中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

地下鉄の保安検査は必要なのか。市民の間で議論が始まる

中国の地下鉄は乗車前に手荷物などの保安検査を受けなければならない。このため、改札前は混雑するのが日常だ。しかし、ほんとうに保安検査は必要なのか。市民から不満の声があがり、ネットで大きな議論になっていると玅巫が報じた。

 

地下鉄に乗るにも保安検査が行われる

中国の地下鉄を利用する時は、改札から入る前に、空港と同じような保安検査を受けなければならない。手荷物はX線検査機を通す必要がある。

地下鉄のように混雑する公共交通で、このような検査を行っている国は意外と多い。中国以外にもインド、ロシア、タイ、エジプトなどで実施されている。

問題は混雑との兼ね合いだ。特にラッシュ時は保安検査に長い行列ができることがある。そこは現実を考え、多くの都市で、X線検査機を通さなくても、検査員に中を見せれば通すという現実運用をしている。このため、男性は極力バッグを持たないようにし、女性も口が広く開ければ中が見えるタイプのバッグを使う人が多い。これであればX線検査機に並ばずに改札にいけるからだ。

▲地下鉄改札前の保安検査場では長い行列ができるのが日常の光景になっている。

 

深圳市が厳格したことに不満続出

ところが、深圳市地下鉄がこの検査を突如厳格化し、利用者から不満の声があがっている。一般的にはスマートフォンや財布が入るような小さなポシェットや、口の広いバッグは検査員に中を見せて確認しておけばX線検査機を通す必要はなかったが、これが厳格化されて必ずX線検査機を通さなければならないようになった。

これにより、保安検査に並ぶ行列が長くなり、朝夕のラッシュ時にはなかなか改札にたどり着けないということが起こり、利用者から不満の声があがっている。

それだけではなく、欧米や日本、韓国の地下鉄では、このような検査は行っていない。それでいて、日本の地下鉄サリン事件以外、大きな事件というのは起きていない。そもそもこのような検査は必要なのかという声もあがり始めている。

▲深圳地下鉄では、保安検査を厳格化したため、深刻な混雑が発生した。

 

保安検査のためのコストは約5000億円

保安検査により地下鉄に乗るのに時間がかかるという以外、そのコストも問題視され始めている。全国で地下鉄安全検査を担当する人は25万人と言われており、検査機の保守、検査監督などを含めると35万人の人が従事していると言われる。

2025年のデータでは、一線都市での月の手取りは5500元から7000元、二、三線都市では3500元から5000元となっている。年収にすると一線都市では6万元から9万元、二、三線都市では4万元から6万元となる。

平均の年収が6万元だとすると、その他の設備の調達なども併せて年間コストは220億元(約5000億円)を超えることになる。

 

運賃の1/4が保安検査コスト

このコストは当然ながら乗客が負担している。保安コストを各駅乗降客数の合計で割ると、一人あたり0.47元から0.65元となるが、この乗降客数は乗換客も含んでいるため、実際に改札を通って乗車する人数は少なめになるため、一人あたりの保安コストは1.0元に近づいていくことになる。

多くの都市の地下鉄の初乗り運賃は3元(約70円)であるため、運賃の1/4から1/3が保安コストということになる。

 

赤字運営の地下鉄を救う保安検査廃止の声

地下鉄は基本的に赤字運営になっている。2024年のデータでは、地下鉄の総収入は約1200億元で、そのうちチケット収入が700億元、店舗や広告などの収入が500億元となっている。一方で、支出は2100億元となっており、毎年900億元の赤字が生まれている。

この赤字は各地方都市の財政支援により補填している。つまり、地下鉄が公共交通であることを鑑み、税金により低価格で乗車できるようになっている。保安検査のコストがこんなにかかるのであれば、廃止をして地方政府の財政負担を減らした方がいいのではないかと主張する人もいる。

 

賢い運用をする香港地下鉄

例えば、香港でも地下鉄の保安検査は行われているが、平日の朝夕のラッシュ時には行われない。乗車の効率を考え、検査員が監視をし、明らかに不審な人物に声掛けをするにとどまっている。しかし、休日などのさまざまな人が乗車する時間帯や、大きなイベントがある時には保安検査を行う。効率と安全のバランスを考えながら運用している。

