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アリババがついに社区団購に本格参入。フーマNBの商品ラインナップは既存社区団購の10倍

フーマフレッシュを運営するアリババが、ついに社区団購に本格参入をした。フーマフレッシュのインフラを活かした「フーマNB」だ。参入時期では他のテック企業に遅れをとったものの、豊富な商品ラインナップと短時間配送で追い上げを図っている。社区団購の業界地図が大きく書き換えられることになる可能性が高いと電商報が報じた。

 

アリババがついに本格参入「フーマNB」

アリババがついに社区団購(シャーチートワンゴウ)に本格進出をした。社区団購は「前日注文、翌日配送、店舗受け取り」を基本にした生鮮食料販売ビジネス。

近隣の個人商店が加盟店となり、近所のお店に取りにいけばよく、団長(加盟店店長)と顔見知りであるため、さまざまな融通を利かせてくれる点が受け、農村や地方都市から広まっていった。生活協同組合と同じコンセプトで、地方の個人商店の品揃えの少なさを補うことが主眼だった。

この社区団購がコロナ禍により注目をされ、テック企業が続々参入をしている。「多多買菜」(拼多多)、「美団優選」(美団)、「橙心優選」(滴滴)の3社が有力で「新三団」と呼ばれる。以前から存在した旧三団=興盛優選、十薈団、同程生活のうち、すでに同程生活が破綻をするなど、業界の激しい競争による整理も始まっている。

そこに、新小売スーパー「盒馬鮮生」(フーマフレッシュ)を擁するアリババがいよいよ参入してきた。業界再編が一気に進むのではないかと見られている。

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▲フーマブランドの社区団購「盒馬隣里」(フーマNB)。NBとはNeighbor BusinessともNeighbor & Burbsの略であるとも言われる。

 

すでに350店舗を展開する「フーマNB」

アリババは2021年5月から、内部で「NBプロジェクト」として、この社区団購の準備を始めていた。NBとはNeighbor Businessの略で、近隣ビジネスの意味だ。そのため、アリババに近い人の間では、このプロジェクトが社区団購であるという想像はついていた。

そのプロジェクトが「盒馬隣里」(フーマNB)で、開始時にすでに350店舗を展開している。上海、北京ではすでに100店舗を超えている。

ただし、他の社区団購とは、フーマフレッシュと連携をしているという点が大きな違いだ。都市の中心分は30分配送のフーマフレッシュで、郊外は翌日受け取りのフーマNBでカバーをするという戦略だ。

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▲北京のフーマNBの配置。市の中心部は新小売スーパー「フーマフレッシュ」でカバーをし、周辺部分を「フーマNB」でカバーするという戦略のようだ。

 

生鮮ECの5倍、社区団購の10倍の商品ライナップを実現

フーマNBには、他の社区団購よりも優れている点が2つある。社区団購の最大の利点は、前日注文であるために、出荷時には販売数が確定をしているという点だ。一般の店舗に配送をするには、需要予測をして、欠品も起こらず、売れ残りも出ないようにしなければならない。それに比べて、社区団購はあらかじめ販売数が確定をしているため、理屈上は欠品も売れ残りも出ずに配送計画を立てることができる。

しかし、それでも生産地から消費地まで翌日配送をするのは簡単ではなく、各社区団購とも商品種類(SKU=Stock Keeping Unit)を抑え、実現をしている。フーマNBではこのSKUを大幅に拡大をして、2万SKUの商品が翌日受け取りできるようになっている。

新三団のSKUは1万SKUに到達しておらず、今年になって美団優選が1000SKUから2000SKUに拡大したことを発表したほどだ。

この2万SKUは、生鮮ECをも凌駕している。生鮮ECの「叮買菜」(ディンドン)は1万2500SKU、「毎日優鮮」(メイリー、ミスフレッシュ)では4300SKU、翌日配送品で2万SKUに対応をしている。

社区団購を超えて、生鮮ECに対しても競争力のあるスペックになっている。

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▲すでに上海、北京を中心に350店舗を展開している。

 

配送時間を短縮し、朝昼食にも対応

また、一般の社区団購は、前日夜12時までに注文をすれば、翌日午後4時以降店舗受け取りが可能になるが、フーマNBの場合は、翌日朝8時以降受け取りが可能になる。一般の社区団購は、夕食の食材を買うのが基本になるが、フーマNBは昼食はもちろん、場合によっては朝食の食材にも間に合う。フーマフレッシュで鍛え上げられた物流配送網をうまく利用しているのだと思われる。

これにより、客単価が大きく違っている。新三団の平均客単価は10元程度と言われているが、フーマNBの場合は30元を超えているという。

アリババが社区団購に本格参入をするのは、他のテック企業に遅れをとったが、遅れた分、他の社区団購を凌駕するものとなっている。今後、社区団購の競争が次の段階に進むのは必至だと思われる。

 

 

中国版TikTokがフードデリバリーに進出。上場準備の一環か?

