの調合を教えてくれるので、これをベースに好みの挑戦をしていくことができる。
会員になると、どのタレが気に入ったが記録をされ、次回からは自分が調合したタレが出てくることになる。スタッフは配膳などが自動化されたことにより、接客に多くの時間を割けるようになった。
2018年11月に北京市に開店をした自動厨房店舗では、客席フロアの装飾にも凝り、人気店として定着をしている。この店舗では、壁面がすべてディスプレイになっており、表示される映像により雰囲気ががらりと変えられる工夫がされている。
顧客体験に貢献しない業務は自動化をしていく
海底撈の魅力は情熱接客だ。その接客ぶりは「変態級」とまで言われることがある。スタッフがハネ防止のエプロンを着させてくれたり、タレをつくてくれ、調理も手伝ってくれる。キャンディやポップコーン、果物を無料で配ってくれる。変面や麺打ちのパフォーマンスも随時行われる。さらには、店内に無料の靴みがきコーナーやネイルアートコーナーまで設置されている。
自動化を進めると、このような情熱接客が薄れてしまうのではないか。海底撈ではまったく逆だと言う。飲食店の基本は、料理と接客で、下拵えや配膳は、顧客の体験を変えることのない業務にすぎない。このような業務を自動化することにより、顧客体験に寄与する接客にスタッフの労力を集中させる。海底撈にとって、自動厨房や配膳ロボットというテクノロジーは、先進的な技術を導入したというよりは、より海底撈の魅力を高めるための当然の改善なのだという。
本質的ではない業務を自動化し、本質的な業務で競争をする
飲食店により、何がその飲食店の本質なのかは違う。海底撈のように接客が本質である飲食店もあれば、味が本質であったり、価格が本質である飲食店もある。その本質以外の部分では自動化を進め、本質部分をより高めていく。それがコロナ禍以降の飲食店の基本的な考え方になっている。
コロナ禍による営業制限、人数制限は飲食業界に大きな打撃を与えた。飲食店は自店の本質をより際立たせていかないと生き残っていけない状況になっている。その危機感が飲食店を進化させている。