中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

スマホ1台で生活が送れる時代が始まる。身分証、ウォレットの機能を内蔵したスーパーSIMカード

江蘇省が全国に先駆けてスーパーSIMカードの提供を進めている。スーパーSIMカードを使うと、スマホが身分証、ウォレットになり、スマホ1台で公共交通に乗れ、公的な身分証として利用できるようになると人民郵電報が報じた。

 

スマホが身分証とお財布になるスーパーSIMカード

中国では、決済、公共交通の乗車、身分証などあらゆるものがスマートフォンのアプリ化をし、スマホひとつで生活できる環境が整い始めているが、それぞれに本人確認をするなど利用をするための設定をしなければならない。そこで、江蘇省の通信キャリア「江蘇移動」は、スマホSIMカードに生活関連の機能を内蔵したスーパーSIMカードの配布を2021年12月から始めている。

SIMカードは利用する通信キャリアとの契約者情報が保存されたICカード。これをスマホに装着することで、電話やパケット通信ができるようになる。このSIMカードに、身分証情報などを追加したものがスーパーSIMカードになる。

実際には、SIMカード内の情報を使って、スマホNFC(近接無線通信)を利用し、タッチすることでさまざまな機能を実現する。

現在、江蘇省ではスーパーSIMカードを使っている利用者は623万となり、アクティブユーザーは349万人になっている。

▲スーパーSIMカードは、スマートフォンに入れるSIMカードの拡張版。左側のSIMカードを切り取って、スマートフォンに挿入する。

 

スマホがタッチ決済交通カードに

最も便利で、よく使われているのが、スマホをバスや地下鉄の交通カードとして使うというものだ。

無錫市の蔡其旼さんは、バスに乗るために、交通カード、アリペイ、ApplePayとさまざまなものを使ってきた。しかし、現在のスーパーSIMカードが最もユーザー体験が優れているという。

交通カードの時代は、持って出るのを忘れて、バスに乗る時になって気がついて慌てるということがあった。アリペイのQRコード方式は便利だが、バスに乗る前にQRコードを表示しなければならず、あてる角度が悪いとうまく読み取れないこともあり、スマホのバッテリーがなくなってしまった時はどうにもならないという問題があった。ApplePayはNFCによるタッチ決済なので便利だが、海外の仕組みであるため、多くの場合、割引やポイントなどの優待がないことが多い。

▲バスの乗車には、交通カード、スマホ決済、ApplePayなどさまざまな決済方式が導入されているが、タッチするだけでいいスーパーSIMカードが最も使いやすい。

 

スーパーSIM交通カードの4つのメリット

江蘇移動の広報担当者によると、スーパーSIMによる公共交通乗車には4つの利点があるという。

1)スマホがそのまま交通カードとなるため、忘れることがない

2)ネット接続不要であり、スマホが起動しないほどバッテリーが消耗していても利用ができる

3)公共の仕組みであるため、多くのバス、地下鉄で割引などの優待策がある

4)スーパーSIMは全国300都市で採用をされているため、旅行や出張に行っても、他省のバスや地下鉄でも使える。

現在、スーパーSIMカードの公共交通カード機能の利用者は165万人で、毎月92万人が利用している。また、江蘇移動は、南京市と南通市で、高齢者と学生用の交通カード機能の提供も2022年1月から始めている。60歳以上の人と18歳以下の子どもは半額になり、さらに70歳以上の人はタッチをすることで無料で乗車をすることができる。

▲スーパーSIMカード専用アプリ。公共交通の乗車、身分証、デジタル人民元などの機能がある。アプリは設定をするのに必要なもので、通常はスマホをタッチするだけでさまざまなサービスが利用できる。

 

スマホがマンションカードにも

スーパーSIMカードは、マンションの出入りをする時の身分証明ともなって、住宅地の治安にも寄与している。マンションの出入り口などで、スマホが鍵になって、門を開けることができる。

現在、スーパーSIMカードを鍵としているマンションは、江蘇省内に4679カ所に増えている。

南京市の鼓楼鐘阜路2号のマンションに住んでいる張さんは、スマホがマンションの鍵となって非常に便利になったという。以前は、マンションのICカードがあって、それを出入り口でタッチをしないと、マンションから出ることも入ることもできない。忘れた場合は、警備員に連絡をして、身分証を提示して開けてもらわなければならず、非常に面倒だった。スマホがマンションのカードになって、忘れることもなくなった。

また、マンションのカードを使っていた時代は、そのカードを拾った人が出入りをしてもわからず、治安上の課題があったが、スマホがカードになると、なくした人はすぐに停止の処理をするため、そのような課題も解決された。

さらに、スーパーSIMカードでタッチをすると、SIMカードのシリアル番号が記録され、携帯電話番号と紐づけておけば、実名による管理が可能になる。マンションの防犯レベルをあげることができる。

 

大学でも使われるスーパーSIMカード

スーパーSIMカードは大学でも活用されている。徐州市の江蘇師範大学では、スーパーSIMカードを大学内で活用している。

以前の学生は、さまざまなカードを持ち歩かなければならなかった。学内では学生カード、外に出るには交通カード、実家に帰るにはマンションカードが必要になる。それがスマホだけを持っていればよくなった。