中国版TikTok「抖音」が、一部のユーザーに向けてテスト運用という形でフードデリバリーサービスを始めている。抖音のDAUは8億人を突破して、国民的なインフラとなっているため、正式スタートすれば一気に普及するのではないかと見られている。バイトダンスのこのような動きは、上場に向けた準備ではないかと見られているが、バイトダンス自身は否定をしていると三易生活が報じた。

 

TikTokがフードデリバリーサービスを始めた

中国版TikTok「抖音」(ドウイン)がフードデリバリーを始めている。「心動外売」(ハートビートデリバリーという意味。心が動く、ドキドキするという意味もある)という名称で、飲食店が公開しているショートムービーをタップすると、メニューが表示され、料理を注文すると、宅配をしてくれるというものだ。現在は、一部のユーザーに向けて試験運用がされている。正式スタートがいつになるのかは未定。

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▲抖音の「同城」(同じ都市)のタブを選ぶと、都市内の食事や娯楽施設の公式ムービーが大量に見つかる。飲食のムービーをタップすると、フードデリバリーの注文画面が現れる。現在、一部のユーザーを対象にテスト中。

 

配送では利益がでないフードデリバリー

運営は、北京微博視界科技が行い、宅配は飲食店側が即時配送の美団(メイトワン)、ウーラマなどを利用する。既存のフードデリバリーインフラを利用するため、業界に対するインパクトは小さいものの、フードデリバリーの入り口もグルメサイトではなく、ショートムービーになる可能性が生まれてきている。

フードデリバリーはすでに配送料だけでは利益が出ないビジネスになっていて、グルメサイトを入り口にし、フードデリバリーだけではなく、飲食店のプロモーションや広告で利益を出すビジネスになっている。今回の心動外売は、ある意味、フードデリバリーの利益の出る部分だけを実行し、利益の出ない配送部分は既存のインフラに委託をするというものになっている。長期的にはフードデリバリー業界に大きな影響を及ぼす可能性がある。

 

情報の入口はテキストかムービーか。テンセントとバイトダンスの争い

抖音の日間アクティブユーザー数(DAU)は8億人を超え、運営元のバイトダンスは2021年に8.6億人達成を目標としている。中国の情報の入口となるポータルは、テンセントのSNS「WeChat」とバイトダンスの「抖音」の2つといっても過言ではない状態になっている。

すでに抖音では、商品を販売するECを始めていて、2020年の流通総額(GMV)は5000億元(約8.5兆円)を突破するという驚異的的な実績をあげている。抖音のDAUが巨大であることもあるが、商品の紹介をウェブページという静的情報で見るよりは、ショートムービーという動的情報で見る方が、購買意欲が高まりやすいことが大きく関係をしている。

特に飲食品はその傾向が強く、美味しそうに食べている映像を見れば、お腹が空いて注文したくなる。それが30分程度でデリバリーしてくれるとなると、ついつい注文してしまう人が多い。特に、食飲遊楽泊の5分野では、ショートムービーを入り口にした小売りが強く、それが抖音ECを成功に導いた。

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▲抖音はすでにECを始め、大きな成果を挙げている。「商品」タグを選ぶと、さまざまな商品のムービーが現れる。タップをすると注文画面に飛ぶ。

 

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▲商品の購入ページ。商品については、ムービーでも紹介されているので、購買意欲が普通のECよりも高くなると見られている。

 

バイトダンスの上場準備か。バイトダンスは否定

バイトダンスは、成功した抖音を起点に、ライブコマース、EC、団体購入、フードデリバリーと小売の世界に急速に参入をしてきている。海外のTikTokでも、米国や英国で試験運用、準備を行なっている。

2021年3月、バイトダンスはCFOに、小米(シャオミ)のCFOだった周受資をCFOに迎え入れた。このような動きから、バイトダンスは上場準備に入っているのではないかと観測されている。ただし、バイトダンス広報は、そのような観測を否定し、社内に上場計画は存在しないと回答している。

いずれにしても、中国で短期間に国民的インフラとなった抖音、世界に短期間に広まったTikTokの規模を利用して、バイトダンスが直接収入を得られる事業に手を伸ばしていることは確かだ。心動外売も、正式にスタートすれば、あっという間に若い世代を中心に利用が広がると期待されている。

 

シャオミが新卒者5000名を一気に採用へ。目的は経営者の高齢化を防ぐこと

小米が新卒者5000人の大量採用計画を明らかにして話題になっている。雷軍CEOは、経営者の高齢化を防ぐために、若い世代を大量採用して、その中から30歳で経営層に入る人材を育てるのだという。雷軍は今後中国で深刻な問題になる高齢化社会にいち早く手を打ったと中欧商業評論が報じた。

