美食の街・香港の飲食業がかつてないほど苦しんでいる。コロナ禍によりセルフ化が進んだが、多くの香港人はそれをサービスの低下と感じ、深圳に食事に行くようになっているからだと星島環球が報じた。
コロナ禍でセルフサービス化が一気に進んだ香港の飲食店
香港と言えば、関税ないことによる輸入品の買い物天国。そして、美食と夜景が楽しみな都市だった。しかし、その香港の飲食業が危機に瀕している。
以前の香港は、住宅が狭いことから、朝昼晩すべてを外食する人が多かった。これにより、香港では低価格の朝食店や間食のファストフードから豪華な香港料理の高級店までが栄えていた。しかし、それをすべて変えたのがコロナ禍だ。多くの飲食店が「両餸飯」(リャンソンファン)に衣替えをしていったのだ。餸はおかず、惣菜の意味で、セルフサービスでおかずを2品選び、あとはご飯をもらい、食事をするというもの。コロナ禍で人との接触を避けるため、セルフサービスが一気に広がった。
また、両餸飯ではテイクアウトやデリバリーにも対応している。そのため、新型コロナの感染を防ぐために、テイクアウトやデリバリーを使って、狭くても自宅で食事をとる人が増えた。外食の街だった香港で、内食の習慣が広がっていった。
香港人はネーザンロードではなく深圳に遊びに行く
コロナ禍が開けると、北に隣接する深圳への入国手続きが再開され、香港では深圳ブームが起きている。入国手続きが簡素化され、気軽に遊びに行けるようになったことや、コロナ禍の間に中国で普及をしたが香港にはまだ進出していない飲食チェーンやブランドが人気となり、香港人は週末には香港のネーザンロードではなく、深圳に遊びに行くようになっている。
この煽りを受けたのが飲食店だ。週末は飲食店にとって稼ぎ時であるはずなのに客がこない。店の前を歩いていない。
特に3月下旬の週末は復活祭(イースター)で、例年の飲食店は家族づれで賑わうはずが客がめっきりと減った。香港飲食連業協会の黄家和会長は、昼食は2割以上、夕食に関しては4割以上売上が落ちているという。
セルフ化により、サービスレベルが低下をしたと感じた香港人
香港人が、香港の飲食店に行かず、深圳の飲食店に行ってしまう理由は、両餸飯に代表されるファストフード的な飲食店が増えすぎてしまったことだ。家族で楽しく食事をしたいのに、セルフサービスでおかずを選んで、オクトパスカードやクレジットカードでセルフ決済をする。平日の朝食や昼食であればいいかもしれないが、夜までそれでは楽しくない。
Facebookに「香港両餸飯フォローグループ」のモデレーターをしているアンドリューさんは、「飲食業の経営者たちはいつになったら反省をするのか?」という文章を公開した。
その内容は、業績悪化と人手不足により、フロアスタッフの数が足りなく、サービスが著しく低下をしているというのだ。アンドリューさんは、ある飲食店の写真を掲載した。その飲食店はテーブルが20ほどあり、カウンター席も合わせて100名規模の飲食店だが、フロアスタッフが2人しかない。そのため、配膳で手一杯となり、テーブルの片付けまで手が回らない。これにより、テーブルは空いているのに待たされる状況が起きている。
サービスと売上減少の負のスパイラルに陥る香港飲食業
香港の人件費は中国に比べて高い。店舗家賃も高い。そのため、飲食業などでは余計な人を雇うことができない。経営者にとって、セルフ注文、セルフレジなどの省力化は大歓迎で、どんどんスタッフが削られていく。インド、パキスタン、南アジアから職を求めて香港にくる人もいるが、広東語が話せないため、フードデリバリーなどの接客がない仕事にいってしまう。
サービスが悪いから客が離れ、売上が低下をするからスタッフを削り、さらにサービスが低下をするという悪循環になってしまっている。これが続けば、観光都市としての香港の魅力も低下をしていくことになる。香港の飲食業は岐路に立たされている。