中国の面倒だった地下鉄の保安検査を大きく変える議論が始まろうとしている。

 

バックナンバーポッドキャスト放送中!

apple.co

 

ビデオ版バックナンバーも放送中!

www.youtube.com

 

 

 

中国製Wi-Fiルーターの販売禁止に踏み切る米国。その一方で、結局、全部販売が続けられる可能性も

米国連邦通信委員会(FCC)は、サイバー攻撃の踏み台に使われているという理由でTP-Linkを始めとする中国製家庭用Wi-Fiルーターの輸入や販売を禁止する措置に出た。しかし、米国ブランドのルーターも多くが海外製であるために、結局、すべてのルーターの販売が継続する見込みだと芯硬件が報じた。

 

海外製Wi-Fiルーターの輸入を禁止する米国

米国連邦通信委員会(FCC)は今年2026年3月23日、国家安全保障上のリスクを理由に、米国外(主に中国等)で製造された消費者向けWi-Fiルーターの新製品に対する輸入および機器認証の規制措置を開始した。

この日以降、海外製の新機種の機器認証を停止する。つまり、米国内では販売できなくなる。すでに機器認証を得ている現行機種の販売は続けられるものの、2027年以降、すべてのソフトウェア、ファームウェアのアップデートができなくなる。2027年以降は、自身のセキュリティのために使わないことが推奨される。

 

TP-Linkを排除しても問題は解決しない

しかし、この措置には無理があり、すでに後退し始めている。この措置のそもそもは中国系と言われるサイバー攻撃グループ「Volt Typhoon」が、TP-Linkの家庭用Wi-Fiルーターの脆弱性をついて乗っ取り、それを踏み台にして攻撃していたことが発覚したのがきっかけだ。このVolt Typhoonは、米国のインフラネットワークへの侵入を試みており、ランサムウェアなどを使って身代金を取ろうとする一般的なサイバー攻撃グループとは行動が明らかに異なっている。行動から、インフラを乗っ取り破壊しようとしているのではないかと推測ができる。

この踏み台にTP-Linkのルーターが使われていたという理由で、FCCはTP-Linkをターゲットに輸入禁止にし、外国製ルーターを一斉排除しようとしている。

ところが、米国の家庭用ルーター市場ではTP-Linkのシェアが60%もある。つまり、TP-LinkがVolt Typhoonに協力したわけではなく、TP-Linkのルーターが広く使われているからその脆弱性が利用されたと考えるのが自然だ。実際、Netgear、Ciscoなどの米国製ルーターも、Volt Typhoonによって脆弱性が利用されている。外国製ルーターを禁止したところで、サイバー攻撃グループは広く使われている製品の脆弱性を利用するだけの話だ。

▲Counterpointによるグローバル市場でのシェア。TP-Link、シャオミが上位を占めている。

 

米国にはもはや存在しない米国製ルーター

さらなる問題は、FCCの措置対象が「海外製造されたルーター」になっていることだ。米国ブランドのGoogle Nestはベトナムと中国で生産されている。Netgearはベトナムと台湾で生産されている。Linksysも台湾・鴻海(ホンハイ)傘下の企業でありベトナムで生産されている。UbiquitiやAmazonのルーターも海外生産だ。

唯一、テキサス州という米国内で生産されているのはSpaceXのスターリンクルーターだけだが、部品に関してはベトナムなどから調達している。

一方、TP-Linkは中国発祥のブランドだが、カリフォルニア州に子会社を設置し、米国向けに設計し中国で生産したルーターを輸入して販売している米国企業になっている。

現在のFCCの基準で「海外製のルーターを禁止」にしてしまうと、米国で使われているルーターのほぼすべてが販売禁止になってしまう可能性がある。

 

結局、すべての中国製ルーターの販売が継続する可能性も

FCCもこの問題に苦慮しているようだ。2027年1月からは海外製ルーターのファームウェアアップデートを禁止する処置を緩和し、2029年1月に延期した。

さらに、海外製ルーターを一律に禁止するのではなく、免除の申請を認めることにした。米国ブランドはすぐに申請し、11社が免除措置を得た。TP-Linkは米国子会社が申請したが今のところ承認されていない。

