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中国を中心にしたアジアのテック最新事情

中国政府が顔認証の安全認証制度を開始。第1号は百度の「百度AIクラウド明鏡実名認証」

マスク着用義務が緩和されるにつれ、再び顔認証技術に注目が集まっている。しかし、技術レベルはさまざまであるため、公安部は安全性に関する認証制度をスタートさせた。その認証を受けた第1号は百度の顔認証技術だったと百度大脳AI開放平台が報じた。

 

立体情報を利用する顔認証システム

新型コロナの感染が落ち着き、屋外でのマスク着用は徐々に解除されている中国。これにより再び顔認証に注目が集まるようになっている。企業の出退勤管理、身分の確認、さらには地下鉄や商店の顔認証決済などが再び利用されるようになっている。

しかし、同時にハッカーによる攻撃も行われるようになっている。最も単純なのは、本人の写真を印刷して見せるというもの。単純な画像解析しか行なっていないシステムでは突破されてしまう。

このような簡単な手法で突破されてしまう顔認証システムは現在ほとんどなく、3Dスキャンや生体活動の確認をするのが一般的だ。カメラは無数の赤外線を放射し、その反射から、対象の顔が平面(写真)であるか立体(顔)であるかを認識し、平面の場合は認証を通さない。しかし、これも写真を折り曲げて、立体感を持たせると突破されてしまうシステムがある。

また、本人の顔をスキャンする時に、立体情報まで取得をし、顔を立体として捉えて認証を行う場合でも、精密な立体顔モデルを使われると突破されてしまう。

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▲顔認証技術を突破するさまざまな攻撃手法。多くはすでに対策されているが、下段中央の二人羽織攻撃が注目されている。自分の顔画像に対象者の顔動画をオーバーラップさせる手法だ。

 

生体情報顔認証を突破する二人羽織攻撃

そこで、立体情報だけでなく、生体活動を認識して認証するシステムが現在は主流になっている。顔認証中の本人は、静止をしているわけではなく、顔が微妙に揺らいだり、瞳孔の動きがある。これを察知して、生体なのか作り物なのかを見分けるというものだ。

しかし、これにも攻撃手法が開発されてしまっている。スマートフォンでの顔認証の場合、カメラに割り込んで、顔のスキャン画面に本人の動画をオーバーラップ表示させる。こうすると、前面に本人の顔動画、背景に犯人の動画が二重に表示される。すると、システムは前面の本人動画から顔情報を読み取り、背景の犯人の動きから生体活動を読み取り、認証を通してしまう。まるで二人羽織のような手法で突破されてしまう。

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▲二人羽織攻撃の実験画像。顔認証に、背後に誰でもいいので実際の顔を写し、全面に突破する対象者の顔画像をオーバーラップ表示させる。背景の顔から生体であることを読み取り、中央の対象者の顔画像から認証を行い、突破されてしまうシステムがある。

 

政府機関が安全性の認証制度を開始

コロナ禍が落ち着いた2020年末から、中央政府のネット情報安全審査に関係する複数の部門が、顔認証が再び広く使われるようになったことで、顔認証技術のリスクに関する通知を出すようになった。公安部はこれを受けて、顔認証システムの安全能力を検査する仕組みを構築し、合格したシステムには認証を与えることになった。その認証を最初に取得したのが、百度百度顔生体活動計測システムV2.0だった。

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百度が受けた安全検査試験の報告書。この安全試験に合格をしたことにより、初めて公安部の認証を受けた顔認証技術となった。

 

認証第一号は、百度の顔認証システム

検査内容は6種類16項目に及ぶ。二次元攻撃(写真など)、三次元攻撃(立体マスク)が中心となる。二次元攻撃では2500種類の攻撃を受けたが突破例は0だった。三次元攻撃では248種類の攻撃を受けたが突破例は0だった。

百度の顔認証システムは、10種類の応用システムがあり、アプリ、ウェブ、ミニプログラムなどから利用できる。顔に赤外線を照射して立体データの照合を行うほか、瞳孔の反射光を取得し、生体活動を認識する。このため、写真、動画、立体マスクなどのフェイクの顔では認証がされない仕組みになっている。この百度の生体活動認証技術は、「百度AIクラウド明鏡実名認証」として独立し、既存の顔認証技術と組み合わせることも可能になっている。

今後は、企業や決済などに使われる顔認証システムにとって、この公安部の認証を得ているかどうかが重要になってくる。

 

 

大ヒットEV「宏光MINI EV」が50万円で販売できる秘密。コストダウンだけではないその理由

2.88万元から購入できる「宏光MINI EV」のヒットが止まらない。12ヶ月連続で新エネルギー車販売ランキングの1位の座を守り続けている。その最大の理由は2.88万元という安さだが、それを実現するためにはコストダウンだけではなく、五菱のさまざまな工夫があったと小周的車が報じた。

 

