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コロナ禍、物価高騰、消費不況が連続して襲う飲食業。火鍋チェーン「海底撈」はどうやってV字回復に成功できたのか

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今回は、コロナ禍からV字回復をした海底撈についてご紹介します。

 

飲食業が厳しい状況になっています。中国在住の誰に聞いても「中級店から高級店まで、飲食店に人がいない」という話が出てきます。客が入っているのは、中華ファストフードばかりだというのです。また、ある人は「高級店の中で、しっかりと味でお客をつかんでいる店はなんとかなっている」と言いますが、別の人は「いや、そういう店ですら厳しくなっている」と言います。

この4年、飲食店は散々な目にあってきました。2020年のコロナ禍では休業を余儀なくされ、2021年に回復傾向が見られたと思うと原材料費の高騰、そして2022年は感染再拡大、2023年に回復してくれるかと思えば、今度は消費マインドの萎縮による客離れが起きています。どれかひとつであれば乗り切れるかもしれませんが、毎年連続してやってこられるとさすがに持ちません。実際に飲食店の倒産数も増えています。

 

今ネットを飛び交っている言葉は「消費のダウングレード」です。2010年代後半には「消費のアップグレード」という言葉がよく使われました。多少高くても、品質のいいものを買うという意味です。つまり、消費のダウングレードとは、多少品質を落としても安いものを選ぶということになります。

また、「庶民が買えるものは値上がりをし、買えないものは値下がりをする」とも言われています。日本と同じように原材料費が全面的に上昇をし、多くの商品が値上がり傾向にあります。一方、テスラが値下げをし、住宅価格が下がるなど、高額のものは下がる傾向にあります。一言で言えば、高額商品が売れていないわけです。

このあたりの消費マインドの萎縮については、社会消費品小売総額などの統計を使って、後ほどご紹介します。

 

コロナ禍で打撃を受けたのは飲食と旅行です。しかし、旅行については、中国の場合は海外旅行はまだ低調ですが、国内旅行はじゅうぶんに回復をしました。旅行業にはようやく明るい兆しが見えてきます。

しかし、飲食は何ひとつ明るい兆しがありません。しかも、10年に一度か20年に一度の悪い外部要因が毎年のように襲ってきています。コロナ禍と原材料費高騰、感染再拡大に耐えてきた飲食店も、さすがに今回の不景気で心が折れてしまうかもしれません。

しかし、この苦難を生き延びてV字回復をした飲食チェーンがあります。火鍋でトップブランドの「海底撈」(ハイディーラオ、https://www.haidilao.com/)です。東京や大阪にも支店があるので、利用されたことがある方もいらっしゃると思います。

海底撈も2020年には休業をせざるを得ず、2021年に回復をしたら原材料品が高騰をし値上げをしたことが嫌われ、41.61億元(約870億円)という莫大な損失を出します。しかし、2022年には13.7億元(約280億円)の黒字となり、2023年はまだ半期ですが22.6億元の黒字を計上しています。みごとなV字回復です。

では、海底撈は連続する苦難にどのように対応をして、V字回復を成し遂げたのでしょうか。これが今回のテーマです。

 

海底撈がV字回復を可能した手法を理解していただくには、海底撈の企業文化を知っていただく必要があります。

海底撈の創業は1994年で、四川省簡陽市で開店したテーブルがわずか4卓しかない火鍋屋さんが発祥です。創業者の張勇(ジャン・ヨン)は、トラクターの製造工場で働いていて、飲食店を経営した経験はありませんでした。それでも自分の店が持ちたいと考えた張勇は、素材をそろえるだけで調理をしなくていい火鍋に目をつけたのです。

しかし、四川省は四川火鍋の激戦区です。火鍋の味で勝負することが難しい張勇は徹底的にお客さんに親切にすることにしました。お酒を飲みすぎて食が進まなくお客さんがいると、そっとお粥を無料で出します。タレがおいしいと言ってくれたお客さんには、ボトルにつめたタレをお土産に持たせて、家でも火鍋を楽しんでくださいと言います。小皿のサイドメニューやソフトドリンクは無料にして食べ放題、飲み放題にします。

そういう徹底してサービスをすることで、4卓しかない小さな店には行列ができるようになり、その様子を見た商売人が「お金を貸すから支店を出さないか」と持ちかけます。

こうして投資家がつき始め、海底撈は本格的にチェーン展開を始めます。この頃には、張勇はひとつの確信を得ていました。「お客は満腹になりたくてくるのではない。満足したくてくるのだ」。

海底撈は、接客が評判の人気チェーンとなりました。席に案内されると、スタッフが紙エプロンをつけてくれます。鍋の管理もしてくれます。タレは8種類が用意されていて、選ぶだけでなく、自分で割合を考えてミックスすることができます。迷っているとスタッフが「おすすめのタレ」をつくってくれます。ソフトドリンクやフルーツ、小皿料理は無料で食べ放題です。

さらに、店内には無料のネイルサロンと靴磨きコーナーがあります。最近、洗髪コーナーを設置した店舗もあるそうです。こういう、どうして火鍋屋になければならないのかという施設があるのが海底撈で、中国では「変態級接客」とまで呼ばれています。

麺打ちのパフォーマンス、変面のパフォーマンスも随時行われます。また、お土産もたくさん持たせてくれます。話題になっているのはオリジナル玩具です。最初は子どもづれの客にプレゼントしていましたが、大人でも玩具をもらうことができます。これが毎回ネットで話題になるのです。今、話題になっているのは、腕の形をした玩具で、ボタンを押すと手首が回転をして、止まるとグーチョキパーのいずれかの形になります。ジャンケンマシンです。SNS「小紅書」を見ると、いい年をした大人が火鍋を食べながら玩具で遊ぶだけでなく、200種類以上もある玩具をコンプリートをしているマニアもいます。

 

この変態級接客で海底撈が評判になると、当然模倣をするチェーンが出てきます。しかし、どこもうまくいかないのです。海底撈は次々と新手の接客手法を考え出してきますが、模倣する側はそれができません。表面的に真似をするだけで後が続きません。

なぜ、海底撈は他チェーンの追従を許さないのか。そこにも秘密があります。そして、この激動の時代にV字回復ができたのにも秘密があります。

今回は、海底撈がこの厳しい時代にどのように対応をしてV字回復を成し遂げたかをご紹介します。

 

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