ところが、T-Mobile、AT&T、ベライゾンなどのルーターは、中国の建漢科技が受託製造している中国製だ。この3社に関してはなぜか免除が承認された。国防総省と国土安全保障省の安全性承認を受ければ、FCCは自動的に免除措置を与える立て付けになっているため、この3社は安全性承認を受けることにより免除措置を獲得した。TP-Linkも国防総省と国土安全保障省の安全承認を申請している。客観的な基準であるため、承認が得られれば、FCCの免除措置も自動的に得ることになる。

結局、ほぼすべてのメーカーが以前と同じように販売を続けられるようになる可能性がある。このFCCの措置は何の意味があったのか、単に機器認証の条件を厳格化すればよかっただけではないのか、FCCの行動に米国内からも疑問の声があがり始めている。

 

バックナンバーポッドキャスト放送中!

apple.co

 

ビデオ版バックナンバーも放送中!

www.youtube.com

 

 

 

生成AIでポルノコンテンツが氾濫。一般女性も素材利用被害の対象に

生成AIの登場によりポルノコンテンツが氾濫し始めている。未成年がそのようなコンテンツに触れるだけでなく、一般女性の写真が素材として利用されるという問題も起きていると中国法治観察が報じた。

 

生成AIでポルノコンテンツが大量拡散

生成AIが広がるとともに、アダルトコンテンツの制作にAIを利用する人たちが登場している。漫画、アニメ、実写とも、生成AIを使えば簡単にアダルトコンテンツを生成することができる。それを販売、提供することで、短期間で大きく稼ぐことができる。そのようなことからアダルトコンテンツサイトが急増している。

アダルトコンテンツサイトの摘発も進んでいる。男の子の母親である蘇さん(仮名)は、息子がネットで課金をしていることは認めていた。お小遣いの範囲で好きなサイトを利用することは問題ないと考えていた。その支払い履歴は保護者である蘇さんは見られるようになっている。

ある日、息子の支払い履歴を確認すると、多くの支払いが午後11時以降であり、しかも額がかなり増え続けていた。不審に思った蘇さんは息子にどのようなサイトに課金したのかを尋ねると、息子は過剰に抵抗して話さない。

問い詰めると、「羞羞色漫」というサイトで、アダルトコミックが有料で読めるというものだった。明らかに違法なコンテンツが並んでおり、蘇さんは公安に相談した。

公安が調査を行うと、このサイトには違法なコンテンツが数千件以上あり、2023年1月から2024年4月までの間で、閲覧数は1億回を突破し、1200万元(約2.7億円)の利益を得ていることが判明した。

▲このような成人コミック閲覧サイトが無数に存在し、未成人の間で密かに人気になっている。

 

成人コミック、アダルト映像も生成AIで制作

このようなアダルトコミックのサイトは無数に存在する。その多くが生成AIによる制作だ。AIエージェントに脚本を相談しながらつくってもらい、そこに見本となる作風の画像を見せれば、コミックを簡単に生成してくれる。一人で1日に数十冊を制作することも可能だ。

さらに、3Dモデルによるアダルト動画も生成できるようになり、最近では動画生成AIの性能が著しく向上したため、実写と区別がつかないレベルのアダルト映像も生成することができるようになっている。

▲SNSには違法コンテンツを生成するためのプロンプト集や規制の外し方ガイドなどの情報商材があふれている。

 

オープンソースなら規制も簡単に外せる

一般的な生成AIでは猥褻な映像、違法な映像を生成しようとすると、プロンプト段階で拒否される。しかし、これはプロンプトに含まれているNGワードを検出して拒否しているだけだ。大手動画生成AIでは、さらに生成した映像をAIがチェックし、問題があると表示しないという処置をとっている。

しかし、今、動画生成AIもオープンソースになっている。自分で高性能のPCを用意し、ソースコードを入手してインストールすれば、自分でどのようにもできるようになる。NGワードの検出や最終的なチェックの指示を書いている行を、ソースコードから削除してしまえばいいだけだ。これでどんな映像でも生成できるようになる。