学内では、学食で利用できるのが大きい。バイキング方式の料理をとって、料金を計算してもらい、あとはスマホをタッチするだけで精算ができる。さらに、大学のキャンパスに入る時もスマホをタッチするだけいい。図書館で本を借りるときもタッチするだけでいい。学生証が必要な場面では、すべてスマホのタッチで済むようになった。

現在、江蘇省では30以上の大学、専門学校がスーパーSIMカードを活用している。

▲大学の学食でも、料理の料金を計算してもらった後、タッチをするだけで支払いができるようになる。

 

出張族からの要望も強い

出張の多いビジネスパーソンからは、このスーパーSIMカードが早く全国に広がってほしいという声があがっている。なぜなら、出張の時、身分証を忘れてしまうと、まったく身動きがとれなくなってしまうからだ。

中国では、列車、高鉄、飛行機に乗るときに身分証の提示が必要になる。さらに、ホテルに宿泊するときも身分証の提示が必要になる。もし、身分証を忘れてしまうと、列車に乗ることもできず、家に取りに戻るしかなくなる。それがスマホで済むようになると、忘れることはほぼなくなる。

 

多少でも広がるスーパーSIMカード

スーパーSIMカードは、国家の「インターネット身分認証プラットフォーム」に対応をしているため、江蘇省の複数都市で身分証として通用するようになっている。ホテル宿泊時、病院利用時、ネットカフェの利用、公安への身分提示などに利用ができ、スーパーSIMカードの身分証機能の利用者は31万人に達している。これにより、デジタル人民元もスーパーSIMカードの中に入れ、決済に使えるようになっている。

このスーパーSIMカードは、江蘇省だけでなく、他の省でも利用が始まっている。現金とカード類が不要となり、財布を持たなくていい無現金社会になるだけでなく、身分証の携帯も不要な無カード社会が始まろうとしている。

 

 

チーターよりも速く走る軟体ロボット。プラント内の設備点検などに応用が可能

オーストリアヨハネス・ケプラー大学で軟材料の研究をする毛国勇(マオ・グオヨン)の研究チームが、高速で疾走することができる軟体ロボットを開発した。体長ベースでは、チーターやF1カーよりも速く走行することができるとQbitAIが報じた。

 

体長ベースでチーターよりも速く走る軟体ロボット

この軟体ロボットは高速で走行をすることができる。前肢と後肢を動物のチーターのように使い、70体長/秒の速度で走ることができる。チーターは25体長/秒、F1カーは50体長/秒なので、体長ベースでは、チーターやF1カーよりも速く走ることができる。さらに、この動作を応用することで、泳いだり、段差を登ったり、障害物を越えることも可能だ。

この研究成果は、ウェブの学術雑誌である「Nature Communications」に「Ultrafast small-scale soft electromagnetic robots」(https://www.nature.com/articles/s41467-022-32123-4)として発表されている。

▲軟体ロボットの走行は、チーターの走り方を模倣している。

▲電流電圧を変えることで、速度の調節も可能。

 

電流を流すと電磁弾性体が変形をして走る

この電磁弾性体によるマイクロロボットは、弾性のある基盤に液体金属でコイルをプリントすることによってつくられる。このコイルに電流を流すことで、基盤そのものが歪むため、この動きをうまく利用すると、動物のような動きを模倣させることができるようになる。

▲軟体ロボットの製造方法。電磁弾性体に液体金属でコイルを描き、電流を流すことで電磁弾性体が変形することを利用している。

 

異なる弾性材を貼り合わせることで伸びと縮みを実現

しかし、このような弾性材による小型ロボットは以前からも研究が進められていたが、適切な弾性材が見つからないため、反応が遅く、曲げる力も弱く、実用性に欠いていた。

毛国勇は弾性材を二層構造にすることでこの問題を解決した。あらかじめ曲げられた状態の弾性材とフラットな弾性材を貼り合わせた。フラットな弾性材が電磁弾性により曲がると、曲げられている弾性材の力が解放され、速く、力強く、全体が曲がることになる。

これを利用することで、チーターなどの動物が前肢と後肢を使って疾走する動作を模倣できるようになった。

ヨハネス・ケプラー大学で軟材料の研究をする毛国勇氏。軟体ロボットは、プラントの設備内点検やガス管、水道管の内部点検に利用ができるという。

 

速く走るには足の素材にも工夫が

また、地面に設置する足の素材も工夫が必要だった。摩擦が大きいほど、ロボットは速く走れることになる。紙、木材、金属、プラスティックなどの平面に対し、大きな摩擦力を示す素材探しが行われた。

弾性素材が展開する時、後足は設置をし、前足が浮くことで、前足が伸びていく。前足が着地をすると、弾性素材は収縮するサイクルに入り、前足が固定されて、後足が浮き、後足を引きつける。このようにして前進をするが、前足と後足をタイミングよく、接地、浮くという動作をさせるため、足をL字型にして実現している。

▲地面と設置する足の素材も走りには重要だった。L字型の足にすることで、走りが安定をした。

 

段差を乗り越え、ジャンプもする

実用性を高めるには、障害物を乗り越えたり、段差を登る必要も生まれる。この場合は、障害物や段差の前で通常よりも体を強く圧縮させ、それを解放することで、障害物や段差をクリアする。体を強く圧縮させることで、それを解放する時に大きな力が生まれ、ジャンプに近い動作ができる。

