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デリバリー配達のラストワンマイルはビル清掃員。都会の複雑な配達から生まれた奇妙な副業

ビルが密集する深圳市の華強北では、デリバリーの最後の配達部分をビルの清掃員が受け持つという奇妙な副業が自然発生している。騎手にとっては面倒がなくなり、清掃員にとってはこづかい稼ぎになるからだと迅視財経網が報じた。

 

デリバリー騎手にとってビル街は迷路

スマホで注文をすると30分程度で食事や飲み物を届けてくれるフードデリバリー。人口が密集している大都市では、注文も多く、注文を届ける距離も短くなるために効率がよく、配達をする騎手はけっこう稼げる。と誰しもが思うが、現実はそう甘くない。高層ビルが多いからだ。

オフィスビルなどでは、入管管理が行われ、デリバリー騎手は受付から中に入ることができない。そのため、受取人に連絡をしてロビーに取りにきてもらう必要がある。多くの消費者は、デリバリー騎手の効率などは考えてくれないので、取りに来るまで5分10分待たされる。それで次の配達が遅れると、格付けが下がり、仕事を回してもらえなくなったり、場合によっては罰金を徴収されることになる。

古いビルなどでは勝手に中に入っていけるが、今度は届け先が見つからないという事態が起きる。エレベーターが全階にまで通じていないこともあれば、部屋番号が規則的につけられていない場合もある。ビルの案内表示が古いままで、現状と異なっている場合もある。デリバリー騎手が迷ってしまうことも多く、それで次の配達が遅れれば格下げ、罰金となる。大都市は水平方向の距離は短くて済むが、垂直方向の距離が長くなり、騎手にとって決して配達しやすい場所ではない。

▲デリバリー騎手が停車をすると、複数の清掃員が群がってくる。

 

ビル清掃員が最後の配達を担当

深圳市華強北(ホワチャンベイ)は、アジア最大の電子市場で、南北930m、東西1560mの地域に、商店が5万軒あり、20万人の人が働いている。巨大なラジオ会館のような具合で、ビルは古く、入り組んでいて、うかつに入ると出られなくなると思えるほどだ。デリバリー騎手にとっては鬼門になっている。

ところが、ここに目をつけたのが、ビルの清掃員のおじちゃん、おばちゃんたちだ。清掃員はビルの中を知りつくしている。商店や企業の名前を言われるだけで「何階のあそこ」ということがすぐにわかる。

▲ベテランになると、自分のビルにどのような注文が入るかの予測まででき、それが揃うまでビル前でデリバリー騎手を待ち受ける。

▲やり手の清掃員は、一人の騎手と商品を受け渡ししている間にも目配りを忘れず、他の騎手に「今行くからちょっと待って」と声をかけている。

 

騎手にとっても清掃員にとっても悪くない取引

おそらく当初は、デリバリー騎手が配達の時に、清掃員に場所を聞くということを自然にやっていたと思われる。これが商売になっていった。清掃員が3元の手間賃で代わりに届ける。これはデリバリー騎手にとってもありがたい話だった。はっきり言えば、複雑なビルの高層階の配達などハズレ案件であり、受けたくない。オファーを受けても拒否をする権利はあるが、デリバリーにより拒否回数の上限があり、それを超えると格付けが下がり、いい仕事を回してもらえなくなる。迷子になって時間を無駄にして、次の配達に遅れるよりも、清掃員に委託をして、自分の手元に1元でも残るのであれば、決して悪い取引ではないのだ。

▲配達をする清掃員。複数配達するため、エレベーターを自分の階に一時停止してしまう。迷惑な話だが、多くの人は特に何も言わない。清掃員には自分たちもお世話になっているからだ。

 

月3000元、清掃員のおこづかいとしては上々

この商売が広がっていくと、清掃員たちはただ待っているだけでなく、ビルの前で待ち構えて、デリバリー騎手がくると群がるようになっている。清掃員同士でも競争があるために、いち早く仕事を取る必要がある。さらに、料金を値下げして仕事を取ろうとする清掃員もいる。そのため、3元だった単価は2.5元に下がり、2元にまで下がっている例もある。

それでも、稼ぐ清掃員はお昼のピーク時に50個近い配達を代行し、100元以上を稼ぐ人もいる。月に2000元から3000元(約6万円)になるため、自分の昼休みを使ったアルバイトとしては決して悪くない。

清掃員はそのビルに出入りするため、ビルが発行した身分証を首から下げている。デリバリー騎手にとっても身分がわかっている人に頼めるため安心ができる。

この習慣は、深圳以外の大都市にも広がっている。デリバリー企業にとっては、消費者との約束「弊社がお届けします」を守れていないことになるが、消費者としては早く届き、デリバリー騎手は配送が効率的になり手取りが増え、清掃員は小さくない額がもらえる副業ができる。誰も損をしていない。