ヒットが止まらない宏光MINI EV

中国の電気自動車(EV)市場が記録を更新し続けている。その原動力になっているのが、上汽通用五菱(ウーリン)の「宏光MINI EV」(ホングワン)だ。

五菱の燃料車を含めた2021年8月の全体の販売台数は13万57台で、前年同時期の14万8000台から12.12%の減少となった。しかし、EVを含む新エネルギー車では、8月の販売台数が4万1849台となり、前年同時期から2.4倍にもなっている。今年2021年1月から8月までの累計では90万1441台となり、前年同時期から20.84%の増加となった。

要因は、宏光MINI EVの大ヒットだ。発売後1年で37万台を売上げ、その後も売上が落ちずに12ヶ月連続でEV市場の販売台数トップの座に座り続けている。

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▲発売後1年以上経っても、まだまだEV市場トップの座を保っている。女性を意識した宏光MINI EVマカロンなども発売され、まだまだ販売は拡大しそうだ。

 

宏光MINI EVの安さの秘密は安い人件費ではない

宏光MINI EVのヒットの理由は、なんといっても価格の安さにある。2.88万元(約51万円)という価格で、地方では通勤、買い物用として、都市では女性を中心に遊ぶ車として受けいられている。経済力が限定的な地方の人も購入できる自動車であり、都市の人には遊ぶ車として手頃な価格であることが売れる要因だ。

なぜ、ここまで宏光MINI EVはここまで安く販売できるのか。多くの人が「中国のやすい人件費を利用して…」と思ってしまいがちだが、すでに中国の人件費は安くなくなっており、低コストでの生産を志向する製造業は、安い人件費を求めてインドや東南アジアへ進出へ図るようになっている。

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▲宏光MINI EVは都市部では、改造できる車として楽しまれている。

 

自動車の薄利多売を行う五菱

宏光MINI EVの価格の安さの秘密は、薄利多売だ。宏光MINI EVの利益率は非公開だが、2020年の親会社の上海汽車集団の連結財務報告書では、営業収入が729.27億元(約1.3兆円)だが、純利益は1.42億元(約25億円)しかない。これを仮に五菱全体の販売台数で割ってみると、1台あたりの利益は89元(約1600円)でしかないのだ。究極の薄利多売状態になっている。

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▲2020年のメーカー別EV売り上げランキング。五菱が圧倒的だが、価格帯が高いテスラの売上も驚異的。この2車がEV市場をリードしている。

 

NEVクレジットによる利益で黒字になる

しかし、安さの理由はこれだけではない。政府の政策である「NEVクレジット」の存在が大きい。これはNEV(新エネルギー車)の普及を促進するために、2019年から実施されている制度で、計算方法や比率は改訂されるものの、簡単に言えば、自動車メーカーに義務付けたポイント制度のようなものだ。燃料車を1台生産するとマイナスポイントがつけられ、新エネルギー車を1台生産するとプラスポイントがつけられる。つまり、自動車メーカーに一定割合で、EVなどの新エネルギー車の製造を義務付けるものだ。

理想状態は、1つのメーカーで、マイナスポイントとプラスポイントが打ち消しあって0になることだが、現実にはそうはいかない。新エネルギー車の製造に消極的なメーカーはマイナスポイントが残ることになる。その場合は、別のメーカーで余っているプラスポイントを購入して打ち消すか、それもできない場合は罰金を支払うことになる。

一方、EVなどを大量に生産をして、プラスポイントが余っているメーカーは、他メーカーにポイントを売却することができる。価格は市場の需給により変動するが、現在1ポイントあたり3000元程度で推移をしている。

2020年、五菱は93万2706台、新エネルギー車を17万8292台を生産し、44万3141NEVクレジットのプラスとなった。ということは、これだけで13億元を稼いだことになり、これを五菱の新エネルギー車販売台数で割ってみると、1台あたりの利益は7456元(約13.1万円)となり、一般車を超える利益水準になる。

 

購入補助金が減額されたことが小型EV市場を生んだ

また、新エネルギー車の購入補助金が2019年から大きく減少したことも宏光MINI EVへの追い風となった。中央政府や地方政府は、新エネルギー車の購入時に補助金を出す政策を進めているが、その仕組みは、航続距離が長いほど補助金が厚くなるというものだった。そのため、宏光MINI EVのように航続距離が短い日用車は売れなかった。なぜなら、1つ上のグレードの車の方が補助金が多いため、わずかな追加出費でより性能の高い車が買えるからだ。

しかし、その補助金が大きく減少し、販売価格そのものでの勝負となると、性能は割り切っても低価格のEVを求める消費者が増えてくる。また、公共交通の拡充に頭を悩ませる地方都市では、宏光MINI EVのような小型EVの普及が都市交通問題の解決策となることから、補助金や駐車場などの優遇政策を打ち出しているところも増えている。

このような理由で、小型EVが売れ、その中でも品質、デザインが優れた宏光MINI EVが売れている。他メーカーも、同様の小型EVを発売して対抗してきているが、まだまだ宏光MINI EVの好調さは続きそうだ。

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▲購入補助金は毎年少なくなっていき、2019年にはほぼなくなったため、新エネルギー車の販売台数は2019年に停滞をすることになった。目論みとしては、初期は商用車が市場をリードし、需要が一巡するまでに、購入補助金を使って個人市場を立ち上げることだった。補助金減少のタイミングが早すぎ、2019年に市場は停滞をした。

