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火鍋も回る時代。高級化路線が進みすぎた火鍋の新しいスタイルーー回転火鍋

回転火鍋店が急速に増えている。火鍋が人気になり高級化が進み始め、高級火鍋の客離れが起き始めている。その代わりに登場してきたのが回転火鍋店だ。安くて満足感のある火鍋が戻ってきたと人気になっていると胡華成が報じた。

 

コロナ禍で苦境に立たされる火鍋チェーン「海底撈」

火鍋チェーンで最も有名な「海底撈」(ハイディーラオ)が苦境に立たされている。2022年中期報告によると、2020年上半期の営業収入は167.64億元となり、昨年同時期から16.6%の減少。損失は2.67億元、昨年同時期は利益が0.97億元だった。

この業績は、投資家の予想よりも悪いものだった。昨2021年、海底撈はキツツキ計画を発表した。昨年6月末時点で1597店舗を展開していたが、300店舗規模の出店調整を進め、2022年は黒字を維持するというものだった。

飲食店として火鍋は非常に扱いやすい料理だ。なぜなら、来店客が自分で調理をするため、調理師の技術に頼る部分が少ない。さまざまな食材が利用できるため、新しい具材を提供することで新鮮さを維持することができる。スープとタレの味さえ受け入れられれば、新規出店も楽であるため、急成長をすることができる。

このような理由から、海底撈の成功を見て、さまざまな火鍋チェーンが登場し、成功をしてきた。

▲火鍋は本来庶民的な食べ物で、安くて満足できるというのが長所だった。しかし、チェーン化がされていくと高級化が始まり、コロナ禍の値上げで、客離れが起き始めている。

 

火鍋チェーンの課題は初期コスト

しかし、それがコロナ禍により、火鍋店のデメリットが見えてくるようになった。

最大の問題は、家賃が高いことだ。火鍋店は人流の多い繁華街、ショッピングモールなどに出店をする必要がある。店舗面積も広くする必要があり、少なくても200平米、1000平米近い大型店も珍しくない。年間の家賃は50万元(約1000万円)ほどになる。

2つ目の問題は、インテリアにお金がかかることだ。火鍋は単なる食事ではなく、家族や友人でやってきて食事を楽しむ場所だ。そのため、雰囲気のいい店が選ばれる。豪華にするかモダンにするかは火鍋店の戦略次第だが、差別化をするために、内装インテリアが重要になっている。このような内装に100万元(約2000万円)程度をかけるのは常識になっている。

この他、チェーンへの加盟費用など、火鍋店は意外に初期コストがかかる。

 

差別化が難しい料理

3つ目の問題は差別化が難しいことだ。各火鍋店は、スープやタレの味に特徴を出し、他店にはない具材を提供しようとする。しかし、基本的にはさまざまな具材を辛いタレで食べるというもので、差別化ポイントが消費者の記憶に残りづらい。火鍋と言えば、どこでも味は大差ないという感覚になってしまっている。

この問題を解決するために、海底撈は接客とタレの自由を提供した。異常とも言える親切接客ぶりで来店客の記憶に残り、タレは各種用意し、自分の好きな味にブレンドできる。海底撈は、普通の火鍋チェーンとは違う、普通の飲食店とは違うというイメージにより成功をした。

▲差別化がしづらい火鍋で、海底撈は接客で差別化を図って成功した。店内になぜか無料の靴磨きやネイルサロンがある。

 

安くて満足の火鍋も値上げへ

コロナ禍の打撃を受け、海底撈を始めとする火鍋チェーンは値上げをせざるを得なくなっている。以前は火鍋と言えば、1人70元程度で食べられる気軽な食事で、それでいながら満足感が大きいというのが魅力だった。しかし、値上げが続き、今では100元以内で食べられる火鍋チェーンはほとんどなくなってしまった。

さらに、提供する具材の価格は据え置き、量を少なくしているチェーンも増えている。お腹をいっぱいにしたい人は、2人前を注文することになり、これがさらに火鍋が高いものに感じさせるようになっている。現在は、20代、30代の量を食べたい人にとっては、火鍋は150元から200元程度かかる食べ物になっている。

高級料理の価格帯ではないものの、少し贅沢な食事になる。その少し贅沢な食事では、他にもさまざまな料理があり、火鍋の競合は一気に多くなる。

 

新たな勢力、回転火鍋店

このような火鍋の苦境を解決するために、現在、急速に増えてきているのが「回転火鍋店」だ。日本の回転寿司と同じように、カウンターがあり、回転するレーンが備えられている。カウンターにはIH調理器がついていて、そこで鍋を温め、回転してくる食材から好きなものをとって、自分で煮て食べる。

価格や提供形態は店によって異なるが、串に刺さった食材が2元、3元程度で、会計時に串の本数を数えて精算をする。あるいは40元で基本食材は食べ放題などというコースを用意している店もある。量を食べる人でもだいたい60元ぐらいで収まるような価格帯だ。

店舗側から見ると、カウンター方式であるため、広い店舗は不要になる。回転レーンの初期投資が必要になるが、回転レーン自体が現在では物珍しく目を惹くため、その他の内装インテリアにかける費用は抑えられるため、初期コスト増にはならない。

▲典型的な回転火鍋。カウンター席のみで、好きな食材をとって食べる。会計時に串の本数を数えて精算する。安くて満足感のある火鍋が戻ってきたと人気になっている。

 

火鍋の原点回帰にもなっている回転火鍋

調理師も不要で、店舗スタッフも削減でき、人件費が大きく削れる。さらに、そもそも火鍋に求められていた「安あがりで満足ができる」食事を提供できる。コロナ禍が完全に終息しない現在、4人以上で食事に行き、テーブルを挟んで語り合うという食事の仕方は減り、1人か2人で静かに食事をして早めに帰るというスタイルが定着しようとしている。

本来、火鍋は庶民的な食べ物で、それが普及をするにつれ、高級化をしていった。その高級化がいきすぎて、火鍋本来の魅力が失われようとしている。回転火鍋店は、この火鍋本来の魅力を取り戻してくれる存在であることから、今後、急速に増えていくと見られている。


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▲回転火鍋店は庶民の新しい飲食スタイルとして、若い世代から注目をされている。グルメ系の配信主による取材。19.6元で基本食材食べ放題の店。