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中国版ツイッター「ウェイボー」の苦戦。広告主が離れていく。デジタル広告と合わなくなってきたSNS構造

中国版ツイッター「微博」の成長が止まっている。広告主離れが起きているからだ。デジタル広告はすでにAIによりマッチングをするという状況になり、フォローフォロワー関係のSNSでは広告効果があがらなくなっていると連線Insightが報じた。

 

中国版ツイッター「ウェイボー」の成長が頭打ち

中国のツイッターとも言える「微博」(ウェイボー)の成長が止まっている。ウェイボーは、ツイッターとよく似たSNSで、フォローフォロワー関係の構造を基本にしている。公的機関や企業、著名人などがアカウントを持ち、メッセージを発信し、それをフォロワーが読むというものだ。

そのウェイボーが成長の限界に達している。2019年Q4に初めての減収を経験し、その後、盛り返したものの、2022年に入ると再び減収が続いている。ウェイボーの収入源は広告であるため、2019年Q4の減収はコロナ禍により広告出稿が減少したことが原因だと考えられるが、2022年はコロナ禍から脱し、経済も回復軌道に乗っているのに減収が続いている。この理由については、ウェイボーだけでなく、トラフィック駆動(利用者が増えれば収入が増える)のビジネスが限界に達しているのではないかということが指摘をされている。

▲ウェイボーの収入は、広告出稿が控えられたコロナ禍に落ち、2021年には回復をしたが、2022年になって再び下がり始めている。

 

変わるデジタル広告の考え方

ウェイボーの月間アクティブユーザー数(MAU)は着実に成長をしている。2020年には足踏みをしたが、2021年には大きく伸び5.73億人と、6億人にせまる勢いになっている。従来のトラフィック駆動の広告ビジネスであれば、MAUが増えればそれに比例をして広告収入も伸びるのが常識だった。

ところが、2022年に入って業績を悪化させている。MAUが増えても減収となる現象が起きている。これは広告主がウェイボーに広告を出稿しなくなっているからだ。

ウェイボーのようなトラフィック駆動の広告は、マスメディア広告に似ていて、「たくさんの人に見てもらうことで広告効果をあげる」というもの。広告と消費者のマッチング率は低いものの、母数が大きいので一定の広告効果をあげられる。ウェイボーの広告はこのタイプのものだった。

一方、2018年頃から台頭してきたショートムービー「抖音」(ドウイン)、「快手」(クワイショウ)などの広告は、消費者の嗜好とマッチングさせることで広告効果を高めている。配信する広告数は少なくなり、マッチング率があがる。そこにAIやビッグデータ解析などのテクノロジーが使われている。

「数打てばあたる」広告から「ねらってあてる」広告への転換が起きている。ウェイボーはこの広告の転換に完全に乗り遅れた。

▲ウェイボーのMAUは順調に増え続けている。しかし、利用者が増えても広告収入があがらない状況に苦しんでいる。

 

減少し続ける広告出稿主数

2021年、ウェイボーはナスダックに続いて香港にも重複上場をした。この時の目論見書に広告主の数の統計が記載されている。それによると、2018年から2021年までの4年間で、広告主の数は290万、240万、160万、100万と減少をしている。香港上場を目指して、ウェイボーが中小企業の広告から大企業への広告へシフトを進めたこともあるが、広告主離れが起きていることは確かだ。

また、大企業でもウェイボーに対して広告出稿を抑えるようになっている。2022年Q3、最大手の広告主アリババは、ウェイボーに対する広告出稿を前年比で41%削減した。このようなことが起きており、ウェイボーの収益が悪化をしている。

▲ウェイボーの株価は下落し続けている。SNSの構造とデジタル広告が合わなくなってきていることが原因だ。ウェイボーは新たな事業を見つける必要がある。

 

ビッグイベント頼みの広告収入

このような事態に、ウェイボーは新たな広告主を発掘することで対応しようとしている。電気自動車(EV)の販売が好調な自動車産業の広告収入は増加をしている。

また、大イベントに合わせて特集ページを組み、そのイベントの企業パートナーに広告出稿をしてもらうという手法も一定の成果をあげている。2022年12月にカタールで開催されたワールドカップでは、中国の乳業メーカー「蒙牛」(モンニウ)がスポンサーとなり、試合会場に多くの広告を出した。蒙牛は、ウェイボーのワールドカップ特設ページに大量の出稿をした。

しかし、新たな広告主を見つけてきても、結局はトラフィック駆動の広告であることは変わってなく、イベントに合わせた広告も他力本願であり、広告収入を大きく増加させることができる機会は年に数回程度でしかない。

ウェイボーの収入を維持することは可能であっても、次の成長にはつながらない。根本的な課題は解決されていない。

カタールワールドカップでは、中国の乳業メーカー「蒙牛」がスポンサーとなった。ウェイボーでは、蒙牛をスポンサーに迎え、ワールドカップ特設キャンペーンを行なった。

 

新しい試みも不発に終わる

この5年、ウェイボーは次の成長曲線を描くための試みは丹念にやっている。ショートムービー、ライブコマース、ECなど、先端を走る抖音に対抗して、さまざまな新しい試みをして、トラフィックから広告効果への脱却を図ろうとしている。しかし、そのどれもが不発に終わっている。

フォローフォロワー関係のSNSの中で、ショートムービーやライブコマースは構造的になじまず唐突に感じられるからだ。多くの利用者がライブコマースを見るのであれば、使い方になじんでいないウェイボーではなく、使い慣れている抖音や快手を利用する。

 

デジタル広告と乖離し始めてるフォローフォロワー関係

2022年3月、ウェイボーは新しいアプリをリリースした。「星球」で、メッセージだけでなく、ビデオも投稿ができ、芸能人や趣味分野でのインフルエンサーをフォローできるというものだ。構造としてはウェイボーと大きく変わらないものの、特定の話題に特化したコンテンツだけを見ることができるため、好調に利用者を獲得している。

しかし、構造はウェイボーほぼそのままであり、結局はどうマネタイズするかという問題につきあたることになり、そこではウェイボーと同じトラフィック駆動の広告ということが課題になっている。

調査会社「易観千帆」のデータによると、アクティブユーザーの1日の平均利用時間は、抖音が105.68分、快手が133.45分、小紅書(シャオホンシュー)が57.24分であるのに対し、ウェイボーは36.43分でしかない。

現在の広告のトレンドは、AIによりマッチング精度を高め、魅力のあるコンテンツにより長時間利用をしてもらい、広告との接触機会を増やすというものだ。一方、ウェイボーは大量の人に見てもらうことはできるが、タイムライン内広告であるために、接触回数を増やすことも簡単ではない。

ウェイボーが抖音のような新しいタイプの広告に対応をしていくことも簡単ではない。フォローフォロワー関係を軸にしたSNSという構造とうまく合わないからだ。ウェイボーはすでに時代の役割を終えたという人もいる。ウェイボーは存続を考えなければならない事態に直面をしている。