 

中国スーパーの教科書「ウォルマート」が苦戦。コロナ禍の行動変容により、ホールセールクラブに復活をかける

世界的流通小売「ウォルマート」の中国での苦戦が鮮明になっている。新小売、社区団購などの新業態の登場により、顧客を奪われているからだ。その中で、ホールセールクラブ「サムズクラブ」の好調ぶりが救いで、ウォルマートはサムズクラブの拡大に復活を賭けていると金十新媒体が報じた。

 

ウォルマートが中国で苦戦。老舗店の閉店が相次ぐ

世界トップの流通小売業「ウォルマート」が中国での苦戦が鮮明になってきている。現在、中国で429店舗を展開しているが、今年2021年だけで16店舗を閉店し、新規開店は2店舗にとどまっている。

特に深刻なのが、長年続き、地元から愛された老舗店舗の閉店が目立つことだ。北京市朝陽店は、開店して15年、西安市蓮湖店は20年になる。ウォルマートは賃貸期間の満了によるものと説明しているが、家賃と人件費が急上昇している中国で、運営コストと売上が見合わないと判断されたのだと見られている。

 

中国スーパー業態の教科書だったウォルマート

ウォルマートは1996年に中国の深圳市に1号店を開店して以来、中国のスーパー業態の教科書だった。多くの流通小売がウォルマートの手法を研究し、それを取りれることで成長してきた。

しかし、2001年に創業した永輝(ヨンホイ)が、郊外大型店のウォルマートに対抗して、都市型小型中型店で成功したあたりから、ウォルマートに翳りが見られるようになった。

特に2016年の新小売スーパー(宅配対応)、2020年の社区団購(事前注文、受取方式)の登場により、業績悪化が鮮明になってきた。

中国チェーンストア経営協会(CCFA)は、2020年の「中国スーパー100強」のランキングを公表したが、ウォルマートは4位だった。ウォルマートはこのランキングのトップ3であり続け、4位に転落をするのは初めてのことになる。

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▲CCFAが発表した2020年の「スーパー100強」で、ウォルマートは初めてトップ3から陥落をした。ホールセールクラブの転換に復活を賭けている。

 

コロナ禍で変わった消費行動

新しい業態の登場と、さらにそれがコロナ禍による意識の変化がウォルマート業績悪化の要因になっている。

人々は、人が密集する場所を避けようとし、長距離の移動、移動回数を抑えようとした。新型コロナ感染のデータ分析により、感染リスクは移動距離と密集する場所での滞留時間に比例して高くなるという知見が紹介されため、人々は移動回数、移動距離、滞留時間を小さくする行動を取るようになった。

このため、日常の買い物は、若い世代では新小売スーパー、生鮮ECによる宅配を利用するようになり、中年以降は消耗品のまとめ買いをして、スーパーに行く回数を減らすようになった。また、遠方のスーパーから近所のスーパーを利用するようになる。社区団購も、価格が安いということもあるが、事前注文をして、受け取るだけという滞留時間が短いことも使われる理由のひとつになっている。

このようなコロナ禍の行動変化が、収束後も習慣となり、遠くの郊外大型店に行き、広い店内を歩き、日用品を買うというウォルマートのコンセプトに合わなくなってきた。

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▲サムズクラブの店内。広々としており、箱陳列であるため、商品棚前で滞留する人も少ない。時間を選べば、感染リスクを高めずにまとめ買いができることから人気になっている。

 

にわかに人気となったホールセールクラブ

ウォルマートも手をこまねいているわけではない。やはり1996年に開店した会員制ホールセールクラブ「サムズクラブ」は、なかなか中国では受け入れられず苦戦をしていたが、コロナ禍以降、会員登録者数が増えている。2021年Q2には、昨年同時期の2倍の新規会員を獲得している。

年会費の260元(約4500円)を支払う必要があるが、消耗品をまとめ買いすればすぐに元が取れる。店内も広々としていて、人が密集することが少ない。

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▲苦戦をするウォルマートだが、にわかにホールセールクラブ「サムズクラブ」の人気が高まり、ウォルマートからサムズクラブへの転換を始めている。2028年までに100店舗に増やす計画だ。

 

ホールセールクラブに追従するライバルたち

コストコも本格的な店舗展開を始め、アリババも盒馬X会員店(フーマX)の展開を始めた。ウォルマートも既存店の閉店が進む中で、サムズクラブの展開を強化し、現在33店舗展開を2028年までに100店舗にする計画だ。

今年2021年4月に、歩歩高(ブーブーガオ)の王填会長は、業界のセミナーで「社区団購の拡大により、スーパーという業態そのものが生き死にを考える暗い時代を迎えている」と発言したことが話題になっている。ウォルマートが、郊外大型スーパーからホールセールクラブへの転換をする中で、スーパーという業態そのものの価値が問われ始めている。

 

 

大ヒットする「宏光MINI EV」の衝撃。なぜ、50万円で車が販売できるのか。その安さの秘密

まぐまぐ!」でメルマガ「知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード」を発行しています。

明日、vol. 095が発行になります。

 