▲障害物を避けて走ることも可能。

▲段差を乗り越えることができる。

▲2枚の電磁弾性体を貼り合わせることで、伸びと縮みの動作が可能になり、走ることができるようになった。

▲電磁弾性体を組み合わせると、ゴルフボールを運搬し、投げることも可能になる。

 

バッテリーを搭載することで移動場所も広がる

この最初のロボットは、外部電源に頼るため、導線がついた状態で走行する。このため、移動できる範囲に制限がある。そこで、研究チームはロボットにバッテリーを搭載し、自由に行動できるロボットも開発した。バッテリーの重みにより、速度は2.1体長/秒と遅くなるが、制約のない行動が可能になった。

▲バッテリーを搭載すると、走る速度は遅くなるが、導線が不要となるため、自由に移動できるようになる。

▲バッテリーを搭載し、自由に泳ぎ回ることも可能になった。

さらには泳ぐことも可能に

このバッテリー搭載ロボットは、泳ぐこともできるようになった。水面に浮かぶことができ、4.8体長/秒の速度で泳ぐことができる。

どのようなことに応用ができるのかはこれからのことだが、設備内の点検などに利用できるのではないかと考えられている。

 

 

田起こしから収穫までのすべての工程が自動化された京西稲スマート農場。作業員はスマホ片手に見ているだけ

北京市郊外の京西稲スマート農場で、自動化技術が大幅に取り入れられ、田起こしから収穫までのすべての作業が自動化をされ、収穫量は30%増加したと北京日報が報じた。

 

無人化された京西稲スマート農場

北京市海淀区上庄鎮にある京西稲スマート農場でも、刈り入れ時期には収穫機が田んぼを忙しく動き、稲を刈り取っている。しかし、人は乗っていない。田んぼの横にいる作業員がスマートフォンタブレットで操縦をする無人運転の収穫機なのだ。京西稲スマート農場では、田起こし、田植え、管理、収穫のすべてが自動化をされている。これにより、今年の収穫量は昨年から30%増加した。

▲ありふれた収穫期の田んぼの風景。しかし、作業をする人はわずか1人だ。京西稲スマート農場では、すべての作業が自動化をされている。

 

肉体労働が0になったスマート農場

2022年4月、海淀区上庄鎮政府と中関村の博創聯動科技は共同で、京西稲農場のスマート化を行なった。これにより、京西稲農場は、司令室ですべての指示を出し、現場には監視員がいるという従来とはまったく異なった農場の風景となった。人の肉体労働はすべてなくなっている。

湿度、害虫、気候、生育の4つを常にモニターし、田んぼの管理が自動化できるだけでなく、最適環境を維持することで、稲の収穫量や品質をあげることも期待できる。

無人収穫機はあらかじめ設定されたルートに従い収穫を行う。作業員は見ているだけでかまわない。

 

1人で27haの農地の管理が可能

2022年の収穫量は田んぼによって900斤から950斤(475kg)の間で、平均してスマート化以前の30%増となった。

京西稲スマート農場の技術責任者、孫祥明氏によると、405ムー(27ha)を1人で管理をすることが可能で、1ムーあたりの人件費を630元ほど減少させる。農業の最大の問題である人手不足を解消する決め手になるという。

無人運転の収穫機は、農場の管理システムによりリモート制御され、スマートフォンタブレットからも操縦が可能です。あらかじめ設定されたルートで収穫を行い、毎秒6kgの稲を収穫することができます。1時間で15ムーの田んぼの収穫作業ができ、天候が多少悪くても、夜でも作業が可能です」。

この京西稲スマート農場はモデル農場であり、ここで検証されたテクノロジーが一般の農場にも導入されていくことになる。

▲作業員は、手元のスマートフォンで、始動、停止などの操作を行う。設定通りの作業が進んでいれば、作業員は特にやることはない。

 

 

弱いつながりの強さ。アリババ、ピンドードー、バイトダンス、シャオミの創業者は弱いつながりをどう活かしたのか

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今回は、「弱いつながりの強さ」についてご紹介します。

 

「弱いつながりの強さ理論」という言葉を一度はお聞きになったことがあるかと思います。1973年に社会学者のマーク・グラノベッターが「The Strength of Weak Ties」という論文で発表した理論です。簡単に言えば、「有用な情報は強いつながりよりも弱いつながりからもたらされる」というもので、古い理論でありながら、SNS時代を迎えると、SNSでのつながりがいかに重要なのかということを論じるときにたびたび引き合いに出される考え方です。

ラノベッターは、米ボストン在住のホワイトカラー282人を対象に、就職先、転職先を見つけるのに役に立った情報をどのような人から得たのかを調査しました。すると16.7%の人は会う頻度が高い、つまり強いつながりの人から得ていました。一方、83.4%の人はあまり会うことがない、つまり弱いつながりの人から得ていました。また、この弱いつながりから得た情報に基づいて就職した人の方が、その後の満足度も大きいことがわかりました。

これはなんとなく生活実感とも符合します。強い結びつきとは頻繁に会う人のことで、具体的には家族や同僚が一般的です。そういう人に「どこかいい転職先ないかな?」と尋ねても、あがってくるのはよく知っている企業の名前ばかりになります。どうしても同じ業界内の企業の名前があがってくることになりがちです。