 

シャオミが新卒者5000人を採用へ

小米(シャオミ)の創業者である雷軍(レイ・ジュン)CEOは、WeChatの公式アカウントで、2021年の新卒者リクルート活動を始めることを告知した。このリクルート活動は、小米が創業して11年で最大の規模となり、5000人を採用する計画であるという。これは2020年末の小米従業員数の23%にも相当する。さらに、この中から10年以内に、30歳で役員になる人材を育てたいとしている。

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▲小米を創業した雷軍。そのプレゼンテーションの姿から「中国のスティーブ・ジョブズ」と呼ばれたが、お手本にしているのは無印良品だった。製品コンセプトだけでなく、製造方法や販売方法まで研究し、それを電子機器、電化製品に応用している。

テック企業の課題は、若い経営者を育てること

中国発展基金会によると、中国の高齢化率(65歳以上の人口比)は、2035年に22.3%になると予測され、高齢者化社会の基準である20%を超え、中国は完全な高齢化社会に突入する。

労働人口が減少をするのも大きな問題だが、雷軍が問題にしているのは、企業のリーダーも高齢化をしてしまうということだ。どんな人間であっても、年齢が高くなれば保守的になる。保守的なリーダーでは、企業の発展はない。小米を長期にわたって発展させていくには、若い世代のリーダーを今から育成しておくことが急務だと雷軍は考えているという。

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▲日本の社長の平均年齢は年々上昇傾向にある。「後継者が見つからない」という社長が65%にものぼっている。「特別企画:全国社長年齢分析」(帝国データバンク)より引用。

 

進む経営者の高齢化

フォーブズの中国CEOランキングの上位50人の平均年齢は54歳。中国のテック業界では、創業者の55歳というのはひとつの転換点になっている。2019年にアリババの創業者、馬雲(マー・ユイン、ジャック・マー)が引退をしたことが大きく影響している。つまり、この数年で、中国のテック企業では、創業者の引退が相次ぐことになる。

これは90年代の日本と状況がよく似ている。1990年の日本の高齢化率は12.1%で、日本の主要企業の社長の平均年齢も54歳だった。しかし、社長の世代交代率はわずか5%弱で、その後、社長の平均年齢は上昇し続け、2021年現在は60.1歳にまで上昇している。さらに、社長の交代率も低下をし、2021年現在は3.8%になっている。それでも65%の社長が「後継者が見つからない」と悩んでいる。

よく「老害」という言葉が使われるが、社長の年齢が高くなり、老化により適切な判断ができなくなるということよりも、リーダーの交代が進まず、20年前、30年前に活躍をした人がリーダーになっていることが問題の本質だ。本人は進歩的で最先端の手を打っているつもりでも、それは世界標準から見れば10年前に対応済みのことになってしまっている。

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▲社長の交代率も減少傾向にある。雷軍は、高齢化に関しては中国の30年後が日本の今だと考え、今から若いリーダーを育成する準備を始めている。「特別企画:全国社長年齢分析」(帝国データバンク)より引用。

 

日本に学んだ雷軍は、リーダーの若返りを図っている

雷軍は日本企業のことをよく研究している。2010年に小米が発売した「小米1」は当時のiPhoneと性能は遜色がなく、価格は1/2ということから爆発的な人気となり、発表会でもスティーブ・ジョブズばりのプレゼンを披露したことから、「中国のスティーブ・ジョブズ」と呼ばれるようになった。

しかし、雷軍がお手本にしていたのは、無印良品を運営している良品計画だった。「創業した時の想いは、中国の製造業を変えたいということでした。中国人の国産品に対するイメージを変えたいということでした。中国の高いものづくり能力をどう活かせば、世界でトップクラスの製品が作れるか。それを考えていました」。

無印良品は、すべての製品でデザインの統一性があり、システマティックに品質の高い製品が製造できる仕組みを構築していくる。雷軍はここを学び、それを電子機器に応用をしてきた。

高齢化、労働人口の減少という点では、現在の中国は1990年の日本の状態になっている。中国は30年後の未来を現在の日本に見ていることになる。それが、小米の大量採用につながり、若い経営層を育成し、半ば強引に企業リーダーを世代交代させていくべきだという雷軍の発想につながっている。

 

 

1時間で10万本の電話。人工知能がPCR検査を勧めて、全員検査

中国でも変異種による新型コロナの感染拡大が散発的に起きている。その対処法は、全員PCR検査、早期隔離だ。これで市中感染という最悪の時代を防げている。その全員PCR検査に貢献しているのが、人工知能による検査のすすめの電話だと21世紀経済報道が報じた。

 

