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アリババの社区団購「淘菜菜」が大連に進出。地方の大都市に居場所を見つけた社区団購ビジネス

アリババの社区団購「淘菜菜」が大連市に進出をし、好調な売上をあげている。社区団購は、流通をシンプルにして生鮮食料品を安価で提供するビジネスだが、農村でも大都市でもなかなかうまくいかなかった。アリババは地方の中核都市に活路を開こうとしていると璽承電商観察が報じた。

 

中核都市に居場所を見つけた「淘菜菜」

アリババの社区団購「淘菜菜」(タオツァイツァイ)が大連でサービスをスタートして注目をされている。淘菜菜はこれまで安徽省福建省など20以上の地域でサービスを展開してきたが、大連のような二線都市にねらいを定めた。二線都市は地方の中核都市になる。社区団購はこれまで大都市でのビジネスに苦戦をし、地方では黒字化が難しいという問題を抱えていた。淘菜菜は地方中核都市という居場所を発見した可能性がある。

▲淘菜菜は、生鮮食料品を前日に注文し、翌日店舗に受け取りに行くというもの。農村でも大都市でもなかなか軌道に乗ることができなかったが、淘菜菜は、地方の中核都市という居場所を見つけた。

 

業態が変化し続けてきた社区団購

社区団購とは、生鮮食料品を前日までに注文しておき、翌日拠点に受け取りに行くというもの。配送量が事前に確定をするため、物流の調整機能を担っている流通卸を通す必要がなくなり、低価格で生鮮食料品を提供できる。

このビジネスは誕生して以来、大きく変化をしてきた。当初は、2016年頃から農村で始まったものだ。農村は小売店も少ないため、買い物に不便がある。そこで、日本の生協をモデルに、ご近所でまとめ買いをして、良質な食料品を低価格で提供するというのが最初の目的だった。興盛優選、十薈団、同程生活などの企業が登場し、この3つは「老三団」と呼ばれた。

ところが、2018年頃から京東、テンセント、アリババなどがこのビジネスに注目。投資をしたり、自社で社区団購サービスを始めるようになる。さらに、2020年にコロナ禍が始まると、非接触で生鮮食料品を購入できる仕組みだとして、美団(メイトワン)、滴滴(ディーディー)、拼多多(ピンドードー)なども参入、激しいシェア争いをするようになった。特に大規模マンションなどで配送拠点をマンション内に設置をすれば、住人は敷地の外に出ることなく買い物ができるため、大都市部でも普及が始まった。

しかし、本質的に大都市には合わないビジネスモデルだった。大都市住人は忙しく、予定も頻繁に変わる。それが「前日注文」「受け取り」というのはやはり利便性に欠ける。それよりは30分で配送してくれる新小売スーパーやクイックコマースを使いたがる。一方、過疎地では人口密度が低すぎて、1拠点あたりの利用者数があがらず、配送効率も悪い。

この社区団購の競争を勝ち抜いたのは「美団優選」で、2021年に1200億元の流通総額をあげたが、これは目標よりも300億元も少ないものだった。2022年4月からは、美団優選は新疆ウイグル自治区甘粛省青海省寧夏省などでのサービスを停止して、縮小モードに入っている。

その他の社区団購も縮小モードに入っているが、その中でアリババの淘菜菜だけが拡大路線を走っている。それも他の社区団購が撤退した地域に入るというのではなく、これまで社区団購があまり市場と考えてこなかった地方中核都市を中心市場として考えている。

▲中商情報網による社区団購の利用者数とその予測。テック企業が相次いで参入したため、利用者数は増えているものの、ビジネスとしてはどこも軌道に乗せることに苦しんでいる。

 

複合業態化が活路となった

淘菜菜の特徴は、品質が高いということだ。アリババ傘下の「盒馬」(フーマ)、「大潤発」(ダールンファー、RTマート)、アリババデジタル農業などのリソースを活かしているため、他の社区団購よりも高品質の生鮮食料品を提供している。その分、価格は高めとなるため、地方市場での競争力は弱かった。

アリババは、安さが魅力の社区団購市場で、この「一般的な社区団購よりも品質は高いが、価格も高い」という特徴を活かし始めた。拠点となる淘菜菜は、単なる配送拠点ではなく、店頭販売も行い、宅配便も扱い、ライブコマースを行うスタジオにもなる。さらに、無料配送サービスも始めた。

2022年1月から無料配送サービスの試験営業を始めたところ、売上が20%から30%上がった。7月から順次、各店舗で無料配送サービスを始めている。

▲淘菜菜は、配送拠点を店舗化し、店舗受け取りの他、店頭での購入もできる。新小売の考え方を取り入れた。

 

地方大都市とマッチをした淘菜菜

淘菜菜は店舗をもち、品質も高いので、他の社区団購に比べて運営コストが高くなるという弱点がある。大都市であれば、その品質の高さから受け入れられる可能性は高いが、すでに大都市にはアリババ自身がフーマフレッシュなどの新小売スーパーを展開しているため、淘菜菜の居場所がない。かといって、地方ではコストが高すぎて採算が合わない。このようなことから、大連のような二線都市が淘菜菜の市場として注目をされた。

また、二線都市の市民は、大都市住民に比べて対面での買い物を好む傾向がある。店舗を持っている淘菜菜はこのような点でも有利だ。さらに、二線都市は都市の規模が小さく、すぐ郊外となり、生鮮食料品の生産地までの距離が近い。流通コストを下げることも期待できる。

このようなことから、淘菜菜は社区団購の進化系業態として注目されている。

▲店舗の商品点数は少なく、動きのいいスナック菓子、飲料など日持ちのするものが中心。しかし、店舗があることでマインドシェアをとることができ、生鮮食料品を受け取りにきた顧客によるついで買いも期待できる。