今回は、中国でヒットになっている電気自動車(EV)の五菱「宏光MINI EV」(ホングワン)についてご紹介します。

宏光ミニは、上汽通用五菱(ウーリン)が、2020年6月に販売を開始したEVで、エントリーモデルは2.88万元(約51万円)という価格が話題になりました。サイズは日本の軽自動車とほぼ同じで、最高時速は100km/h、満充電航続距離は120km、エアコンはなしという、いろいろ割り切っている部分はありますが、何よりもその安さが衝撃で、売れに売れています。

歩く代わりに使う車ということで「代歩車」とも呼ばれています。中国人が「代歩車」という言葉を聞いた時、すぐに思い浮かべるのは電動スクーターです。つまり、宏光ミニは、自動車というより、電動スクーターと同じカテゴリーの乗り物だと見做されているのです。

 

この宏光ミニの購入層は2つあります。ひとつは、地方の通勤車として売れています。中国では都市人口が2020年末に60%を超えました。以前は、農村から仕事を求めて、北京や上海といった大都市に出るのが一般的でした。大都市に行かないと仕事が見つからないからです。しかし、なんのスキルもなく働ける仕事というのは、いわゆる清掃や建設関係が多く、賃金は高くありません。大都市は生活コスト高くつきます。

一方で、地方都市の経済も回るようになってきて、遠くの大都市に行かなくても、近くの地方都市でも仕事が見つかるようになってきました。そのため、北京、上海どの一線都市の流入人口は2020年に初めて減少に転じましたが、新一線、二線都市以下の流入人口はあいかわらず増えて続けています。つまり、地方都市の人口が急激に増加をしています。

このような地方都市では、大都市のように地下鉄を整備する経済力はなく、公共交通が大きな課題になっています。ライトレールのような路面電車、あるいはレールのないスマートレール(路面にペイントした特殊塗料を読み取って走る路面電車)、高架を走る低速リニアなどさまざまな都市交通が提案されていますが、建設計画が人口増加に追いついていません。結局は、バスに頼るしかありません。

そのため、通勤用にマイカーを買いたいという人が多いのですが、地方都市の労働者にとって自動車はまだまだ高い商品です。買えないわけではありませんが、かなり思い切った決断が必要になる商品です。そこに、宏光ミニのような低価格の自動車が登場したため、これだったら買えると売れているのです。

 

もうひとつの購入者層が、都市の若い女性たちです。日本でもそうかもしれませんが、中国の女性も運転免許は取得したものの、運転に苦手意識を持っている人が多い傾向があります。しかも、中国の運転状況は日本とは別世界です。よく、運転が荒いという言い方をされますが、荒い、乱暴というよりも、合理性が行きすぎて、わずかな隙間でも詰めてくる余裕のない運転なのです。高速でも車間はぎりぎりに詰めてきます。空けていると「もう1台入れるじゃないか。無駄なことするな」と言わんばかりです。以前と比べれば、だいぶ車間を空け、余裕のある運転をするようになっていますが、それでも日本の感覚で運転をしたら、すぐに接触事故を起こすことになりそうです。

また、都市の中の駐車場が圧倒的に不足をしているため、とにかく縦列駐車が多い。それも日本のように、前後を空けた縦列駐車ではなく、前後の空きがほとんどない難易度の高い縦列駐車です。どうやって入れたのか、どうやって出すのか不思議になるほど詰め方です。

そういう状況なので、女性だけでなく、男性でも実は運転に苦手意識を持っている人は多いのではないかと思います。それが軽自動車並みに小さな車であれば、取り回しが楽で、駐車などの細かい運転操作も楽になります。週末に高速道路で遠出をするのでなければ、小さな車ほど運転しやすくなります。地方では「これだったら買える」ですが、都市の女性にとっては「これだったら運転できる」という理由で売れています。

 

そして、宏光ミニのうまいところは、インテリアなどはコストダウンのためにシンプルを突き詰めていますが、デザインレベルは高いということです。つまり、お金のかかる部分はケチるけど、知恵でなんとかなる部分はしっかりと仕事をしているということです。

五菱の宏光ミニ特別サイト(https://www.sgmw.com.cn/E50.html)を見ていただければわかりますが、インテリアのデザインは非常にうまいと思います。ダッシュボードの操作盤は、ラジオ、送風切り替え、USB端子とシンプルですが、1箇所にまとめられ、オレンジの枠線で囲まれ、車内の視覚的なアクセントになっています。さらに、同じオレンジのラインを使い、アクセルペダルには「+」、ブレーキペダルには「ー」マークがつけられています。このペダルのマークは不要なものでデザイン上の遊びですが、ユーモアを感じます。

消費者というのは、こういうエンジニアやデザイナーが楽しんでつくった感覚を敏感に感じとります。都市の女性たちは、このデザイン性を感じとり、しかも都市女性にとっては低価格の自動車であることから、生まれた金銭的な余裕を改造に回します。その改造ぶりはそれぞれの個性によります。アニメの絵を車体に描いた痛車もあれば、内装にこだわって自分好みの空間にしている人もいます。さらに、大規模な改造をして、六輪車にしてみたり、戦車のような外観にしている例もあります。