5月下旬に変異種が感染拡大をした広州市

新型コロナの感染を抑え込んでいた中国で、再び、変異種が拡大をした。広州市では、5月下旬に国外から持ち込まれた変異種が広がる事態となり、1ヶ月間で200人弱の新規感染者が確認された。

広東省疾病予防管理センターでは、デルタ株は、潜伏期間が非常に短く、感染速度が速いという声明を出し、全国の緊急対応チームが広東省に入り、仮設のPCR検査センターを設置、感染者が出た地区は封鎖をし、225万人の住民全員にPCR検査を実施するという対応をした。また、対象地区以外の住民にもPCR検査を受けるよう呼びかけた。

さらに、広州市政府は、広州市外に移動する人には、健康コードの提示と72時間以内のPCR検査陰性証明書の所持を義務づけた。

このような対応の結果、6月に入ってからは、新規感染者はすべてPCR検査により発見されており、市中感染は起きていないと判断、6月下旬には新規感染者、重症患者ともゼロになり、制限の緩和が始まっている。

 

全員PCR検査、早期隔離で市中感染を防ぐ

ポイントは、感染拡大初期に全員検査をすることで、他の都市でも1人でも新規感染者が発見された場合は、その地区を数日間封鎖し、大量の人員を投入して、住民全員をPCR検査、感染者を炙り出し、入院隔離、検査チームに余力が生まれたところで、周辺地区の希望者にPCR検査をするという「早期大量検査・即時隔離」の手法で、感染を拡大させない作戦をとっている。

 

PCR検査を促す電話がかかってくる

この時期、市民に対して不思議な電話がかかってきたという。

(女性)「こんにちは、こちらは海珠区の疾病予防指揮部部です。広州市の予防措置により、お時間をいただけないでしょうか。いくつかの質問にお答えください。まず、あなたは海珠区にお住まいですか?」

(市民)「はい、そうです」

(女性)「この3日間の間にPCR検査はお受けになりましたか?」

(市民)「受けていないですね」

(女性)「わかりました。では、地域が指定する検査会場にいかれてPCR検査を受けてください。お時間をいただきありがとうございます。あなたの健康を願っております。失礼いたします」。

 

https://www.bilibili.com/video/BV1zE411a7oD/

▲科大訊飛による電話ロボット「小飛」のデモ。人間の応答を理解し、質問に対する答えを自動集計する機能がある。

 

電話1本でも効果は大きい。1時間で10万本をかける人工知能

要は、PCR検査を勧める電話にすぎないが、効果は大きいのだという。PCR検査は1度受ければいいというものではなく、検査後に感染をすることもあるので、定期的に受ける必要がある。それはやはり、普通の人にとっては面倒くさい。それが電話で促されることで多くの人が検査に協力をするようになる。

この36秒で終わる電話は、人がかけているのではなく、人工知能による合成音声がかけている。相手の返答を理解して、異なるシナリオに分岐する。このシステムは、科大訊飛(カーダーシュンフェイ、iFLEYTEK)が開発をしたスマート医療支援電話ロボットだ。

本来はスクリーニング検査や治療後の状態確認に使うものだ。医師がシナリオを作成し、人工知能がそれに沿って指定された患者全員に電話をし、返答を理解して、自動集計するというものだ。

科大訊飛は、21世紀経済報道の取材に応えた。「人が電話業務を行うと、1日8時間で100通話が限界です。しかし、私たちの電話ロボットでは、最高で、1時間で10万本の電話がかけられます」。電話に出ず、回答が得られなかった場合は、時間をおいて電話を再びかける機能もある。

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▲科大訊飛による電話ロボットの利用での活用イメージ。医師がアンケートなどのシナリオを作成すると、小飛がリストに従って電話をかけ、回答を理解し、自動集計される。健康調査などに利用される。

 

30都市で利用される電話ロボット

広州市では、この電話ロボットを使って、感染が拡大していた6月3日までに3.56万人に電話をかけ、80%の人に電話連絡をすることができたという。

この科大訊飛のシステムは、北京市安徽省浙江省吉林省湖北省などの30以上の省市で採用され、すでに8000万人以上に電話連絡をし、結果の集計をした実績がある。

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▲小飛を利用する医師のイメージ。コロナ禍は中国の経済に大きな打撃を与えたが、さまざまな分野でのリモート技術が普及をした。医療でもリモート医療の時代になろうとしている。

 

 

自動車のAピラーを透明にして安全確保。EVメーカー「ナタ」が採用。浙江省では安全性試験の標準化へ

6月1日、浙江省汽車工程学会は「乗用車デジタル透明Aピラーシステム性能要求と試験方法」(http://www.ttbz.org.cn/upload/file/20210510/6375625214003599911435441.pdf)を公開した。これは中国で初めての透明Aピラーの規格の雛形になるものだと開眼視頻が報じた。

 