このようなオープンソースを利用して、「どんな映像でも生成できる」ことを売りにして利用料を取るようなサービスも登場している。

▲報道画面。公安が、容疑者に違法コンテンツの生成を再現させているところを捜査資料として撮影している。

 

一般女性も被害の対象に

この生成AIポルノの問題は、今後大きな社会問題になりかねない。今、密かに流行しているのが、昔流行ったアイコラ(アイドルコラージュ)のAI版だ。女優やアイドルの顔やスタイルをAIに見せて、アダルト映像をつくるというものだ。個人で楽しむのであれば、その趣味の良し悪しは別として許されるとしても、これが他人とやり取りされるとさまざまな問題を引き起こすことになる。

さらに問題なのは、AIポルノの素材として、アイドルなどの有名人だけではなく、知人や街で見かけた普通の人も利用できるということだ。数枚の写真があれば、その人が主人公になったポルノ映像を生成することができる。甚だしい人権侵害であるのはもちろん、AIポルノの映像は実写ともはや見分けがつかないレベルになっているため、恐喝や名誉毀損といった事件も起きかねない。

すでに、自動車ショーなどの展示会にいるイベントコンパニオンを素材としたAIポルノコンテンツが出回っており、公安は捜査を始めている。この問題を放置すると、さまざまなイベントや街中では撮影禁止にせざるを得なくなる。生成AIは素晴らしい技術ではあるが、無数の課題も生成している。

▲違法コンテンツの素材には、著名人だけでなく、一般の女性も利用されている。

 

バックナンバーポッドキャスト放送中!

apple.co

 

ビデオ版バックナンバーも放送中!

www.youtube.com

 

 

 

生成AIによる実写ショートドラマが人気も、同じ顔、同じ表情が登場する不気味の谷問題も

生成AIで実写ドラマがつくれるようになっている。これにより大量の新作ドラマが登場し、ショートドラマを見る人が増えている。しかし、たびたび同じ顔、同じ表情が出てくる不気味さに批判の声があがっていると中新経緯が報じた。

 

生成AIによりショートドラマの人気が上昇

中国でショートドラマが人気になっている。ショートドラマはミニドラマ、短尺ドラマとも呼ばれ、1話1分か2分程度で、50話100話あるという形式のものだ。その多くが「10話までは無料、以降は課金」という仕組みになっている。

5分程度の暇があれば数話を見ることができるため、以前から人気はあったが、今年2026年になって人気が爆発している。その理由はAIショートドラマの登場によるものだ。

▲2026年上半期の抖音でのショートドラマの再生回数。今年前半で急激に伸びている。生成AIにより大量の新作ドラマが登場したからだ。

▲生成AIによるショートドラマの種類別比率。当初は生成AIで2Dアニメをつくるケースが多かったが、急速にAI実写ドラマに移行している。

 

ドラマ制作は俳優とスタジオから生成AIに

生成AIの性能があがり、実写ドラマの生成が可能になっている。これを利用して、スタジオや俳優を使わず、オフィスのパソコンの中で生成AIを使ってドラマ制作をする集団が続々と登場している。

もはや実写と見分けがつかないレベルになっているだけでなく、実写では予算がかかりすぎて難しかった特殊効果やロケーションが使えるため、表現の幅が広がり、ショートドラマの人気が再燃している。

▲AIショートドラマを制作する会社。少人数でデスクの上だけでドラマ制作ができるようになっている。

 

同じ顔が同じ表情をする不気味の谷

ところが生成AIなりの課題も残されている。それは異なるドラマであっても、同じ顔の人が登場することが多いことだ。「この人、どこかで見たことがある。別のドラマで見た」ということが多すぎる。これが人間の俳優であれば人気俳優ということになるが、AIショートドラマの場合は同じ顔が登場する頻度が高いため、気になる人が出始めている。ヒーローとヒロインはだいたい同じ顔のイケメン美女になることが多い。