しかし、会う回数の少ない友人やSNS上での知人に尋ねると、「業界はまったく違うけど、こういう人材を募集している。あなたに合うかもよ」という意外な企業を紹介してくれるかもしれません。

もちろん、実際にアプローチをして面接を経ないとなんとも言えませんが、ひょっとしたら、自分では普通だと思っているスキルが、異なる業界では非常に高く評価をされ、まったく異なる業界で新鮮な気持ちで働けるということになるかもしれません。

 

つまり、いつも同じメンツで固まっていても、有用な情報はもたらされず、SNSなどの弱い結びつきから有用な情報は入ってくるのだという理論です。

しかし、この「弱い結びつきの強さ」理論は、SNS時代になって少し誤解をされているようです。それは「強い結びつきよりも、弱い結びつきが重要」だと考え、濃い付き合いをしないようにして、すべてSNSでつながろうとするような誤解です。あるいは社内で「飲み会や社員旅行はやめて、社内SNSだけでつながるようにしよう」という誤解もあります。

この理論は、結びつきを弱くした方がいいという話ではなく、従来軽視されていた弱い結びつきが実は大きな働きをすることがあるという話です。つまり、強い結びつきは強い結びつきとして重要で、同様に弱い結びつきも重要だという話です。

 

中国の起業家たちは、この弱い結びつきと強い結びつきの扱いに非常に優れています。特にアリババの創業者、馬雲(マー・ユイン、ジャック・マー)は達人の域に達しています。

中国はもともと強い結びつきをベースにした国でした。親戚や地元の仲間です。いつも一緒に行動し、成功したリーダーは自分の服や腕時計、車を子分たちに譲ります。子分たちもリーダーの髪型や服装、行動を真似をします。側から見ると、同じような格好をした集団が歩いてくるように見えます。誰かが起業をすると言えば、親戚が出資をするというのがあたりまえのことでした。その代わり、成功をすると、出資者である親戚たちの面倒を一生見続けなければなりません。三国志に登場する劉備曹操孫権がまさにそのような強い結びつきの人たちでした。

一方、ジャック・マーを筆頭とするテック企業の起業家たちは、このような強い結びつきだけではなく、弱い結びつきも使って人生を切り開いていきました。ここが従来の起業家と大きく異なる点です。

 

今回は、グラノベッターの「弱い結びつきの強さ」理論とはどういうものであるかをご紹介し、さらにジャック・マーなどの中国の起業家が、この弱い結びつきをどのように活用したのかをご紹介します。難しい話はほとんどなく、読み物のような感じになると思いますので、お気軽にお読みください。

 

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vol.166:vivo、オナー、アップル、OPPOが横並び。飽和した中国スマホ市場で起きている変化とは?

vol.167:マトリクスアカウントとは何か。店舗アカウントからの発信で、集客力を向上させる

 

 

米国市場から上場廃止になる中国企業が続出。中国概念株の上場廃止が続く理由

中国には外資の参入規制があるために、直接米国証券取引所に上場することができず、「中国概念株」として上場をする。この中国概念株の上場廃止が続いている。現在上場中であっても上場廃止の危険性が高い中国概念株が増えているとIT桔子が報じた。

 

事業会社とは異なる中国概念株

中国企業が米国のナスダックやニューヨークの証券取引所に上場することはもはや珍しくなくなっている。このような株式は「中国概念株」と呼ばれる。いわゆるVIEスキーム(Variable Interest Entity、変動持分事業体)を使った間接上場だからだ。

中国の多くの産業では、外資の参入規制がある。自動車産業の場合は50%までしか外資が参入できず、ネット関連機能の場合はまったく外資が参入できない。つまり、外国人、海外企業は中国企業の株を保有することができない。

これでは外国人が中国企業に投資ができない、中国企業は海外から資金を調達することができないという問題があるため、VIEスキームが使われる。

海外のどこか(一般的には法人税の不要なケイマン諸島、バージン諸島など)にシェルカンパニーを登記する。いわゆるペーパーカンパニーだ。そして、このシェルカンパーニーと中国内の事業会社の間で、資本関係ではなく契約に基づいて親子会社同然の状態にする。シェルカンパニーは中国事業会社の親会社同然になるため、このシェルカンパニーを海外の証券市場に上場させるというものだ。事業実態のない企業の株であるため「概念株」と呼ばれる。

▲中国概念株の香港への重複上場のトレンドが起きている。米国証券取引所に上場した中国企業のうち、業績が好調な企業は香港への重複上場、鞍替えを始めている。米国市場に残った中国企業は業績不振で香港への鞍替えができない。そのため上場廃止危機にさらされている。

 

業界初の米国上場企業に続く「上場廃止

この概念株は、1992年に華晨汽車がニューヨークに上場したことから始まっている。それ以来、さまざまな企業が海外証券市場に上場をする「中国概念株」が生まれている。

しかし、2007年に華晨汽車は上場廃止をした。さらに、2019年以降は上場廃止をする中国概念株が増加し、少なくとも37の米国上場した中国企業上場廃止をした。特に目立つのが「○○第一株」と呼ばれる業界初の米国上場企業だ。なぜ、業界初の米国上場企業は上場廃止をしていくのか。

 