運転者の死角となっていたAピラー

自動車のAピラーとは、フロントグラス部分を支える柱のこと。フロントグラスや車の屋根の部分を支えるだけでなく、衝突時には乗員空間が潰れるのを防ぐ役割も持っっている。そのため、強度のある素材や太さなどが必要であり、わずかながら運転者の死角を生み出していた。

特に、運転席側のAピラーによる死角は6度と大きく、右左折するときに、並走している自転車やバイクが、シンクロしてこの死角に入り続けることがあり、運転者の意識から消えてしまい、接触事故を起こすことがある。

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▲Aピラーは、わずかながら死角を生み出している。高速走行の場合はあまり問題にならないが、右左折時や駐車時には、バイク、自転車、歩行者が、Aピラーの死角に連動して動いてしまい、接触事故を起こすことがある。図は左ハンドルの場合。

 

カメラとディスプレイを使って擬似的に透明化

そこで、各自動車メーカーでは、このAピラーの透明化の工夫を始めている。もちろん、透明な素材でAピラーを作るのは難しいので、カメラとディスプレイを利用して、外の風景をAピラー上のディスプレイに映し出す擬似透明化という考え方が採用されている。幸いなことに、運転中の多くの時間で、運転者の顔の位置は大きくは動かないので、カメラ角度を自分に合わせて設定することで、違和感なく透明化効果を得ることができる。

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▲実際に透明化されたAピラー。撮影位置の問題で外の風景とずれているように見えるが、運転手の頭の位置を測定して、カメラ角度を調整し、運転者には自然な風景に見えている。

 

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トヨタの特許出願図。トヨタでは、カメラとディスプレイではなく、ミラーの組み合わせで、Aピラーを擬似透明化する特許を出願している。

 

液晶ディスプレイでは問題が生じる

しかし、一般的な液晶ディスプレイを利用することは問題がある。ひとつは液晶ディスプレイには厚みがあるため、Aピラーを薄くするか、液晶ディスプレイの分だけ乗員空間の内側に迫り出してくることになる。前者の場合は、強度に問題が生じる可能性があり、後者の場合は乗客空間内の快適さが失われる。

また、衝突時にはAピラーには大きな負荷がかかるため、ガラス素材である液晶ディスプレイは容易に割れる。運転者の顔に近い部分で、ガラスの砕片が空中に舞うことになり、顔や目という人間の弱い部分を傷つけてしまう可能性がある。

 

フレキシブル有機ELを採用することで透明化を実現

新エネルギー車メーカーの哪吒(ナージャー、ナタ)は、この問題を曲げられるフレキシブル有機ELディスプレイを使うことで解決した。薄いフィルム上のディスプレイなので、従来のAピラーの上に貼り付ける感覚だ。すでに同社の「哪吒U Pro」に透明Aピラーを搭載している。

同社の透明Aピラーシステムも2.0にアップグレードされた。運転者は運転中は頭の位置をあまり動かさないものの、交通状況が複雑になると、外部をよく見ようとして頭を前に出す習性がある。この時、透明Aピラーに映し出す風景がずれてしまい、かえって運転者を混乱させる可能性がある。

そこで、運転席に運転者の目の位置を追跡するカメラを設置し、自動的にAピラーに映し出す風景を違和感のない角度に調整する機能が搭載された。また、昼間と夜間では光の条件が異なるため、これも自動調節をして、違和感がなくなる機能が搭載された。

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▲ナタのフラグシップモデル「哪吒U Pro」。透明Aピラーを搭載していることが話題になっている。また、自動駐車機能も備わっている。

 


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▲自動車専門メディア「苑叔聊車」による、哪吒U Proの試乗レビュー。透明Aピラーについても言及がある。

 

課題はOLEDの寿命

哪吒の透明Aピラー2.0は、自動車メディア、評論家、オーナーからも非常に好評だが、唯一の欠点はOLED(有機ELディスプレイ)の寿命の問題だ。具体的な使用年数は明らかにされていないものの、数年で交換が必要になると見られている。

現在、透明Aピラーの交換には1.2万元(約20万円)が必要で、自動車部品の交換料金としては高額の負担を強いられる。

そのため、透明Aピラー2.0では、車速に連動する設定も設けられた。車速が一定以上になると透明Aピラーがオフとなり、車速が落ちると透明Aピラーがオンとなるものだ。Aピラーの死角が問題となるのは、右左折時や駐車時なので、高速走行をするときはオフにして、OLEDの寿命を伸ばすというものだ。

まだ課題はあるとはいうものの、Aピラーの透明化により、運転しやすくなることは明らかだ。世界中の自動車メーカーが、それぞれの形で透明Aピラーの開発を行なっている。これからの車は、透明Aピラーが当たり前になっていく可能性が高い。

 

 

広告メディアとしてのTikTok。デジタル広告の主流になり始めているショートムービー広告

まぐまぐ!」でメルマガ「知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード」を発行しています。

明日、vol. 082が発行になります。

 