五菱も、このような楽しみ方がされていることをすぐに察知して、中国版TikTok「抖音」の公式チャンネルで改造車の紹介をしています。これにより、カスタマイズ、改造が流行し、企業では広告のために自社製品を活かした改造車をつくり、イベントなどで展示するようになっています。

 

つまり、宏光ミニが売れている理由は「地方都市でも購入可能な価格」「運転しやすいサイズ」「改造を促すデザイン性」の3つということになります。

その中でも大きいのが、なんといっても2.88万元という価格です。もちろん、燃料車の設計や製造ラインを流用するなど、あらゆる工夫によるものですが、それでも安い。この安さはどうして実現できたのでしょうか。

先日、ある人と話をしていたら、その方は「中国の安い労働力を使って…」とおっしゃっていましたが、10年前ならともかく、今ではこれは現実とズレた古い見方であることは、このメルマガ読者であれば実感をされていることと思います。

今、製造業の経営者の頭痛の種は、人件費と土地代の高騰です。賃金の高い安いは、物価との兼ね合いなので、一概には比較できませんが、私の感覚では、中国の労働者の報酬は、物価を考慮に入れれば日本の労働者とそう変わらないのではないかと思います。ドルベースで絶対額を比較してしまえば、まだまだ差はありますが、もはやその差だけで激安商品がつくれる状況ではなくなっています。

 

一部の製造業では、安い人件費を求めて、インドや東南アジアに移転する動きも起きています。しかし、それが大きな流れにならないのは、熟練度との見合いの問題です。東南アジアに移転をすれば、人件費は下がるけど、熟練度は下がり品質は落ちるという問題があるからです。

中国の一般的な工場であっても、技術レベルは非常に上がってきています。ここは侮らない方がいいと思います。日本の工場の品質は世界一と私たちは胸を張りますが、それは精密な工程を必要とする部分の話であって、コモディティ化した一般的な製品の組み立てなどでは、もはや日本との差はないと考えておいた方が間違いありません。私たちは、アップルのiPhoneなどの製品の品質を非常にもてはやしますが、実際に製造しているのは中国の富士康(フォクスコン)や立訊精密などの中国EMSなのです。このような企業では、多数の熟練工が育ってきていて、品質を支えています。

フォクスコンは、人件費の高騰から、以前からインドなどを中心に脱中国移転を進めていますが、文化の違いや品質面で相当に苦労をしているようです。

 

では、宏光ミニはどうして2.88万元という価格を実現できたのでしょうか。五菱はただ安くつくるというだけでなく、政府のEV政策をよく研究し、補助金などを実に巧妙に利用して、販売計画を立ててきました。宏光ミニのヒットの裏には、商品企画の勝利がありました。今回は、宏光ミニはどうして安く販売できるのか、そしてどのような商品企画戦略を取ったのかをご紹介します。

 

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スマホ決済「アリペイ」がハッキングされ、2万元が盗まれる。犯人は、17歳の高校生

セキュリティレベルの高さを誇るスマホ決済「アリペイ」が、17歳の高校生により攻撃を受け、2万元の資金を移転させるという事件が起きた。犯人はすぐに逮捕をされ、11ヶ月の懲役刑が言い渡されたと支付百科が報じた。

 

アリペイシステムに侵入したのは17歳の高校生

アリババのスマホ決済「アリペイ」。お金にも等しいものを扱うことから、セキュリティは最高レベルで、運営元のアントグループは、たびたび公開のハッキングチャレンジのようなイベントを開催して、セキュリティレベルの高さをPRしている。また、アリペイのセキュリティ能力の問題により利用者が損害を受けた場合は、アントグループが全額賠償をすることも公言している。

しかし、2020年10月にDDoS攻撃(Distributed Denial of Service、分散型サービス拒否攻撃)を受け、2万元(約35万円)余りの資金が盗まれるという事件が起きた。

犯人は17歳の高校生で、すぐに逮捕され、広東省深圳市龍崗区人民法廷は、アントグループ傘下のアリペイが6000元の損害を受けたことを認定し、計算機情システム破壊罪で、11ヶ月の懲役刑を言い渡した。

この高校生は、アリペイの攻撃の前に、中国南方航空の発券システムにも侵入し、システムを4時間にわたって停止させる事件を起こしていた。

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▲犯人が中国南方航空の発券システムを攻撃した時のモニター画面。大量のパケットが送り付けられ、4時間にわたってシステム障害が続いた。

 

ボットネットのレンタルサービスが存在する

DDoS攻撃は、対象に対して大量のアクセスを集中させ、処理能力をパンクさせることでサービスの運営をできなくしたり、その混乱に乗じて、マルウェアなどを送り込み、システムに侵入をしたりするというものだ。大勢で一斉にいたずら電話をして、企業が仕事ができなくし、その混乱に乗じて社内に侵入するようなイメージだ。

