コロナ禍の外出自粛により、にわかに新規参入が増えた社区団購。テック企業が参入することで、過剰な競争が繰り広げられ、老舗企業は破綻、新規参入企業は当局から違反を指摘される状況になり、ようやく過剰な競争が終わったと見られるとAI財経社が報じた。
テック企業の参入で競争が激化した社区団購ビジネス
生鮮食料品の新しい販売手法である社区団購(シャーチートワンゴウ)。前日までに注文をすると、翌日、近所の団長のところに商品が送られてくるので、受け取りに行くというものだ。前日注文であるために配送量が確定をするため、需給調整をする役目の卸業者が不要になる。そのため、低価格で販売をすることができる。
元々は、商店が少ない地方で日本の生活協同組合の仕組みにヒントを得て始まったものだが、コロナ禍で一気に都市にも広がり、美団(メイトワン)、アリババ、滴滴(ディディ)などのテック企業の参入が相次いだ。外出自粛で買い物に困ったマンション住人たちが、有志が団長となり、マンションの集会室などに配送してもらう。会員になった住人は、マンション内の移動だけで生鮮食料品が手に入る。
競争が落ち着くと、減らされる報酬、還元クーポン
テック企業が参入をして、例によって大量のクーポン、優待施策を打ち出し、激しいシェア争いが起きる中で、以前からこのビジネスを育ててきた老舗社区団購が破綻をするなど、大きく変化をしてきた。その競争が終わり始めている。
2020年末にある社区団購の団長になった張智さんは、団長の報酬は売上の10%で、売上1000元につき50元のボーナスもあり、月5000元(約9.2万円)の収入は堅いと言われた。ところが、その約束は2月だけだった。ボーナスはなくなり、報酬も10%から7%に減額をされた。
2021年後半からはどの社区団購も似たような状況で、団長の報酬の減額が続いている。競争が落ち着いてきたからだ。
現在、最も規模が大きい第1グループにいるのは、美団優選と多多買菜(拼多多系)の2社で、シェアは30%を超える。第2グループにいるのが淘菜菜(アリババ系)、興盛優選、京喜拼拼(京東系)の3社になる。
老舗企業はいずれも破綻状態
一方、このビジネスを育ててきた老舗系の同程生活、食享会の2社はすでに破綻をしていて、十薈会もほぼ破綻状態になっている。十薈会の北京本部オフィスはすでにもぬけの殻となっており、守衛によると、毎日10数名の債権者が訪れるだけだという。十薈会破綻の予兆は2021年8月頃にはすでにあった。サービス提供エリアを一気に21都市も減らし、大幅なリストラを行なったからだ。
独立系で正常営業ができているのは興盛優選だけになってしまったが、興盛優選も業績は厳しい。2021年に3回の投資資金を入れることができたため維持ができているが、何か手を打たなければ、他の老舗社区団購と同様の運命が待っている。
興盛優選は、生鮮食料品の他に女性向けの服飾の扱いも始めた。若い世代と中年の女性に向けてカジュアルウェアの注文を受け付け、団長の拠点まで配送する。そのために、興盛優選は2021年11月に、投資資金を使って、湖南恩衣電子商務というアパレル企業に資本参加し、40%の株式を取得した。
政府の改善命令により、社区団購の過剰な競争が終わった
テック企業系の社区団購の競争は度を越していた。「0.01元で卵1個」「0.01元で牛乳1パック」など、新たな会員を集めるための過剰な優待施策が行われた。
さらに、大きな不満が起きたのが卸業者たちだった。卸業者は、生産地から商品を仕入れ、小売店の需要と供給を見ながら商品を配送している。卸業者の働きにより、全国のスーパー、小売店で欠品が起こらずに済んでいる。
しかし、社区団購はこの卸業者を不要にしてしまう仕組みだ。卸業者たちは、生産者や出荷業者に社区団購に出荷をしないように求める申し入れを行い、社区団購と対立をしていた。2020年12月には、国家市場監管総局が介入をし、ルールを協議する事態にまでなっている。
2021年3月には、国家市場監管総局は多多買菜など社区団購5社に対して、不当価格販売による処罰を行い、合計で650万元の罰金を課した。2021年はその後も市場監管総局による処罰、改善命令が相次いだ。
これにより競争も沈静化をし、適正規模を求めてサービス提供地域を縮小する社区団購が相次いだ。12月には、滴滴系の橙心優選がサービスそのものを停止している。
ようやく社区団購の過剰な競争が終わったと多くの人が見ている。