今回は、ショートムービー広告についてご紹介します。

現在、中国には月間アクティブユーザー数(MAU)10億人を突破している企業が4つあります。ひとつはSNS微信」(ウェイシン、WeChat)を運営する騰訊(タンシュン、テンセント)です。次が、EC「淘宝網」(タオバオ)、「天猫」(Tmall)を運営するアリババです。その次が中国版TikTok「抖音」(ドウイン)、ニュースアプリ「今日頭条」(トウティアオ)を運営するバイトダンスです。さらに、最近、ショートムービー「快手」(クワイショウ)を運営する快手科技が、この10億人クラブに名を連ねました。この10億人クラブ4社のうち、2社までがショートムービーを主力プロダクトにしているのです。

 

このショートムービーの勢いは止まりません。「2020中国ネット視覚聴覚メディア発展研究報告」(中国ネット視覚聴覚コンテンツサービス協会)によると、モバイルインターネット(スマートフォンタブレットなど)の1日の平均利用時間は366分(6時間6分)であり、ショートムービーの利用時間は110分(1時間50分)となり、ムービー、ライブ配信、音楽ストリーミングを超えて、最も利用されているオンラインのオーディオビジュアルメディアとなりました。

ショートムービーは基本15秒の動画で、平均30秒だとしても、1日に220本のショートムービーを見ている計算になります。MAUが8億人を超え、最も人気のある抖音では、1時間ほど見ていると、「使いすぎに注意」という公式ショートムービーが挿入されるようになっているほどです。

 

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▲平均スマホ利用時間の変化。コロナ禍の渦中の時よりは少なくなったが、年々増加している傾向は変わらない。「2020中国ネット視覚聴覚メディア発展研究報告」(中国ネット視覚聴覚コンテンツサービス協会)より作成。

 

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▲各サービスの利用時間の変化。ロングムービー(ドラマ、映画など)がやや減少して、ショートムービーが伸び、オーディオビジュアルサービスでは最もよく利用されるサービスになった。音楽ストリーミングも着実に伸びている。「2020中国ネット視覚聴覚メディア発展研究報告」(中国ネット視覚聴覚コンテンツサービス協会)より作成。

 

なぜ、ここまで中国人はショートムービーを見るのでしょうか。それは使ってみるとすぐに理解できます。ショートムービーは、最も活力があった時代のテレビ放送に似た感覚なのです。

その最大の理由が、受け身でいいことです。自分から検索をしてショートムービーを探すこともできますが、基本は配信されてくるショートムービーを次から次へと見ていくだけです。バイトダンスのリコメンドシステムは非常に優秀で、興味のあるショートムービーが次々と流れてきます。何も考えずに、受け身で楽しめる。とても楽なのです。

オンラインのドラマや映画、音楽というのは、「何を見ようか」と考えなければなりません。考えた末に選択した映画が面白くないということも起こります。抖音でも興味のないショートムービーが流れてくることはありますが、わずか15秒のことですし、フリックしてスキップさせてしまえば問題ありません。

ただ、テレビ放送との大きな違いは、高密度であるということです。1時間のワイドショーを見る間に、ショートムービーであれば240本のさまざまなコンテンツに触れることができます。満足感が圧倒的に違います。

 

この感覚は、TikTokでは得られないかもしれません。日本ではTikTokを使う人たちというのは若い層が中心で、40歳以上の方は「もうそういうものを使う歳ではない」と避けている方も多いかと思います。確かに、TikTokは若者が好みそうなダンス映像や面白映像が多いように感じます。

しかし、8億人が使う抖音はそうではありません。もはや国民的なインフラとなり、ニュース映像や科学解説、歴史ドキュメンタリー、ビジネス解説、漫才、スポーツ結果、行楽地案内など、その広がりは全世代に及んでいます。そのような幅広いコンテンツが存在する中で、優秀なリコメンドシステムがあるので、すぐに自分の興味あるショートムービーばかりが流れてくるようになります。

テレビのように受け身で楽しめるメディアであり、テレビよりも高密度で、テレビよりも当たりコンテンツの確率が高い。テレビを見なくなり、スマホでショートムービーを見るようになったという人が続出しているのも理解できます。

今、どこの国でも高齢者がスマホを使いこなすことができず、生活情報などが入らないデジタルデバイドの問題が起きていますが、それは中国も同じで、60歳以上のスマホ普及率は38.6%でしかありません。しかし、スマホを使い始めた高齢者の間では、今度は使いすぎが問題になるようになりました。毎日10時間以上もスマホを使ってしまう人が10万人もいるというのです。60歳以上の人口は2億人いるので、割合で言えばごくわずかですが、健康などに問題がでないかと心配されています。そのヘビーユースの高齢者がいちばんよく使うのが、ショートムービーとオンライン読書なのだそうです。