DDoS攻撃を行うには、一斉にアクセスをしてくれる大量の協力者が必要だが、もちろんそんなことに協力をしてくれる人はいない。そのため、ダミーのポルノサイトなどを運営して、大量のパソコンやスマホマルウェアを送り込む。こうしておいてから、支配下に置いたデバイスに攻撃指示を出すというやり方をする。

支配下に置かれたユーザーは、自分のデバイスが乗っ取られているわけだが、通常は何か悪さをするわけではないので、なかなか気が付かない。攻撃命令が出されても、多少動作が重たくなったり、通信量が増える程度で気がつかない。知らない間に犯罪に加担することになっている。

しかし、このような支配下に置いた大量のデバイスボットネットを育てるのはたいへんな手間ひまがかかる。そこで、ボットネット構築の専門業者が存在し、ダークサイドウェブなどでレンタル広告を出している。攻撃をしたいと考えたハッカーは、このようなボットネットをレンタルすればお手軽にDDoS攻撃ができることになる。


www.youtube.com

▲浙江衛星テレビの「智造将来」で行われたアリペイの公開ハッキングイベント。公安のセキュリティ担当官がハッカー側となってアリペイのシステムへの侵入を試みるというもの。テレビショーとしての演出はされているが、リアルなシステムに侵入を試みている。

 

偽造商店アカウントを作り、攻撃準備

高校生の呉毅豊は、アリペイにDDoS攻撃をしかける目的で、3.38万元(約59万円)相当のビットコインを使って、geolites.cc、stresser.netの2つのボットネットをレンタルした。さらに、アリペイのサーバー情報なども調査も行なった。

そして、2人の友人にDDoS攻撃や侵入後に資金を移動する操作の手伝いをさせて、DDoS攻撃を実行した。

呉毅豊は、架空の営業許可証を偽造して、架空の会社をつくり、アリペイに商店用の口座を作成していた。個人用アカウントは、身分証の登録などが必要で、身分証の偽造は罪が重いため、審査の緩い商用アカウントを利用した。

商用アカウントを作るのにも、営業許可証や代表者の身分証などが必要だが、直接アリペイに申請しなくても、代理決済業者を通して申請することもできる。代理決済業者は、商店にアリペイだけでなく、複数のキャッシュレス決済を提供し、決済端末やレジ機器、会計ソフトなどを販売する。このような代理決済業者の中には、口座開設の審査が甘いところがあり、それを利用したのだと思われる。

 

過去最大級の大規模攻撃が行われる

こうして、2020年10月17日2時45分から4時15分までの1時間半、アリペイの24のIPアドレスに対するDDoS攻撃が行われた。送り付けられたパケットはピーク時には5.84テラbpsにも登り、アリペイの決済処理にも影響を与えるレベルだった。1テラbpsを超えると大規模攻撃と呼ばれる。この攻撃はかつてないほどの大規模なものとなった。

 

資金の奪取に試行錯誤をする犯人

DDoS攻撃は成功したものの、資金の奪取にはなかなか苦労をしたようだ。呉毅豊は、以前から偽のWi-Fiホットスポットを運営し、利用者の携帯電話番号を収集し、マルウェアを送り込んでいた。

アリペイのシステムに侵入後、収集していた携帯電話番号からアリペイアカウントにアクセスし、資金を移動させようとしたがパスワードが解析できず失敗をしている。

次に、アリペイのアカウントリストを探りあて、単純なパスワードを集めたリストを、すべてのアカウントに試し、単純なパスワードを使っているアカウントを探り当てようとしたが、これも失敗した。

結局3人は、偽のホットスポットを通じてスマホに送り込んでいたマルウェアを使って、その人のアリペイのパスワードを単純なものに変更するリモート操作を行い、そのアカウントから資金を転送させるという方法で、資金の奪取に成功し始めた。

 

アリペイ側はブラックホールサーバーで対抗

しかし、アリペイ側もすぐにDDoS攻撃されていることに気がつき、当然ながら、資金盗難が発生することが予想された。そのため、3回にわたって、海外のブラックホールサーバーサービスを利用した。これは送られてくるパケットをフィルタリングして、ブラックホールサーバーに転送すると、そのパケットを消滅させてくれるというサービスだ。

これにより、4時15分にはDDoS攻撃による障害から脱することができ、盗まれた資金は2万元程度で済んだ。この被害は、呉毅豊などの家族が賠償をしている。そのため、アリペイがブラックホールサーバーを利用した利用料6000元が被害額として認定された。

呉毅豊たちは、ボットネットをレンタルするのに3.38万元を使い、2万元しか盗むことができなかった。しかも、DDoS攻撃の指令を出しているIPアドレスがすぐに解析され、そのIPアドレスの場所も深圳市龍崗区坂田街道であることまで判明し、公安の捜査により、3人はすぐに逮捕されることになった。

アリペイはこれまでさまざまな攻撃を受けているが、その多くを跳ね返し、中国で最も高いセキュリティレベルのサービスだと思われてきた。しかし、17歳の高校生が逮捕されたとは言え、資金転送まで成功したことに関係者は驚いている。

 

 