それだけではない。役が異なり、年齢が異なっても同じ顔のことがあるのだ。幼女と女性と老婆がよく見ると同じ顔をして、同じ表情をする。ここまでくると不気味さを感じる人も出てきている。SNSでは「AI顔、生理的な嫌悪感」というワードがランキングに入るようになっている。

▲AI顔の表情は、同じような表現になりやすい。判で押したような表情が多いことに違和感を感じている人も多い。

 

顔などの見た目を指定するLoRaという仕組み

これは生成AIの課題のひとつにもなっている。生成するときに「カフェでコーヒーを飲んでいる美女」と指定すると、生成AIは最もよく訓練されたデフォルト顔を出力する。

これでは面白くないので、「髪型はxx、目はxx…」と細かく指定していくと、どこまで細かく指定しても、生成するときによって揺らぎが生まれてしまう。つまり、シーンによって顔が微妙に違ってしまい、場合によっては別人に見えてしまうことがあるのだ。

そこで、LoRa(Low-Rank Adaptation)データを使うことになる。これは生成AIの推論経路を制限してしまう仕組みで、黒髪のキャラクターであればAIは髪色については黒以外の生成演算をしなくなる。これにより、どの場面でも同じ人物が生成されるようになる。

▲異なるドラマに同じ顔の人がよく登場する。同じLoRaデータを使い回すからだ。

 

できあいのLoRaを使い回してしまうことが多い

しかし、このLoRaを作成するには、学習したい画像を数十枚用意し、それにタグ付けをし、AIに学習させて作成する必要がある。最初の元画像も生成AIで作成するが、異なるポーズ、角度の画像を大量に用意する必要があり、かなりの手間がかかる。

そこで、多くの制作チームが、販売されているLoRaを購入して使い回すことになっているのだ。もちろん、大量のLoRaを用意してそれを適宜使い分ければいいのだが、予算が少ない制作チームは少量のLoRaを使い回してしまう。これにより、異なるドラマに同じ顔がたびたび登場することになっている。

 

バックナンバーポッドキャスト放送中!

apple.co

 

ビデオ版バックナンバーも放送中!

www.youtube.com

 

 

 

アリババがコンビニの展開を始める。周囲8kmエリアに30分で配達の新小売コンビニ

アリババが「タオバオコンビニ」の展開を進めている。周辺に30分で配達するという新小売コンビニだ。価格はコンビニよりも安く設定され、コンビニにとって脅威になる新業態が登場したと零售商業財経が報じた。

 

アリババがコンビニの展開を始める

アリババのEC「淘宝網」(タオバオ)がコンビニの出店を始め、華東地区を中心にすでに800店舗を突破した。

といっても普通のコンビニではなく、新小売コンビニとも呼べるものだ。アリババはすでに新小売スーパー「盒馬鮮生」(フーマ)を展開して成功している。これは「店倉合一」と呼ばれるモデルだった。一見普通のスーパーに見えるが、店内レイアウトはピックアップに最適化されており、30分で配達を行う。消費者はお店で買うこともできるし、オンライン注文もできる。

タオバオコンビニも同じように、30分で配達を頼むこともできれば、店舗に行って購入することもできる。フーマと同じく、店倉合一モデルを採用している。

▲タオバオコンビニの中はほぼ倉庫。ピックアップのしやすさを優先したレイアウトになっている。来店して買い物することも可能。

 

ほぼ倉庫に近いコンビニ業態

タオバオコンビニは、フーマと同じく店倉合一モデルといっても、かなり倉庫寄りのレイアウトだ。店舗によってはオフライン客を受け入れずにダークストア化しているところもある。

その一方で、一倉多業モデルを採用している。配達はアリババのタオバオフラッシュ(元ウーラマ)が配達するだけでなく、美団などの他デリバリープラットフォームも利用している。アリババだけでサービスを提供するのではなく、広く他プラットフォームも活用してビジネスを拡大する戦略をとっている。

アリババの幹部がメディアに漏らした情報によると、客単価は30元前後で安定していて、単店1日の売上は2万元から3万元の間で推移しているという。中国の一般的なコンビニの単店1日の売上は平均して5000元から6000元程度であることを考えると成功していると言える。2万元は、大都市中心部の大型コンビニでもなかなか達成できない数字だ。それが地方都市でも達成できる。

