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ウーラマに騙されるな。安易に始めてはいけないフードデリバリーの仕事

北京市でウーラマのデリバリー機種をしていたあるネット民が、匿名で、ウーラマに騙されるなと訴えている。確かにデリバリーの仕事は報酬は悪くはないが、さまざまな理由で天引きをされて手元にお金はわずかしか残らない。ウーラマから委託された企業ではこのようなことが常態化していると民間故事茶が報じた。

 

若い世代の人気の職業となったデリバリー騎手

デリバリーの配送員である「騎手」(ライダー)は、若い世代から人気の職業のひとつとなっている。決して高給の仕事ではなく、体力的にもつらい仕事だが、自分の好きな時間に働けるということが魅力になっている。また、フードデリバリーが地方都市でも普及をするようになり、近隣の農村の若者からすると、就職活動をすることなくすぐに始められる仕事でもある。地方都市では報酬も他の職業と比べれば決して低いわけではない。

2022年の全国人民代表大会では、小康集団の張興海会長が「若者をフードデリバリーではなく、工場に向かわせなければならない」と発言して話題になった。決められた時間で働き、仕事中に一服することも許されない工場で働くよりは、フードデリバリーの騎手の方が気楽で、工場よりも稼げる。そう考える若者が増えている。

▲デリバリー騎手の仕事は、自由な時間に働くことができ、体力があれば稼げる仕事だとして若者に人気になっている。しかし、それはウーラマに直接雇用された場合の話であって、委託企業に所属をする多くの騎手は天引きに苦しめられている。

 

待遇がまったく異なる委託企業

しかし、デリバリー騎手もそう気楽なものではないと、先月、ウーラマを離職したネット民が、これからデリバリー騎手をしようとしている若者に向けて、「騙されるな」と忠告をした。この人は、北京市朝陽区のステーションに所属をして働いていた。待遇は正社員だ。しかし、だまされてはいけないという。

フードデリバリー「ウーラマ」は、元は独立したスタートアップ企業だったが、アリババに買収をされた。そのため、ウーラマで働く人は、アリババ関連会社で働いていることになり、聞こえはいい。しかし、実際にウーラマの社員になれる人はそう多くない。

このネット民が所属をしていたのは、デリバリー業務をウーラマから委託をされている企業であり、ウーラマの制服を着て、ウーラマの配達をするが、ウーラマの下請け企業にすぎない。待遇もウーラマとはかなり違う。ウーラマは、社員の平均給与などの統計を公表して、北京などの大都市でも家族を養えるレベルの収入が得られるとか、体力のある若者が長時間働き、高収入を得て、起業する資金を貯めたなどと宣伝しているが、それはウーラマに直接所属をする騎手の話であって、大半の騎手は委託企業に所属をするため、生活はかなり厳しくなるという。

 

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仕事に必要なグッズは自腹購入

このような委託企業に入社した場合、登録料のようなものを取ることはウーラマにより禁じられている。しかし、必要な道具を自腹で購入しなければならない。ヘルメットが80元、制服のTシャツが2着で80元、デリバリーボックスが260元で、合計420元(約8100円)が必要になる。

ウーラマの公式グッズは、タオバオなどで購入すればもっと安く手に入る。しかし、それは許されず、万が一発覚をすると500元の罰金を取られる。この420元は、支払うのではなく、仕事を始めた後の報酬から天引きをされていく。ウーラマはこのような制度を行ってなく、委託企業が自分たちの利益にするために勝手にやっているのだと思われる。

▲ウーラマの専用バッグは自腹で購入しなければならない。バイクも契約会社からレンタルをすることが強制される。

 

配達スクーターも自腹レンタル

そしてひどいのが、配達に使う電動スクーターだ。委託企業は、ある電動スクーター企業と提携をしていて、そこからレンタルをすることが必須になっている。バッテリー交換式の電動スクーターであるため、スクーターのレンタル費用が月600元、バッテリーの利用料が月299元もかかる。さらに、この人がレンタルした電動スクーターは故障が多く、その修理費用も自腹となるため、月に1000元以上の出費となる。

 

社員寮は1部屋に8人住まい

地方から出てきてこの仕事に就いた場合は、ウーラマが社員寮を提供してくれる。しかし、当然ながら無料ではない。普通の民家を借り上げたもので、二段ベッドが4つ置かれ、1部屋に8人で住むというものだ。これで月500元の家賃がかかる。

環境は最悪だ。トイレに鍵はなく、40人以上も住んでいるのに、トイレは1つしかない。コロナ禍の間は、寮などで密集して住むことが禁止をされた。それで環境が少しはよくなるのかと期待をしたが、寮の管理者は「1部屋8人で住んでいることは絶対に口外してはならない」と緘口令をしいただけだった。さらに、電気代が月40元、水道代が50元取られる。

また、食事代として、3食分が1日45元、仕事中の水として支給される水が3本で10元とられる。多くの騎手が夜遅くまで働いているので、朝と昼しか食べず、夜は自分でコンビニなどで買って食べてしまうが、それは関係なく、食事代が天引きをされる。

▲筆者が住んでいた社員寮。二段ベットが4つ入れられ、1部屋に8人で住む。自分のスペースはベッドの上だけだ。これで家賃、光熱費、食費はしっかりと取られる。

 

保険料は支払っても、事故処理はしてくれない事故保険

その上に、ウーラマからは保険加入料として月120元が天引きされる。その他にもいろいろ天引きされるものがあり、大体300元は引かれる。

この保険料も多くの騎手が疑っている。同僚が車との接触事故を起こした時、ステーション長は適当な理由をつけて、その騎手を解雇してしまった。もはや社員ではなくなったので、保険に関しても無効だとして、取り合ってもらえなかった。

 

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稼ぎは月5000元、天引きは月4000元

一体、いくら天引きをされるのか。初期に必要なグッズ類が420元、電動スクーターが月1100元、寮が月590元、保険料などの天引きが月300元、さらに食事代など最低限の生活費が1500元はかかるので、月4000元は必要になる。

ウーラマで月4000元以上稼ぐことはできるのか。1日に配達できる件数は、20件から25件程度だ。25件、30日として計算をすると、1件あたりの報酬は7元前後なので5250元となる。必要経費を取られると、1200元程度しか手元に残らない。最低限の生活は保証されているので、これでもいいと考える人もいるかもしれない。しかし、委託企業はこの辺りの計算をした上で、理由をつけては天引きをして自分たちの利益を確保している。

ネットの就職サイトでは、月1万元以上は稼げるという話をよく見かけるが、それはよほど頑張っている騎手か、騎手が不足をしたためインセンティブとして一時的に報奨金をつけた月での話だ。また、グッズや電動スクーター無償支給、保険完備などと書いてあるが、それはウーラマに直接雇用された場合の話であって、多くの場合は委託企業採用になる。委託企業は、ウーラマと騎手の間に入って、天引きをしていくのが仕事だ。

デリバリー騎手は若い間の一時的な仕事としては決して悪くはない。しかし、こういう仕組みになっていることを知ってもらい、騙されないようにしてもらいたいと筆者は結んでいる。