中国の地下鉄は乗車前に手荷物などの保安検査を受けなければならない。このため、改札前は混雑するのが日常だ。しかし、ほんとうに保安検査は必要なのか。市民から不満の声があがり、ネットで大きな議論になっていると玅巫が報じた。
地下鉄に乗るにも保安検査が行われる
中国の地下鉄を利用する時は、改札から入る前に、空港と同じような保安検査を受けなければならない。手荷物はX線検査機を通す必要がある。
地下鉄のように混雑する公共交通で、このような検査を行っている国は意外と多い。中国以外にもインド、ロシア、タイ、エジプトなどで実施されている。
問題は混雑との兼ね合いだ。特にラッシュ時は保安検査に長い行列ができることがある。そこは現実を考え、多くの都市で、X線検査機を通さなくても、検査員に中を見せれば通すという現実運用をしている。このため、男性は極力バッグを持たないようにし、女性も口が広く開ければ中が見えるタイプのバッグを使う人が多い。これであればX線検査機に並ばずに改札にいけるからだ。

深圳市が厳格したことに不満続出
ところが、深圳市地下鉄がこの検査を突如厳格化し、利用者から不満の声があがっている。一般的にはスマートフォンや財布が入るような小さなポシェットや、口の広いバッグは検査員に中を見せて確認しておけばX線検査機を通す必要はなかったが、これが厳格化されて必ずX線検査機を通さなければならないようになった。
これにより、保安検査に並ぶ行列が長くなり、朝夕のラッシュ時にはなかなか改札にたどり着けないということが起こり、利用者から不満の声があがっている。
それだけではなく、欧米や日本、韓国の地下鉄では、このような検査は行っていない。それでいて、日本の地下鉄サリン事件以外、大きな事件というのは起きていない。そもそもこのような検査は必要なのかという声もあがり始めている。

保安検査のためのコストは約5000億円
保安検査により地下鉄に乗るのに時間がかかるという以外、そのコストも問題視され始めている。全国で地下鉄安全検査を担当する人は25万人と言われており、検査機の保守、検査監督などを含めると35万人の人が従事していると言われる。
2025年のデータでは、一線都市での月の手取りは5500元から7000元、二、三線都市では3500元から5000元となっている。年収にすると一線都市では6万元から9万元、二、三線都市では4万元から6万元となる。
平均の年収が6万元だとすると、その他の設備の調達なども併せて年間コストは220億元(約5000億円)を超えることになる。
運賃の1/4が保安検査コスト
このコストは当然ながら乗客が負担している。保安コストを各駅乗降客数の合計で割ると、一人あたり0.47元から0.65元となるが、この乗降客数は乗換客も含んでいるため、実際に改札を通って乗車する人数は少なめになるため、一人あたりの保安コストは1.0元に近づいていくことになる。
多くの都市の地下鉄の初乗り運賃は3元(約70円)であるため、運賃の1/4から1/3が保安コストということになる。
赤字運営の地下鉄を救う保安検査廃止の声
地下鉄は基本的に赤字運営になっている。2024年のデータでは、地下鉄の総収入は約1200億元で、そのうちチケット収入が700億元、店舗や広告などの収入が500億元となっている。一方で、支出は2100億元となっており、毎年900億元の赤字が生まれている。
この赤字は各地方都市の財政支援により補填している。つまり、地下鉄が公共交通であることを鑑み、税金により低価格で乗車できるようになっている。保安検査のコストがこんなにかかるのであれば、廃止をして地方政府の財政負担を減らした方がいいのではないかと主張する人もいる。
賢い運用をする香港地下鉄
例えば、香港でも地下鉄の保安検査は行われているが、平日の朝夕のラッシュ時には行われない。乗車の効率を考え、検査員が監視をし、明らかに不審な人物に声掛けをするにとどまっている。しかし、休日などのさまざまな人が乗車する時間帯や、大きなイベントがある時には保安検査を行う。効率と安全のバランスを考えながら運用している。
中国の面倒だった地下鉄の保安検査を大きく変える議論が始まろうとしている。
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