▲表に面した場所に、デリバリースタッフへの受け渡し場所がある。スタッフがピックアップし、デリバリー騎手がそれを30分で配達する。

 

安くて配達してくれるタオバオコンビニ

原則として倉庫であるため、大通りに面している必要はない。そのため、家賃を安く抑えることができる。配達プラットフォームの守備範囲はだいたい8km程度であるので、地方都市の端に店舗を設置することも可能だ。

このようなメリットで、コンビニのような立地にこだわる必要がなく、価格は一般コンビニよりも安く、スーパーかEC並の価格に設定できる。消費者は「自分で出向いて高価格のものを買う」か「30分で配達してもらって低価格で買うか」の選択になっている。配達料は15元からに設定されているが、クーポンやセールを利用すると実質無料になることが多い。

同じく美団も同様の「美団松鼠コンビニ」を720店舗展開し、京東も「京東七鮮」の展開を始めている。この新小売コンビニが既存のコンビニの強力なライバルに育とうとしている。

▲ピックアップに最適化された商品棚だが、買うものが決まっている人にはかえって商品を探しやすい。

 

バックナンバーポッドキャスト放送中!

apple.co

 

ビデオ版バックナンバーも放送中!

www.youtube.com

 

 

縮小する月餅市場。その中で成長する老舗「広州酒家」。老舗ブランドの生き残り方

「まぐまぐ!」でメルマガ「知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード」を発行しています。

明日、vol. 353が発行になります。

登録はこちらから。

https://www.mag2.com/m/0001690218.html

 

今回は、老舗レストラン「広州酒家」についてご紹介します。

 

9月25日は中秋の名月の日でした。中国では中秋節と呼ばれ、月餅というお菓子を食べながらお月見をする日になっています。

この月餅の販売額が崩壊とも言えるほど減少しています。小売業の調査メディア「快消品網」のモニタリングデータによると、今年8月14日から9月13日までの主要店舗での月餅販売額は前年比で45.17%も減少し、ほぼ半減してしまいました。その後、中秋節を過ぎてもまだ月餅を買う人はいるため、最終的にどのくらいの減少になるかは不明ですが、相当な規模の減少になることは間違いありません。

市場全体でも、2025年には5.9%減となり、2026年も減少は確実ですから、2年連続の縮小となります。

なぜ月餅が売れなくなっているか。その理由は後ほどご紹介しますが、今回の主テーマはこれではありません。縮小する市場の中で、トップブランドの広州酒家は月餅の売上を維持しているのです。月餅市場が縮小した2025年も広州酒家の月餅の売上は0.96%増と前年を維持し、今年もこの厳しい市場環境の中でほぼ昨年並みの販売額を維持したようです。

広州酒家は1935年、広州市で創業された老舗レストランです。「食は広東にあり」という言葉を代表するレストランで、観光ガイドの最初のページに紹介されているような名門レストランです。観光客が多いと言うと、実はさほど美味しくないのではないかと思われるかもしれませんが、中国で生き残っている老字号(ラオズーハオ、老舗ブランド)は違います。北京の北京ダック「全聚徳」、上海の上海蟹「王宝和」などと並んで、広州酒家も広州を代表する老字号です。

もちろん、味だけを考えれば、今ではもっと美味しい店がたくさんあり、地元の人は「あそこは観光客が行くところだから、地元の人は行かないよ」などと言いますが、いずれのレストランも王道の味を維持していて、行ってがっかりすることはありません。

一方で、老字号ならどこでも間違いないということでもありません。衰退してしまった老字号もたくさんあります。その典型例は天津市の狗不理包子(ゴーブリパオズ)です。1858年創業の老舗で、スープがたっぷりと入った大きな肉まんで、上側から少しずつ開けてスープを吸いながら食べていきます。大きめの小籠包と説明するとわかりやすいかもしれません。

