中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

無人カート配送が新日常となった北京市。その利便性が理解され、コロナ禍以降に需要増

北京市で、無人カートによる生鮮食料品の配達が日常のものとなっている。新型コロナの感染拡大が日常を変えた「新日常」のひとつになっていると北京交通ラジオが報じた。

 

無人カートでの配達が新日常となった北京

北京市ではスーパーや社区団購による配達に無人カートが使われるのが日常の風景になった。北京市順義区の物美多点(Dmall)馬坡店では、毫末智行(ハオモー、https://www.haomo.ai/logistics)が開発した無人カート「小魔駝」(シャオモートゥオ)を利用して、近隣への配達を行っている。小魔駝はL4自動運転の機能を備え、12万8888元(約245万円)で一般販売も行われている。

馬坡店では、コロナ禍に対抗する厳しい封じ込め政策が終わると、それまで1日300件程度の配送注文が一気に700件に増えた。封じ込め政策が解除されて、行動が自由になりかえって感染が拡大するのではないかという不安と、配達してもらえるという利便性から利用者が急増をした。

毫末智行の趙作霖氏は、北京交通ラジオの取材に応えた。「配達している商品は、日常の野菜、肉、卵、水、インスタントラーメン、レトルト食品などです。スーパーの店舗から、配達先のマンションの入口や建物の入口まで、無人カートが担当をします。そこで仕分けをして、配達スタッフが無人カートから各家庭のドアまで配達をします」。

▲物美多点の宅配に無人カートが活用されている。配達先のマンションなどにスタッフが待っていて、商品を取り出し、戸別配達をする。人と無人カートの組み合わせだが、それでも人だけの宅配よりも1.5倍から2倍の効率になる。

 

最後は人手でも効率は1.5倍以上

無人カートで配送をしても、最後の配達は人のスタッフが行うのでは効率が悪いのではないか。趙作霖氏は効率は大幅に上がっているという。「小魔駝の容量は600リットルで、10人分から20人分の注文を一度に運ぶことができます。配達スタッフは電動自転車や電動バイクを使った配達では1回に3人分から5人分しか運ぶことができません。無人カートは1日に40人分から60人分を配達することができ、人では10人分から20人分です。配達効率は1.5倍から2倍程度になっています」。

配達スタッフは荷物を運ぶことなく、無人カートが到着をした場所に行き、最終的な配達を行う。それが終わると、次に無人カートが到着している場所に移動をする。

このように人と無人カートが協調をすることで、人よりも高い配達効率を達成し、必要なスタッフ数も抑えることができているという。

 

重たいものを配達してくれる利便性

社区団購「美団買菜」(メイトワン)の北京市順義区の後沙峪ステーションでは、近隣の100近いマンション、住宅地に無人カートで生鮮食料品の配達を行っている。

社区団購は、前日までにオンライン注文をしてもらい、翌日配送するという仕組み。前日に配送量が確定をするため、卸などの物流調整機能が不要となり、産地から直送して、商品ロスも出ない。このため、低価格で生鮮食料品を提供できる。

各マンション、住宅地には住民有志の団長がいる。無人カートはこの団長の元まで配達をすれば、後は団長が購入者に声をかけて受け取りをさせたり、配達をする。団長には一定程度の利益も入る仕組みになっている。

美団買菜でも、コロナ禍から注文量は2倍に増えているが、大瓶の食用油、飲料水、大袋の小麦粉など、重たい商品の注文が特に増えているという。外出を控えるというよりも、重たいものを配達してくれるという利便性が注目をされているようだ。

▲美団の社区団購の無人カート配達。配達先には団長と呼ばれるスタッフがいるため、荷下ろしをして保管をしておくと、近隣の会員が取りにくる仕組み。

 

マンション敷地内には走る自動販売

また、上海市や国立公園などで話題になっている新石器科技の無人販売カートがマンションに導入され始めている。無人販売カートは、飲食店で料理を積載すると、指定された販売場所まで自動運転で走行し、料理の販売を始めるというものだ。購入したい人は無人販売カートのQRコードスマホでスキャンして支払いをすると、ロッカー部分が開いて、料理を取り出せる仕組みだ。

この無人販売カートが導入されたのは、東晶国際公寓、大雄城市花園、亦城茗苑などの大規模マンション。販売されているものは、野菜などの生鮮食料品だ。

無人販売カートには冷蔵機能もあるために、マンション敷地内を巡回し、購入したい人が手をあげると、その姿を認識して止まってくれる。移動する自動販売機のような感覚だ。

北京市高級自動運転モデル地区事務所によると、現在モデル地区では16社の無人カートが約400台稼働しているという。北京市では無人カートによる配送が日常のものになろうとしている。

▲新石器科技の無人カート販売車。大型マンションの敷地内に導入され、走る自動販売機として重宝されている。走っているところを見かけたら、手をあげると止まってくれる。

▲新石器科技の無人カート販売車の画面。パネルをタッチして商品を選び、左のQRコードをスキャンして支払いをすると、無人カートのドアが開き、商品を取り出せる。