五菱にとっても意外だった大ヒット。元々は商用バンの弟分として企画された宏光MINI EV

大ヒットEVの宏光MINI EVの勢いが止まらない。都市部の若い女性には遊ぶ車として、地方の男性には通勤車としてという二極で売れている。しかし、五菱にとってもこのヒットは意外だった。本来は、通勤車として企画されたものが思わぬヒットになった。しかし、五菱はその嬉しい誤算に素早く対応し、宏光の売れ行きを維持していると車快評が報じた。

 

止まらない宏光MINI EVの売行き

中国の電気自動車(EV)を含む新エネルギー車市場で、上海通用五菱(ウーリン)の「宏光MINI EV」(ホングワン)の販売台数が独走状態になっている。エントリーモデルでは満充電の航続距離は120km、冷房はなしといろいろ割り切っているが、それでも2.88万元(約49万円)という低価格と、通勤、日用の利用にはじゅうぶんなスペックから、「代歩車」(歩く代わりに使う車)としてヒット商品になっている。

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▲2021年1月から8月までの新エネルギー車の販売台数の累計。宏光MINI EVの販売打数が圧倒的。月間販売台数でも1位の座を維持し続けている。

 

メーカーにも消費者にも意外だった五菱のヒット

このヒットは、五菱にとっても消費者にとっても意外なものだった。なぜなら、それまで五菱といえば、商用バンで有名なメーカーだったのだ。街中の配送車として五菱のバンがよく使われ、働く車をつくるメーカーだった。

五菱の商用車が好評だったのは、とにかく丈夫であるということだった。接触事故を起こして多少へこんだとしても走り続けることができる。メンテがいい加減でもなんとか走る。

さらに、商用車であるため、運転しているのは習熟をしたドライバーが多く、交通事故を危機一髪ですり抜ける映像やスリップしてもうまく立て直す映像などがたびたびネットにアップされ、「神車」として認識されている。ネット民たちが面白がって過剰にもてはやしている面はあるにしても、日本のハイエースと同じように、商用車としてレベルの高い製品を作っているメーカーだった。

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▲五菱の最大のヒット商品は、商用バン「宏光」だった。丈夫で壊れない働く車として定番になっている。宏光MINI EVは、そのような商用バンを利用する人の通勤車として企画された。

 

商用バンの弟分として企画された宏光MINI EV

この商用バンの人気車種が「宏光」であり、ヒット商品になった「宏光MINI EV」は、この商用バン「宏光」の通勤車版という企画からスタートした。そのため、「高速道路は利用しない」「通勤に必要な片道30分程度」という条件の中で、可能な限り価格を安くするという商品企画がスタートした。

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▲宏光MINI EVのベーシックモデル。本来は通勤用として企画をされた。

 

運転しやすく、遊べる車

ところが、販売をしてみると、最初に反応したのは若い女性だった。中国の女性は運転に苦手意識を持っている人が多く、特に駐車周りの細かい操作に苦手意識がある。日本では、誰もが苦手としている縦列駐車をするシーンというのはさほど多くなくなっているが、中国では頻繁に要求されるテクニックだ。しかも、誰もがぎりぎりに詰めて駐車するために、難易度が高い。そのためサイズが軽自動車並みに小さいということが受け入れられた。

さらに価格が安いことから、塗装を変えたり、改造をすることが流行し、遊ぶ車としても人気となった。また、五菱の思惑通り、通勤車としての需要も高く、都市の女性と地方都市の男性という2種類の消費者により、宏光ブームが形成されている。

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▲小さく運転がしやすい、価格が安いので改造費の余裕ができることから、カスタマイズが流行し、若い女性に受けるという嬉しい誤算があった。

 

嬉しい誤算に素早く対応した五菱

この嬉しい誤算に、五菱は素早く対応した。2021年4月には、パステルカラーのバリエーションを展開し、インテリアも女性向けに改善した「宏光MINI EVマカロン」シリーズの販売を始めた。

さらに、9月に天津市で開催されたモーターショーでは、新しい小型EV「NANO EV」を発表した。2人乗りEVで、最も重要なのは価格が2万元(約35万円)であるということだ。11月に発売が予定されている。

女性に受け入れられるかどうかはまだわからないが、通勤車として「宏光MINI EV」を購入していた層は、こちらのNANO EVに流れることが予想される。

他メーカーも五菱の成功を見て、小型EVのライナップに力を入れ、好調に売れている。中国のEVシフトは、小型EVを軸に進みそうだ。

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▲宏光MINI EVの新シリーズ「マカロン」。パステルカラーのバリエーションで、若い女性を意識したラインナップだ。

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▲五菱は、さらに低価格のNANO EVの販売を発表している。2人乗りEVで、価格は2万元という通勤車だ。2021年11月に販売開始予定。

 

新学期に用意された各キャリアの学割プラン。1年で5000円+で利用可能

中国の大学生は慎ましやかに暮らしている。1月の生活費は約2.6万円で、この中からスマホ代金を支払わなければならない。そのため、各キャリアとも学割プランを用意している。1年で300元というのが相場で、さまざまなボーナスをつけるのが主流になっていると捜卡之家が報じた。