 

ショートムービーは利用者の人数、利用時間も大きなメディアですが、一方で、広告効果も図抜けて高いメディアです。「vol.012:広告メディアとしてのTik Tok。その驚異のコンバージョンの秘密」でご紹介したように、TikTok、ウェイボー(中国版ツイッター)、ビリビリ(中国版ニコニコ動画)での広告効率を比べてみると、TikTok(抖音)は、ビリビリの9.46倍もの広告効率がありました。これは、ビリビリの1人のユーザーが1分間ビリビリを利用する間に、抖音はその9.46倍の広告料を稼ぐということです。

なぜそのようなことが可能になるかについては、「vol.012:広告メディアとしてのTik Tok。その驚異のコンバージョンの秘密」をもう一度お読みになっていただくとして、簡単に言えば、バイトダンスが開発したリコメンドシステムの優秀さが大きな要因です。

 

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TikTok(抖音)、ウェイボー、ビリビリのユーザー1人が1分利用する間の広告収入の比率。ビリビリを1とすると、抖音は9.46倍も広告費を稼ぐ。これは2019年の数値を使ったもので、2020年ではさらに差が開いていると思われる。

 

もうひとつの要因が、ショートムービーでは、広告とコンテンツをほとんど区別しなくなっているということがあります。

地上波テレビでもこの傾向は進んでいます。面白い商品やサービス、飲食店、娯楽スポットなどを紹介する情報バラエティ番組は、全編タイアップ広告といっても差し支えがない番組の構成になっています。それでも視聴者が番組を楽しんでくれるのであれば、何も問題はありません。

抖音でも、広告ショートムービーは基本的には区別されず、内容も他のコンテンツと同じように魅力的なものになっています。いわゆる昔のテレビCMのように、商品名を連呼するタイプの広告はほとんどありません。昭和のテレビでは、まずは商品名を知ってもらい、記憶してもらうことが何よりも重要でした。なぜなら、テレビでは商品を販売できないからです。商品名を記憶してもらって、お店に行った時に商品名を思い出してもらい、手に取ってもらい、最後にレジでお金を払って、ようやく広告の使命をまっとうすることができます。ですから、下品だろうとうるさく思われようとも、商品名を連呼して、名前を記憶してもらう必要があったのです。

しかし、抖音では商品名を記憶してもらう必要はありません。なぜなら、その商品が気になったら、ムービー画面をタップすれば、すぐに購入ページに飛び、購入できるようになっているからです。商品名を記憶してもらうよりも、その商品を魅力的に感じてもらうことの方がはるかに重要になっています。極論すれば、買ってもらえさえすれば、商品名やメーカー名などあやふやであってかまわないのです。

そのため、広告は非常にシンプルなコンテンツになっています。食品であれば、出演者が美味しそうに食べるショートムービーを流すだけでじゅうぶんですし、電子機器であれば新奇性のある機能を見せればじゅうぶんです。

多くの広告コンテンツは、プロフェッショナルが制作をしていますが、ゴージャスな映像作りをすることは少なく、スマートフォンで撮影し、あたかも素人がさっき撮影したかのような広告映像が多くなっています。そのような映像の方が、他の一般コンテンツとの違和感が少なく、見てもらって、商品に興味を持ってもらえる確率が高いことを広告のプロたちは理解をしています。

そのため、抖音の広告を見ると、何か低予算のしょぼいセットで、適当に撮ったように見えるかもしれません。しかし、広告映像のプロがやることは、芸術祭に出品できる映像を作ることではありません。コンバージョンの高い映像を作ることです。その意味で、中国のショートムービーの広告は、日本のテレビ広告の映像の感覚で見ると、しょぼく見えるかもしれませんが、ある意味では先に進んでいるとも言えます。

では、ショートムービー広告はどのような特性を持っているのでしょうか。それを、実例を元にご紹介したいと思います。

 

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ファーウェイの天才少年が開発をした自律走行する自転車。一人で4ヶ月で開発

ビリビリの配信主「稚暉君」が公開した動画が話題になっている。自律走行をする自転車を週末の空き時間を利用して、わずか4ヶ月で開発したというものだ。稚暉君はビリビリの人気配信主であるだけでなく、ファーウェイの天才少年プロジェクトにも選ばれた人。すでに商品化してほしいという声が相次いでいる。

 

自律走行自転車を開発したのはファーウェイの天才少年

ビリビリの配信主「稚暉君」(ジーホイジュン)が、動画を公開したのは6月6日。すでに300万回以上再生されている。稚暉君は以前から科学やテック系の動画を公開している人気配信主。