狗不理包子はこの包子の名店とされ、天津市を代表するレストランになっています。もちろん、狗不理包子は美味しいと思います。ただし、高いのです。1カゴが60元ぐらいし、蟹味噌など特別な食材を使ったものでは100元を超えます。一方、その辺の気軽な店だと天津包子が20元ほどで、味は甲乙つけ難く、人によっては気軽な店の包子の方が美味しいと感じるかもしれません。

伝統の味ではあるのでしょうが、それを守っているだけで、効率化も怠ってきたため、手間がそのまま価格に反映されてしまい、高価な食事になってしまいました。

本来、包子は屋台で買って立ったまま食べるような点心です。その食事が一流レストラン並みなのですから、地元の人は行かなくなりますし、観光客も1回行けばじゅうぶんというレストランになっていました。

2020年にあるブロガーが「狗不理包子は高いだけで美味しくない」という内容の動画をSNSで公開すると、狗不理包子側は名誉毀損、営業妨害だとして公安に通報しました。これがネット民の怒りを買いました。「ブロガーの言うことは正しいじゃないか。正直な感想を言って何が悪い」と炎上騒ぎになりました。その結果、狗不理包子は北京から撤退し、天津市のみの出店になっています。業績はかなり厳しいことになっているようです。

伝統に寄りかかっただけの老舗は、いくら歴史があろうと、現代の中国では生き残っていくことができません。それが、広州酒家は、伝統を守りながら、月餅という縮小市場で、安定した売上をあげられるのはなぜでしょうかというのが、今回のテーマです。老舗企業がやるべきことを学ぶケーススタディになります。

 

みなさんも月餅は食べたことはあるかと思いますが、豆沙餡が密に詰まった饅頭で、厚い皮に焼き印が入っているものをイメージされるかと思います。実は、これは広東式月餅と呼ばれ、その他にも地方によってさまざまな月餅があります。サクサクとしたパイ生地の蘇式、クッキーのような生地の京式、塩気と甘みが強い滇式、エッグタルトのようなカスタードクリームが入っている香港式などがあります。それでも、広東式が月餅の標準スタイルであるかのように思われているのは、広州酒家が全国や海外に広めたことによるものです。

「vol.293:ハーゲンダッツはなぜ今でも高級ブランドなのか。着地に成功したKFCと失敗したハーゲンダッツ」(https://tamakino.hatenablog.com/entry/2025/08/10/080000)では、ハーゲンダッツのアイスクリーム月餅をご紹介し、これが2024年には、前年の120万セットから15万セットしか売れないという大崩壊を起こし、ハーゲンダッツの経営が一気に苦しくなったことをご紹介しました。

なぜ、月餅は売れなくなっているのでしょうか。そして、月餅を売る広州酒家はなぜ安定した売上を出せるのでしょうか。そこには老舗ブランドが生き延びる知恵が詰まっています。

今回は衰退する月餅市場の中で、安定した売上をあげる広州酒家の老舗ブランドならではの戦略についてご紹介します。

 

続きはメルマガでお読みいただけます。

毎週月曜日発行で、月額は税込み550円となりますが、最初の月は無料です。月の途中で購読登録をしても、その月のメルマガすべてが届きます。無料期間だけでもお試しください。

 

先月、発行したのは、以下のメルマガです。

vol.349:店舗はOMOで生き返る。デリバリー対応で、売上をアップした9つの事例

vol.350:もはやドラマ制作は一人でできる。AI産業革命の本質はイテレーション

vol.351:中国もブースター回収に成功。コスト競争が激しくなる衛星打ち上げビジネス

vol.352:AIが突然中国語を話し始める怪現象。推論効率に優れた中国語という言語

 

バックナンバーポッドキャスト放送中!

apple.co

 

 

ビデオ版バックナンバーも放送中!

www.youtube.com

 

 

 

香港で人気となるシャオミのエアコン。香港家電市場で中国製が認知され始める

香港でシャオミのエアコンが大人気となり1.5カ月待ちが常態化している。圧倒的なコスパにより、日本製、韓国製、欧州製が主体だった香港家電市場に変化が起き始めているとCNMO科技が報じた。

 

小米のエアコンが香港で大人気に

小米(シャオミ)が発売したエアコンが香港で売れている。多くの店舗で売り切れとなり、入荷まで1.5カ月待ち状態となり、エアコンが設置される頃には暑い季節は終わってしまうのだが、それでも予約が相次いでいる。

