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配膳ロボットは飲食店の標準設備に。大手飲食チェーンでの大量導入が進む

大手飲食チェーンで、配膳ロボットの大量導入が進んでいる。配膳コストが1/10から1/25になるという理由からだ。火鍋チェーンの「海底撈」「巴奴」、中華料理チェーンの「外婆家」ではすでに標準設備化をしていると中国機器人網が報じた。

 

飲食店の標準設備になりつつある配膳ロボット

少し大きめの飲食店であれば珍しくなくなった配膳ロボット。料理を乗せ、テーブル番号を指示するだけで運んでくれるというものだ。人を感知すると一旦停止をするのは当たり前で、最近のモデルではSLAM機能を搭載するようになっている。SLAMとは「Simultaneous Localization and Mapping」(自己位置推定と環境地図作成)のことで、センシングしながら動くことで、店内の地図を作成するというものだ。もはや特殊な技術ではなく、家庭用お掃除ロボットでも上位機種であれば搭載されている。

▲典型的な配膳ロボット。商品を乗せてテーブル番号を指定すれば、配膳をしてくれる。最新型ではSLAM機能が備わっており、自分で店内地図を作成するため、レイアウトの変更などにも簡単に対応できる。

 

スタッフ5人分の働きをする配膳ロボット

一般的な配膳ロボットは、3層から4層のトレーが備えられていて、スタッフは料理を乗せ、操作パネルまたはスマートフォンからのリモートで、テーブル番号を指定するだけ。あとは人を避けながら指定されたテーブルに行き、来店客が料理を取ったことを重量で感知をすると、自動で配膳ステーションに戻ってくる。1回に運べる料理数は6品から16品程度で、だいたい4人の来店客に対応できるイメージだ。2000平米の飲食店で、厨房からテーブルまで40秒ほどで運ぶことができ、スタッフ5人分の働きをする。これにより、数ヶ月で投資を回収できるという。また、最近ではリース方式の配膳ロボットも多くなり、これであればさらにコストを抑えることが可能だ。

▲厨房から出てきた料理を配膳ロボットに乗せ、テーブル番号を指定するだけで配膳作業が終わる。客が料理をとると、重量センサーが感知をし、配膳ロボットは厨房に戻っていく。

 

配膳業務のコストは1/10から1/25に

一般的なリースでは月額1000元から2000元程度。一方、人間のスタッフの人件費は4000元から5000元程度。1台の配膳ロボットは5人分の働きをするから、2万元から2.5万元の人件費コスト分の働きができる。つまり、配膳コストは1/10から1/25程度に下がることになる。

上位機種では自走をし、SLAM技術により店内マップを作成し移動をするが、より簡便なものでは、床に磁気レールを敷いてしまうという方法もある。これであれば、SLAMなどの高度な機能が不要となり、レールの上を移動するカートと同じになるため、より初期コストを下げることができる。

▲人件費と配膳ロボットのコストの関係。人件費は常にかかり続け、同時に少しずつ上昇をしていく。しかし、配膳ロボットは初期投資は大きいが、8ヶ月ほどで人件費を下回るようになる。また、最近はリースによる導入が進み、さらにコストは下がる。

 

大手飲食チェーンで進む配膳ロボットの標準設備化

四川火鍋で有名な「海底撈」(ハイディーラオ)は中国だけでなく、シンガポール、香港、台湾、日本など海外を含め935店舗を展開しているが、すでに958台の配膳ロボットを導入済みだ。重慶火鍋の「巴奴」(バーヌー)は30店舗を展開しているが、100台ほどの配膳ロボットを導入している。中華レストラン「外婆家」(ワイポージャー)は50店舗ほどを展開しているが200台の配膳ロボットを導入している。

いずれも当初は、人件費の節約、スタッフの負担軽減などが目的だったが、コロナ禍以降、非接触という観点からも導入が拡大をしている。UBSによる海底撈の調査では、スタッフの労力の37%が減少し、1月に17.2万元(約340万円)のコスト減になっているという。

▲火鍋の有名チェーン「海底撈」では、配膳ロボットがほぼ標準設備になった。

 

今なら写真がSNSにあがる客寄せ効果も

配膳ロボットのメリットは、人件費の節約が主眼だが、現在はまだすべての飲食店の標準装備になっているわけではないため、客を惹きつける効果もあるという。配膳ロボットがやってくると多くの来店客がスマホで写真を撮る。そのままスマホに保存しておくだけの人は少なく、SNSやショートムービープラットフォームにあげる。これが大きな宣伝効果になっているという。

配膳ロボットは、飲食店だけでなく、ホテル、カラオケ店などでも導入が始まっていて、さらには病院の病室などでも導入が生まれている。ある程度以上の広さ、ある程度以上の規模の飲食チェーンでは、ほぼ標準装備になっていくと見られている。