この稚暉君の本名は、彭志輝(ポン・ジーホイ)さん。2018年に電子科技大学を卒業し、2020年にファーウェイの天才少年プロジェクトで合格をし、高給でファーウェイに入社をした。



https://www.bilibili.com/video/BV1fV411x72a/?spm_id_from=333.788.recommend_more_video.-1

▲稚暉君の自律走行自転車の紹介ビデオ

 

自転車で転倒したことが開発のきっかけ

稚暉君が自動運転自転車の開発を始めたのは、自分で自転車に乗っていて、転倒してしまいケガをしたことがきっかけだ。中国で自転車は「自行車」というが、ぜんぜん自分で行く車じゃないじゃないか!と、自動でバランスを取り、自律走行する自転車を開発しようと考えた。

開発期間は4ヶ月かかったというが、仕事もあるので、週末だけの作業。その短い時間で自動走行自転車を開発し、その開発手法にも注目が集まっている。

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▲稚暉君は自転車で転倒をしてしまった。これが開発のきっかけになっている。

 

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▲設計はすべてCAD上で行った。まずは自分のクロスバイクのデータを入力し、自転車をCADで再現。

 

CADで設計、部品は3Dプリンター出力

稚暉君は、すでに持っているギアのないクロスバイクに装置を取り付けて、自律走行自転車を開発することにした。

コンセプトは3つのモーターを使うというもの。ひとつは前進をするために後輪に接して、前進力を生み出すモーター。これは当然だ。

もうひとつは、大きな金属の円盤を回転させるモーター。この金属の回転により、角運動量が生じ、自転車のバランスを取る。いわゆるジャイロ効果でバランスを取るというものだ。

最後のひとつは、ハンドルを回転させるモーター。ジャイロでバランスを取るだけでなく、ハンドルを切ることで転倒しないように前進をする。

そして、具体的な設計をCAD上で行った。そして、部品を3Dプリンターで出力。ただし、強度を必要とするパーツは、知り合いにCADデータを渡して、金属の削り出し加工などの手法によって製造してもらった。

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▲後輪に接するモーター。これにより前進する。

 

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▲ハンドルを制御するモーター。走行中はハンドルの切り角を変えることでバランスを取る。人間が行う操作と基本的に同じだ。

 

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▲座席下に設置されたジャイロ。これが回転し、ジャイロ効果を生む出すことで、車体のバランスを取る。

 

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▲多くの部品は、CADから3Dプリンターで出力した。

 

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▲強度が必要な部品は、知り合いにデータを渡して、金属の削り出し加工で作成してもらった。

 

Unityを利用して仮想空間の中で機械学習

さらに、計算チップ部分の設計も行なった。AI計算に特化した計算チップとモーターの制御コントローラーなどを1つのボードに乗せたもので、傾きセンサーなど各種センサーから得た情報を処理して、駆動モーターとジャイロの回転数、ハンドルの切り角を制御して、自律走行させようというものだ。AIチップは当然ながら、ファーウェイのアセンド310が使われている。

ただし、そのAIプログラムの開発には時間がかかった。50ものパラメーターを参照して機械学習をしなければならないからだ。この時に利用したのが、オープンワールドゲームなどの開発で使われているUnityだ。自動運転自転車のモデルをUnity上で作成し、プログラムもUnity内に移行し、バーチャル空間の中で学習を進めた。

そして、実際に組み立てをしてテスト走行を行い、その結果からプログラムを修正し、Unity上でテストし、実際の自転車に反映させるということを繰り返していった。

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▲自転車の小脳の役割をするAI計算チップ。もちろん、ファーウェイのチップが採用されている。

 

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▲完成した自転車。開発はこの小さな部屋で行われた。

 

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▲バランス試験もこの部屋の中で行われた。

 

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▲ゲーム開発プラットフォームUnityを利用し、バーチャル空間の中で自転車を走らせ、機械学習を進めていった。

 

天才少年が生み出した新しい乗り物

この自動運転自転車のシステムは、「軒」(シュアン、XUAN)と命名された。eXtremely Unnatural Auto-Navigationの略だという。また、軒というのは、古代中国で乗り物を総称する言葉だったという。

ジャイロ作動時には、停止をしている状態でもバランスを取り、自立ができる。見た目は自転車だが、自転車とはまったく違った新しい乗り物になっている。すでにコメント欄には「商品化してほしい」という声が相次いでいる。

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▲実際の路上テスト。動画を見るとわかるが、これは走行中ではなく、停止をしている。停止をしていても、ジャイロの回転数を変化させることでバランスを取ることができる。

 

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▲ハンドルに荷物をかけると、一瞬揺らぐが、すぐにバランスを取る。

 

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▲このような柵の上に乗せても、バランスをとって静止する。

 

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▲自律走行自転車はすでに進化をしていて、走行をしながら周辺のマップを作成する機能が搭載された。最終的には、始点と終点を指定するだけで、自動走行するようになる。