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ロボットの限界を超えた「武BOT」。Unitree創業者が、3ヶ月半の時間で実現するまでの秘話を語る

ロボットの身体性の最先端を示した特別番組「春晩」でのロボット演舞。与えられた時間はわずか3ヶ月半でしかなかった。その中でどのようにして実現したのかをUnitreeの創業者が央視新聞に語った。

 

ロボットの身体性を示した「武BOT」

2月16日の春節(旧正月)前の大晦日の特別番組「春晩」で、宇樹科技(ユーシュー、Unitree)は、ロボットと子どもたちが武術を披露する「武BOT」の演目を披露した。

この中で、ロボットたちはパルクールや片足踏切連続バク宙3回転など、人間ですら難しい技を披露した。しかも、複数のロボットが同期をして動き、子どもたちとの協働も見事に行った。

この「武BOT」の内幕を、春晩ディレクターの遅宇涵氏が、Unitreeの王興興CEOに聞いた。

▲片足踏切連続バク宙3回転。人間でも難しい技をロボットがこなしたことで注目された。

▲インタビューに応じるUnitreeの創業者、王興興氏。「武BOT」で国内外から注目された。

 

人間にもできない動作を実現

Unitreeのロボットたちは、これまでのロボットの常識ではあり得ない演技を披露した。特に注目されたのが、片足踏切連続バク宙3回転だ。人間でも難しいほど機敏に動いている。

また、射出板を使った高さ3mの空中回転も注目された。空中で体勢を調節して重心を制御しないと足から着地することができない。

いずれも、仮想空間で動きをシミュレーションして機械学習させるなどという単純な手法では実現できない動きだ。

▲ロボットが異なる演技を強調しながら行う。射出板による回転ジャンプは、空中で重心を調整する姿勢制御をしなければならず、難易度が高い。

 

拡散モデルをさらに発展させたUnitree

Unitreeの技術は、ロボットの小脳にあたる身体制御が進んでいる。ロボットに、現在の姿勢から次の求める姿勢に動けという命令を与えると、ロボットはそのとおりに関節を動かすというわけにはいかない。なぜなら、単純に姿勢を変えるだけでは、バランスを崩して転倒してしまうからだ。

さらに、アクチュエーターの動きの限界、荷重の限界などがあり、ロボットには物理的にできない姿勢がある。

ここを、拡散モデルAIを利用して乗り越えている。拡散モデルは画像生成に使われるAIモデル。猫の画像に少しずつノイズを載せていくと、最後はランダムな砂嵐画像になる。このノイズの載せ方を学習し、最後にこの学習過程を逆回転させると、砂嵐画像から猫の画像を生成できるというものだ。

ポイントは、少しずつ正解に近づいていくというもので、ロボットの動きもこの拡散モデルを使って、少しずつ取ってはいけない姿勢を避けながら、要求された動きを生成していく。

この拡散モデルをロボットの姿勢制御に応用するということが、中国のロボット技術の突破を実現した。

ただし、この拡散モデルは計算量が多く、時間がかかる。つまり、素早い動きに追いつけない。そこで、Unitreeはフローマッチングという新しい技術開発を行った。これは、NGの姿勢領域を避ける大まかな動きをあらかじめ学習しておくというものだ。すると、拡散モデルはすべての方向に正解の動きを探索する必要がなくなり、フローが示す正解方向の探索だけを行えば済むようになる。

これにより計算時間が大きく短縮され、武BOTのような素早い動きが可能になった。

▲人間と同じ槍を握り、引っ張り合いをする。人間は力の入れ方が不安定であるため、リアルタイムで対応しなければ槍を落としてしまうことになる。

 

わずか3ヶ月半の時間しかなかった

この武BOTのプロジェクトがスタートしたのは、2025年11月だった。つまり、3ヶ月半の時間しか用意されていない。まず、中央電子台のスタッフの他に、河南塔沟武術学校の武術選手に協力してもらい、演技内容を立案。

演目が決まると、まず武術選手に演技をしてもらい、そのデータをキャプチャーする。Unitreeは、マーカーなしで人の動きをキャプチャーできる「UnifoLM」を開発している。ベースになっているのは、アリババのオープンソースLLM「Qwen 2.5」だ。

人間のデータをキャプチャーしても、それをそのままロボットに移すわけにはいかない。人間とロボットは骨格や重心が異なるので、そのままの動きを模倣させると、ロボットは転倒してしまうからだ。UnifoLMは、この人間の動きをロボットの動きに変換する機能も備えられている。

 

リハーサルは直前の5回しかできない

こうして、ロボットのデータができあがると、200以上の要素に分解し、それを仮想空間の中で1億回以上反復させ、学習を進めていく。

ところが問題が発生した。中央電子台のメイン会場ステージは、空いているわけではなく、他のイベントや番組制作に使われている。春晩直前は舞台装置などの工事が入るため、武BOTの会場リハーサルは直前に5回しか行う機会が与えられなかったのだ。学習した結果を検証し、調整をする時間がない。

そこで、Unitreeは社内にステージを模したスペースを確保し、ダミーの大道具を設置し、ここでリハーサルと調整を繰り返していった。

すると、ロボットよりも演目上の問題が続出した。舞台転換をするときに大道具を動かす。ところが動かし方によっては、ロボットのLiDARの障害となり、環境把握ができなくなってしまうことがわかった。このような問題を解消するために、舞台転換のやり方は再考しなければならなかった。

さらに、複数のロボットが協調して動くシーンがある。それも全員が同じ動きをするのではなく、タイミングを合わせて別々の動きをしなければならない。これも、時間だけを頼りに演技を進めるとタイミングがズレることがあるので、音楽のリズム、照明の変化、ステージの振動などをセンシングし、同期を補正する必要があった。

▲会場でのリハーサルが5回しかできないため、社内に同じセットを用意してリハーサルを繰り返した。

 

上場が見えてきたUnitree

Unitreeの春晩チームのあるスタッフは、番組終了後に「成功できるかどうかヒヤヒヤでした」と語っている。春晩はライブ放送なので一発勝負だ。大きなトラブルなく演目を終えられたことで、Unitreeの名前は世界から一気に注目されるようになった。Unitreeは上海証券取引所の科創板(STAR Market)に上場申請をした。報道によると、米ナスダック上場にも動いているという。

 

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