AI教育初の米国上場をした「流利説」

2013年に創業したAI語学オンライン学習サービスの「流利説」(リウリーシュオ)は、留学ブームを背景にサービス開始1年で1000万人の会員を獲得した。その背景には豊富な投資資金があった。摯信資本が数百万元規模のエンジェル投資を行い、同じ年に摯信資本とIDG(Internationa Data Group)が数百万ドル規模のAラウンド投資を行っている。2015年には数千万ドル規模のBラウンド投資が行われ、2017年には数億ドル規模のCラウンド投資が行われ、順調に成長し、2018年には「AI教育初の」ニューヨーク証券取引所に上場を果たした。

 

SNSを使って会員を増やした「流利説」

流利説の成長の秘密は、テンセントのSNS微信」(ウェイシン、WeChat)を活用したことだった。SNSを使って会員が友人などを勧誘すると、その会員に割引クーポンなどの特典が与えられる。SNSを伝わって、流利説の会員が増えていった。

ところが2019年、テンセントはWeChatの規約改定を行なった。外部の広告行為にあたるリンクの貼り付けを禁止したのだ。外部リンクをタップしても、そのウェブページが表示されるのではなく、WeChatのエラーページが表示される。また、外部リンクを貼った利用者は規約違反として警告を受けたり、場合によってはアカウントが凍結されることもあった。

これで流利説の成長が止まってしまった。2021年11月、WeChatは契約をすることで外部リンクの利用を認めるようになったが、WeChatに頼り切りだった流利説の成長は止まり、さらに後に続くオンライン語学学習サービスに追い上げられてしまい、以前の輝きは失われていた。

 

複数の要因で事業継続が難しくなり強制上場廃止

2022年4月、流利説はニューヨーク証券取引所から強制的に上場廃止処分を受ける。WeChatの問題だけでなく、米国が中国人留学生のビザ発給を絞り込んだことや、そもそもコロナ禍により海外への移動そのものが難しくなり、英語を学ぶ人が激減をしてしまった。流利説はターゲットを留学生から幼児英語教育にシフトさせたが、すでにそこにはVIPKIDやDaDa、51Talkなどのプレイヤーがいて、厳しい競争を迫られた。

流利説は2018年に4.88億元の損失、2019年に5.75億元の損失、2020年に3.95億元の損失と損失が続き、2022年に株価が一定水準以下の価格で推移をしているということが上場廃止条件にあたり、強制的に上場廃止となった。

 

賃貸需要の増加とともに成長した「青客租房」

2012年に創業した「青客租房」(チンカー)は、賃貸マンションの運営企業だ。マンションのオーナーから長期契約で部屋を借り上げ、リフォームをし、家具を入れ、それを入居者に貸すというビジネスだ。都市が拡大をし、都市に出てきた地方出身者が賃貸マンションを探すのに苦労をする中でサービスは歓迎され、創業してすぐに紐信創投から数百万元規模のエンジェル投資を獲得した。

2014年には晨財智から数千万ドル規模のAラウンド投資、2015年には1.8億元のBラウンド投資を受け、順調に成長した。

 

資金の回転に歪みがあった「青客租房」

資金を得た青客租房は全国に市場を拡大していった。しかし、青客租房はそのビジネスモデルに問題を抱えていた。それは「高進低出」「長租短付」という2つの言葉で表される。

青客租房は、物件を確保するためにオーナーには高額の賃料を支払い、賃貸利用者を確保するために賃貸料は安く抑えた。これにより収益性が低くなってしまった。また、賃貸利用者からは3ヶ月分以上の賃貸料を受け取り、オーナーには毎月1ヶ月分を支払った。これにより、回転資金に余裕が生まれ、収益性が下がっていることに目をつぶって、高進低出が加速をし、さらに収益性が悪化をしているにもかかわらず、表面上は順調に経営できているように周囲も青客租房も錯覚をした。

その結果、2017年から2020年までの損失は、2.45億元、4.99億元、4.98億元、15.34億元と累計で28億元にものぼっていた。

 

上場した途端に経営陣がイグジット

ところが、この問題は外からは分かりづらいため、2018年には数千万ドルのCラウンド投資を受け、2019年には賃貸仲介業界としては初のナスダック上場を果たした。

しかし、1年後、経営陣の離職が相次いだ。理由は明らかにされていないが、株という資産を得て、問題を内在する青客租房から避難をするイグジットではないかと見られる。

2021年に、この内在する問題が隠せなくなり、青客租房は資金が回らなくなり、2022年には破産を宣告する。ナスダックからも自動的に上場廃止ということになった。

 

創業当時は斬新だった都市ポータル「58同城」

「58同城」(ウーバートンチャン)は、市内のさまざまなサービスを提供する都市ポータルサービスだ。市内の求人情報、賃貸住宅情報、引越し業者、中古車情報などを調べることができる。しかし、現在では58同城を利用する人は多くない。それぞれもっと使いやすい専門のネットサービスが登場しているからだ。

しかし、2005年に58同城がスタートした時、市内の生活情報がすべて利用できるというポータルサイトは他になかった。インターネットがようやく市民の間でも広く使われるようになった時代であることもあり、多くの人に58同城は使われるようになった。

▲現在の「58同城」。都市ポータルという斬新なサービスだったが、モバイル対応が遅れ、ライバルに侵食をされてしまった。

 

モバイル対応に遅れた「58同城」

2006年には賽富基金から500万ドルのAラウンド投資、2008年には4000万ドルのBラウンド投資を受け、2010年にはDCM中国と賽富基金からCラウンド投資と順調に成長をした。