 

慎ましやかに暮らす中国の大学生

中国の大学生は慎ましやかだ。「大学生消費研究報告」(iiMedia Research)によると、中国の大学生は4183万人いて、1ヶ月の生活費の中央値は1516元(約2万6000円)となった。住むのはキャンパス内にある学生寮、食事は美味しくはないけど激安の学食であるため、これでもじゅうぶん生活がしていける。何より、学業の負担が大きく、遊びに行く暇など滅多にない。

また、最近では考え方が変わりつつあるものの、裕福な家庭の子弟であっても学生寮に入り、他の学生と同じ生活を送るという伝統がある。それが中国の学生生活だと認識されている。

 

大学生には負担となるスマホ

一方で、大学生はほぼ全員がスマートフォンを持っている。学生寮の相部屋でイヤフォンをしながら、TikTokや動画を見たり、音楽を聞いたりするのが唯一の娯楽であり、また大学内でもスマホを使って本人確認をすることが多く、必須のツールになっているからだ。

しかし、この慎ましやかな生活費で、どうやってスマホ代を支払っているのだろうか。

 

中国のスマホ料金は、日本のMVNOとほぼ同レベル

中国のスマホ利用料は非常に安い。三大キャリアのひとつである中国電信のサイトを見ると、基本プラン「大流量59」が月15GB+200分無料通話で月59元(約1000円)、「大流量99」が月20GB+300分無料通話で月99元(約1700円)と、日本のMVNOや格安プランとほぼ同じレベルだ。ただし、ショートメッセージ(SMS)は発信の際に課金をされるため、多くの人がSNS「WeChat」を使ってやりとりをしている。

また、スマホ本体は自分で購入して用意する必要があるが、中古でもいい、機種にもこだわらないと割り切れば100元程度から手に入れることができる。

この価格は、現在の中国人にとっても安く感じられる。しかし、慎ましやかな学生にとってはなかなかの負担だ。特に大学生は機種にはこだわりを持つため、通信量は安く済ませたい。

 

国電信の「新青年プラン」

そこで各キャリアとも「キャンパスSIM」という学生専用プランを用意している。中国電信の「新青年プラン」は16歳以上の学生が利用でき、年300元(約5200円)または2年500元(約8600円)で、内容は以下のようになっている。

1)200分無料通話

2)SMS10通無料

3)20GBの5G通信

4)30GBの指定アプリ通信(抖音、快手、優酷、愛奇芸、網易雲音楽、百度など)

また、面白いのは、毎月、公式サイトにアクセスして取得する必要はあるが、10GBの5G通信が毎月ボーナスとしてもらえる。さらに、ブラインドボックスボーナスも用意されていて、「2GB通信」「5GB通信」「100分無料通話」「100通SMS」「ビリビリなどの1ヶ月無料利用」「美団フードデリバリーの10元クーポン」「ラジオサービスシマラヤの1ヶ月無料利用」のいずれかがあたる。

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▲中国電信の「新青年プラン」。ブラインドボックスボーナスなど、お得なトッピングをつけている。

 

聯通の「5G速度キャンパスSIM」

聯通でも、一年300元、2年500元の16歳以上の学生プラン「5G速度キャンパスSIM」を出している。

1)200分無料通話

2)SMS10通無料

3)20GBの5G通信

4)20GBの特定アプリ通信

で、ボーナスなどはなく、シンプルな構成となっている。

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▲聯通の「5G速度キャンパスSIM」。1年300元でシンプルなプラン内容となっている。

 

中国移動の「躍動地帯キャンパスSIM」

中国移動は一年300元の「躍動地帯キャンパスSIM」を出している。

1)200分無料通話

2)SMS10通無料

3)20GBの5G通信(市内限定)

4)10GBの5G通信(全国)

中国移動は、これに地域ごとのトッピングがある。広東省では、月29元を追加で支払うと、30GBの5G通信、40GBの指定アプリによる5G通信、80分の無料通話などがついてくる。

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▲中国移動の「躍動地帯キャンパスSIM」。都市ごとにそれぞれのボーナスが用意されている。

 

SIMと機種の分離が格安競争を生み出している

三大キャリアの中では、中国電信が最も学生プランに力を入れている。中国電信のプランは、1年となっているが13ヶ月である点も大きなポイントだ。

キャリアにとって、学生利用者を確保することは、将来の顧客を獲得することであり、学生プランは重要だ。しかし、スマホとSIMは完全分離をして販売されているため、キャリアを変えたければ、SIMカードを入れ替えるだけになっている。また、2018年から携帯電話の番号を変えずにキャリア乗り換えができるようになっているため、キャリア間の移動は激しい。多くの人がお得な年払いプランを利用し、期限が切れる頃に、最もお得な次のプランを選ぶようになっている。乗り換え手続きもすべてネットで完結するようになっている。

このような政策により、価格競争が行われ、携帯電話の利用料は大幅に下がった。一方で、キャリアは価格以外、差別化をすることが難しくなっている。そのため、人生初のスマホ体験となる学生を取り込むことが、どのキャリアにとっても重要になっている。