また、中国内で購入し、それを香港に運び販売するという代理購入ビジネスも盛んになっている。小米のエアコンの香港での価格は2990香港ドルだが、代理購入では3500香港ドルあたりが相場になっている。それでも利用する人が後を絶たない。すぐ手に入るからだ。

▲小米のエアコンは価格が他の半分程度であるのに、基本性能は同等で、スマート機能で優っている。

 

コスパのよさが人気の秘密

なぜ、小米のエアコンがここまで人気となっているのか。それは価格帯性能比のコストパフォーマンスが圧倒的だからだ。香港でのエアコンは日本製か韓国製が多かったが、日本製は6000香港ドルから8000香港ドル、韓国製も5000香港ドルから7000香港ドルという価格帯になる。これに比べて小米は2990香港ドルにしかすぎない。しかも、この価格は設置工事込みの価格なのだ。総費用では1/3程度になる。

この価格帯は、室外機分離式のエアコンの価格帯ではなく、窓に取り付ける一体型のウィンドウエアコンの価格帯だ。それで室外機分離式の本格的エアコンが手に入るのだ。

 

充実するスマート機能

それでいて、スマート機能を魅力的に感じている。エアコンのすべての操作はスマートフォンのアプリから行える。Bluetoothだけでなく、Wi-Fiにも対応しているため、家の外からエアコンを操作することが可能だ。外出した時に切り忘れていないかどうかを確認したり、帰宅途中でエアコンをオンにして涼しい部屋に帰ることができる。

さらに、小愛同学という音声アシスタントが内蔵されているため、音声で操作することができる。家の外からはスマホで、家の中では音声で操作をする。リモコンがどこに行ったかを探す必要がなくなっている。

▲スマホから操作できる小米エアコン。外出先からも操作ができる。

 

静音性、省エネ性能も優れている

基本性能の面からも人気となっている。香港の住宅は狭いので、就寝時にエアコンの騒音が気になって眠れないことがある。しかし、小米のエアコンは18dBと低騒音で、図書館並みの静かさなのだ。

さらに、AIが運転を判断し調整するため、従来のエアコンから電力消費量を24.3%節約することができる。香港機電工程署による一級省エネ性能の認定を得たこともあり、電気代が高い香港では節電効果の高いエアコンとしても選ばれている。

また、本体は2年、コンプレッサーは5年という長期保証がつけられていることも安心感となっている。

 

中国で買って香港に持ち込む代理購入

唯一の問題は、人気になりすぎて品切れになっていることだ。そのため、深圳市に行ってエアコンを購入し、香港に持ち込んで販売するという代理購入ビジネスが盛んになっている。

ただし、専門家はこのような代理購入ビジネスを利用しないように呼びかけている。ひとつは保証修理の対象外となってしまうことだ。もうひとつは、取り付け業者を自分で探さなければならないことだ。香港の一般の取付業者は日本製や韓国製のエアコンの取り付けを主に行っているため、小米のエアコンの取り付けには不慣れであり、断られたり、高額の料金を請求される恐れがある。

そして、もうひとつが関税の問題だ。香港は業者が輸入する場合の関税はないが、個人が大型家電を持ち込む場合には関税がかかる。エアコンの場合は販売価格の20%になる。個人が自分で使うために持ち込む場合関税は免除されるが、代理購入業者が販売のために複数台持ち込もうとすると関税がかけられることがある。この場合、関税分を業者と購入者のどちらが負担するかでトラブルになる恐れもある。

 

中国製家電が認知され始める香港

香港は、家電製品といえば、これまではまず日本製で、次に韓国製、欧州製というのが常識だった。それがエアコンでは小米が人気となり、これまでの常識が変わろうとしている。

この人気に他の中国エアコンメーカーも続くことだろうし、エアコン以外の家電製品でも同様の現象が起きるかもしれない。香港の家電市場が大きく動こうとしている。

 

バックナンバーポッドキャスト放送中!

apple.co

 

ビデオ版バックナンバーも放送中!

www.youtube.com