2013年、58同城は、都市ポータルサービスとしては初めて米ニューヨーク市場に上場をし、同じサービスを提供するライバルの「赴集網」を買収し、地位を確立した。

しかし、スマートフォンが普及をし、モバイル時代になると、58 同城が提供するサービスそれぞれを専門とするサービスが登場し、その多くがアプリで簡単にスマホから利用できるようになっていったが、58同城はウェブベースそのままだった。これにより、58同城を利用する人は急速に少なくなっていった。

2020年6月、58同城は、米投資団からの買収を受け入れ、上場廃止をし、非上場化をした。買収額は87億ドルで、58同城の企業価値の最高力見ると1/3にすぎなかった。

▲ラグジュアリーブランド専門のEC「寺庫」も株価が90%近く下落をし、上場廃止の危険水域に入っている。

 

大量に存在する上場廃止予備軍の中国概念株たち

上場廃止になる中国概念株は、まだまだ出てくると思われる。なぜなら市場価値が3000万ドルを下回っている株が40以上もあるからだ。

2008年に創業した寺庫(スークー、Secoo)は、ラグジュアリーブランド専門のECとして、2017年に米ナスダック市場に上場をした。しかし、今の株価は1.6ドル程度で低迷が続いている。発行価格は13ドルであったので、90%近く下落したことになる。

2021年末には、30日連続で1ドルを下回り、上場廃止の警告を受けた。新たな投資を受け、上場廃止は免れたが株が上昇する気配は見られない。

また、生鮮品をネット注文で30分宅配するクイックコマース「毎日優鮮」(メイリー、Missfresh)も2021年に米ナスダックに上場したが、上場廃止の危機にさらされている。

中国政府がVIEスキームによる中国概念株の存在を問題視するようになり、大手テック企業は、米国市場に上場をしておきながら、香港や国内の証券取引所に重複上場をするようになっている。好調な企業は中国の証券取引所に移り、不調な企業は香港上場をすることができず、米国市場から上場廃止にならざるを得なくなっている。中国概念株は時間とともに消えていくことになる。

▲クイックコマース「毎日優鮮」も、事業そのものが事実上の停止中で、上場廃止危機に見舞われている。

 

 

内巻になって効率を悪化させている10の業界。上位には観光業や航空業が。堂々の第1位はやはりあの業界

雑誌「財経」が業界ごとの内巻度を数値化するという面白い試みを行なっている。内巻とは成長が止まった企業で、社員の視野が内側に向かい、内部統制や業務の複雑化をしてしまうこと。1位になったのはやはり不動産業界だったと財経十一人が報じた。

 

成長の止まった企業に起きる病「内巻」

中国経済で話題になっている言葉「内巻」(ネイジュアン)。ひとつの組織の中での活動の成果が、外に向かって出ていき売上や成長に結びつくのではなく、内に向かってしまい内部統制や業務プロセスを無駄に複雑化させることとなり、生産効率を落としてしまう現象のことだ。簡単に言えば、経済成長が止まっても人間の活動は止まらないため、過剰な改善を行なってしまい、かえって組織の生産性を下げてしまうということを指す。日本で昔言われた大企業病に近い。

側から見ると、複雑で精緻な業務プロセスを採用しているように見えるが、その実は、既存の古い業務モデルを複数個、整合しない形で適用しているため、生産性は大きく下がっている。しかし、内部の人の視野も内側にしか向かないため、さらに細部の改善に集中をしてしまう。本人の意識としては組織の改善に努力をしているつもりでも、まったく新しい合理的な業務モデルを構築しようという創造性は生まれてこない。

この内巻を解消するには、新分野に進出をするしかない。まったく新しい分野に進出をすることで、新しい組織モデル、新しい業務モデルが必要となり、そこで内巻の進んだ錆びついた業務モデルを捨て、新しい業務モデルを手に入れることができるからだ。

▲中国で内巻という言葉が流行するきっかけになった写真。SNSに投稿されたもので、清華大学の学生が帰宅時に自転車に乗りながらパソコンを開いて作業をしている。一見、効率性を高めているように見えるが、実は転倒するリスクが高く、それを気にするために作業効率も落ちる。学生寮に戻ってから作業をした方が全体効率は高くなる。それに気づかなくなるということが内巻なのだ。

 

業界別の内巻度を数値化

雑誌「財経」では、業界ごとにこの内巻度を数量化しようとしたが、簡単ではなかった。結局、内巻がまだ進行していない企業というのは成長をしているのだから、「損失を出している企業/上場企業」という単純な指標で、業界の内巻度を測れるのではないかという結論に至った。特に経常損益ではなく、営業損益を用いることで業界の内巻度をうまく数量化できる。

「財経」では、あらゆる業界について、この内巻度を計算し、その上位10業界のランキングを作成した。内巻度は0%から100%までの値をとるが、100%がすべての上場企業が損失を出しているということになり、最も内巻が進んでいる業界ということになる。

 

第10位:造園業45.8%

造園業の2021年上半期の内巻度は25.0%だったが、2022年上半期には45.8%となり、内巻が進んでいる。その原因として大きいのが、造園業が公共や不動産業界に依存をしているということだ。コロナ禍により土地の収益性が大きく下がり、地方財政が打撃を受け、造園事業が大幅縮小している。不動産も同じく停滞したため、大型開発に伴う造園事業が縮小している。さらに、コロナ禍で造園計画の縮小、延期も起きている。

その原因が地方政府の財政悪化と不動産業の資金枯渇にあるため、今後の見通しも楽観はできない。

 

第9位:農産品加工業47.8%

農産品加工業は営業収入は伸びているが、営業利益が大幅に縮小をしている。その理由は原材料となる食材価格の高騰と、消費者ニーズが減退していることだ。2022年から食材価格が高騰をするようになり、これにより加工品の価格も上昇をしている。食品の値上げが続くことにより、消費者は買い控えをするようになっている。

特に大企業では利益の縮小が著しく、固定客をつかんでいる中小企業は利益をある程度維持することに成功している。

2022年後半から、食材価格の上昇は落ち着きを見せているため、今後は状況が好転する可能性もある。

 

第8位:自動車産業50.0%

自動車産業は原材料費が高騰をしている一方、生産が過剰となっていて価格競争が熾烈になっていることにより、2021年の上半期の内巻度45.0%から、50.0%に上昇をした。特に大型のバスの需要が大きく減少している。しかし、キャンピングカーや観光バスなどの需要は回復をしているため、明るい兆しは現れ始めている。

 

第7位:映像産業55.0%

映画、ドラマなどの映像制作側、それを配信する映画館、配信プラットフォーム側ともに厳しい状況になっている。制作側では、映画、ドラマの制作数そのものが縮小している。2022年上半期では、制作数は前年比で23.6%減少し、ネットドラマは30.48%減少した。国産映画も40%減少した。コロナ禍により映画館が営業を休止したり、人数制限を行うなどの他、感染を不安視する消費者が映画館を避けるという行動をとったことが原因だ。

しかし、新型コロナの不安は急速に解消されており、映画館にも人が戻り始めている。今後は、大きく改善されることが期待される。

 

第6位:ホテル・飲食業58.8%

ホテルや飲食業もコロナ禍による大きな打撃を受けた。しかし、新型コロナの不安が解消された現在、改善が見込める明るい兆しがある。

中国ホテル協会の統計によると、全国のホテル数は2021年末で25.2万軒となり、前年から9.59%の減少となった。コロナ前の2019年末と比較をすると25.3%もの減少となる。コロナ禍により多くのホテルが廃業せざるを得なかったが、ホテル数が絞られた状態で需要が戻ってきているため、今後は急速に内巻度が解消されていくことになると見られている。

 

第5位:養鶏養豚業72.0%

養鶏養豚業は2021年上半期の内巻度が36.0%であったものが、2022年上半期には72.0%と急速に悪化をしている。

最大の原因は飼料価格の高騰だ。多くの業者が小規模であり、このような逃れようのないコスト高を吸収する手段が打てない。業者数が多いため、競争も激しく、価格転嫁もすぐにはできない。このため、利益を圧縮するより手立てがなく、飼料価格の影響をすぐに受けてしまう業界構造になっている。

養鶏養豚でも、大規模化が進められているが、まだじゅうぶんではなく、業界の大規模な再編をしていかない限り、養鶏養豚業は定期的に内巻に悩まされることになる。

 

第4位:陶磁器産業75.0%

陶磁器産業は、不動産業に強く依存をしている。瓦、壁材などから、トイレ、バスルーム、キッチン、洗面化粧台などを製造販売しているからだ。その不動産業が停滞をし、新規の建設が縮小しているため、陶磁器産業も大きな影響を受けている。

また、現在の不動産業が抱えている問題は資金の流動性で、いわゆる手持ちのお金がなくなって支払いが滞っていることだ。当然、陶磁器産業も支払いが先延べされるなど影響を受けている。さらに、エネルギー費、原材料価格の高騰と、多方面から打撃を受ける状況になっている。

また、陶磁器産業も中小企業が多く、このような問題に対して、企業内部で吸収する余地がきわめて小さい。しかし、地域に密着した産業であるために、業界再編も簡単ではなく、この苦境は長引く可能性がある。

 

第3位:航空業78.6%

2021年はかなり回復をした国内航空も、2022年に深圳や上海での感染拡大があったために再び大きく落ち込んだ。さらに、エネルギー価格の高騰が起こり、2020年のコロナ禍よりも大きな打撃を受けることになった。

しかし、現在では新型コロナの不安も解消され、移動制限もほぼ完全に解除されていることから、力強い回復が見込める。

 

第2位:観光業100%

観光業は上場企業のすべてが損失を出すという事態になった。業界の上場企業すべてが赤字というのは、歴史的に見てもきわめて稀な事例だ。観光地の多くが、休業をするか、開業しても観光客が訪れない状況が長く続いた。しかし、これも新型コロナの不安が解消されたため、一気に回復をすると見られている。2023年の春節には多くの観光地に人が戻ってきて、コロナ前の大混雑の光景が見られるようになっている。

 

第1位:不動産業33.3%

なぜ、内巻度33.3%の不動産業界を1位にしたのか。不動産業の問題は上場企業の損失よりも、資金流動性が著しく落ちていることの方がはるかに大きな問題だからだ。

どの不動産企業も、支払いをするための現金がなくなっている。土地や住宅を所有しているので、それを売却すれば手当てはできるとはいうものの、土地や住宅を買ってくれる相手が見つからない。

また、不動産業には特殊な事情がある。デベロッパーはマンションやオフィスビルを建設し、これを販売会社に販売委託をする。販売会社は個人や企業に売却をし、ここでお金が入ってきて、不動産企業の収入となる。そのため、不動産業の営業収入というのは2年前、3年前のものが今入ってくることになる。つまり、不動産業の内巻度が33.3%といっても、これは2020年、2021年の状況を反映したものであり、現在はそこから大きく悪化していることが推測できるのだ。

実際、さまざまな統計がさらなる悪化を示している。2022年上半期の全国の住宅販売面積は5.8億平米となり、前年から26.6%減少した。販売額は5.8兆元で31.8%減少した。施工面積は6.6億平米で34.4%減少をした。

この状況が業績に反映されるのは、2025年、2026年で、不動産業はこれから大幅縮小せざるを得なくなっている。

 

 

砂浜にメッセージを書くお仕事。SNSで紹介されたことから依頼が殺到

中国のリゾート地「三亜」に住んでいる小魚さんには、砂浜にメッセージを書く仕事が殺到している。友人のために書いたメッセージがSNSで紹介され、思わぬアルバイトとなったと硬殻INKが報じた。

 

砂浜にメッセージを書いて月収19万円

旅行などで砂浜に行くと、なんとなく指や小枝で文字を書いてしまう。いずれ波に洗われて消えてしまうメッセージを書いたことが誰にでもあるはずだ。このロマンチックな行為を仕事にして、月に1万元(約19万円)を稼いでいる青年がいる。

小魚さん(仮名)は、去年から、中国のリゾート地として有名な三亜(サンヤー)の海辺に家を借りて住んでいる。砂浜までは約500mという絶好のロケーションだ。

「初めて砂浜を散歩した時に、海に落ちる夕陽がとてもきれいだったのです。その時、友人が結婚することを思い出して、二人の名前を砂浜に書いて、写真と動画を撮り送ってあげました。それをとても喜んでくれたのです」。

▲砂浜にメッセージを書いて写真や動画を送ったところ、友人に喜ばれた。これが話題となり、お金を払うからという依頼が相次いでいる。

 

口コミで仕事の依頼が大量に舞い込む

これが友人の間で評判となって、私も書いてほしいという友人が現れた。そのうちの何人かが写真をSNSにアップをすると、知らない人からも代金を支払うので書いてほしいという依頼が舞い込むようになった。

「最初は5元をいただくようにしました。それでも忙しい日には100件ほどの注文があります。その日は1日中砂浜に文字を書くことになりました。8月頃からお客さんが急に増え、代金は5元から80元までさまざまです。お客さんさえ安定して確保できれば、アルバイトをするよりも収入は多く、月1万元ほどになります」。

SNS「小紅書」に「砂浜ロマンの代筆」「一瞬のロマン」として紹介されたことから依頼が殺到するようになった。

 

砂浜に憧れる中国人

中国には22の省、5つの自治区があるが、海のある省は9つしかない。大都市の場合は港湾として整備をされているため、中国人にとって砂浜は貴重な存在だ。しかも、長い間コロナ禍による移動制限が続いたため、何年も砂浜のある海を見ていない人がたくさんいる。そのような人たちが、小魚さんに依頼をしてきている。

当初は、小学生、中学生からの依頼が多かった。内容はアイドルの応援や受験祈願などだ。しかし、SNS「小紅書」(シャオホンシュー)で評判になってからは、90%が22歳から40歳ぐらいまでの女性となった。結婚記念日や誕生日のメッセージ、さらには子宝や健康を願うメッセージが多くなった。

 

意外にきつい砂浜にメッセージを書くお仕事

しかし、ビジネスとしては苦労も多い。ひとつは、顧客が増えると、ライバルも大量が登場してきたことだ。ただ砂浜にメッセージを書くというだけでなく、美術学校生がイラストをつけたり、書道の愛好家が美しい文字で書いたり、プロのカメラマンが質の高い写真を撮ったりするようになった。品質がどんどん向上をしているため、小魚さんも工夫をしなければならなくなった。

しかも、作業も楽ではない。夏の間の砂浜は太陽光が厳しく、その炎天下で毎日8時間も作業をしなければならない。しかも、しゃがんでの作業となるため、1日の仕事が終わる頃には階段も登れなくなってしまう。

▲撮影する時間や小道具など、さまざまな工夫をするライバルも登場した。

 

依頼者との交流も生まれている

一方で、うれしい交流も生まれている。「先月、ある方から公務員試験の合格祈願のメッセージを頼まれました。その写真を送るとすごく喜んでくれて、彼は内向的な性格で、公務員になるという夢を話したのは私が初めてだったそうなのです。来年、もし合格をしたら、三亜に旅行し、直接会ってお礼を言いたいと言ってくれました」。

また、誕生日のメッセージも喜んでくれる人が多い。コロナ禍により、誕生日に友人が集まって祝い事をするという習慣がなくなってしまったからだ。さらに、高校生、大学生はオンライン授業ばかりになり、友人をつくることができず、孤独な状況に置かれている人たちがたくさんいる。

そのような人たちと交流することで、軽い気持ちで始めた副業だったが、意味はあると小魚さんは感じている。