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今回は、デリバリーによる即時小売についてご紹介します。
中国でちょっと面白い状況が生まれています。日本ではウーバーイーツや出前館などが参入しているフードデリバリーは頭打ちになっているようです。中国でも需要が飽和をして横ばいになっていますが、そこにECの「京東」(ジンドン)とバイトダンスの「抖音」(ドウイン)が参入するという事態になっています。これで、美団(メイトワン)と餓了麽(ウーラマ)の2社が主要プレイヤーだったものが、一気に4社に増え、競争が激化をすることになります。
すでにレッドオーシャンになっているデリバリーになぜ両社は新規参入をするのでしょうか。これが今回の大きなテーマです。
抖音はこれから配達ネットワークを構築していかなければならないため、すぐには主要都市をカバーするのは簡単ではありません。サービスを提供しながら、さまざまな課題が出てきて、修正しながら成長していくことになります。しかし、京東は大きな脅威です。なぜならECでは、自社による全国配達網をすでに持っており、「211限時達」というエクスプレスサービスでは、当日または翌日に到着をします。さらに、生鮮食料品や特定の商品では30分から2時間で配達する京東到家というサービスをもち、特定の商品とエリアでは「秒送」という9分で配達するというサービスまで提供しています。ECだけでなく、配達に関しても非常に強い企業で、美団とウーラマにとっては強敵になるかもしれません。
レッドオーシャンだと思われていたデリバリーが思わぬところで、ホットスポットになろうとしています。
この参入の向こうには、各社とも飲食の出前だけではなく、即時小売と呼ばれる商品の配達ビジネスを視野に入れています。後ほどご紹介しますが、スマートフォンなどの電子機器、薬品、生花、日用品、家電品などをECで注文してから30分で届けるサービスです。これが店舗の小売やライブコマースを加速させている部分があるため、フードデリバリーは頭打ちであっても、今後、即時小売による利用が拡大をしていく可能性があります。

デリバリーサービスにとって最大の問題は配達コストです。美団の場合、配達距離が3kmまでは3.15元、以降は0.1kmごとに0.2元というのが基準になります。5kmの配達であれば5.15元(約105円)となります。しかし、配達をする騎手(ライダー)にしてみれば、子どものお小遣いのような額で、これでは生活していくだけの収入になりません。
そこで、複数の配達を同時並行でこなすようになっています。

どの配達を担当するかは、基本的にシステムが自動的に決めます。オレンジ色がお店でのピックアップ、緑色が配達先のドロップ地点です。見ていただければわかると思いますが、ピックアップとドロップを繰り返し、移動距離が最小になるように組まれています。そのため、ライダーは狭い地域を蜜蜂のように行き来することになります。
これでも9件の配達を小一時間で完了すれば、配達料金は40元ほどになり、8時間働いて1日320元、25日稼働で月8000元となり、この他ノルマを達成することによるボーナスなどを加えると、なんとか生活しているだけの額を稼ぐことができるようになります。
美団にとって、この配達指示のアルゴリズムは非常に重要です。効率的な配達ネットワークであれば、消費者から徴収する配達料を最小化することができるので、利用者が増えていきます。美団の収入は、飲食店から一定割合の手数料を取る形なので、利用者が増えれば件数が増え、美団の収入が増えていきます。また、騎手にしてみれば同じ時間にたくさんの配達ができれば収入があがっていきます。
つまり、配達ネットワークのアルゴリズムの改良が美団の収益に直接影響をしてくるのです。美団の配達ネットワークシステム「美団超脳」は、最高で1時間に29億ルートを演算する能力を持つようになっています。つまり、1ルートあたり、0.55ミリ秒で計算できるということです。
そのため、美団は常にアルゴリズムの改良をしていて、配達ネットワークの歪みを解消していっています。
現在、美団は深圳市を始めとして11都市で、ドローンによるフードデリバリーの配送を行っていますが、これも配達ネットワークを効率化させるために行っています。これについては「vol.160:美団のドローン配送が本格化。なぜ、大都市でドローン配送が可能なのか、そのテクノロジー」(https://tamakino.hatenablog.com/entry/2023/01/22/080000)で、そのテクノロジーについてご紹介していますので、参考にされてください。
理想的な配達ネットワークとは、騎手が常にバッグの中に荷物を満載して、移動しながらピックアップとドロップを繰り返している状態です。このためには、飲食店などのピックアップ地点と配達先のドロップ地点が均等に分散していることが望ましいのですが、現実はそうはうまくいきません。
ピックアップ地点で問題になるのはショッピングモールです。モールには多数の飲食店が入っているため、大量の配達案件が発生します。また、ドロップ地点ではオフィスビルや大規模マンションなども問題になります。人口が多いため、大量の配達案件が発生します。
昼時や夕食どきなどは、モールからオフィスビルに配達するという案件が大量に発生します。すると多数の騎手が、モールから飲食品を運び、オフィスビルに届けなければならなくなります。それでも足りないのでまたモールに帰らなければなりません。つまり、行きはバッグが満載でも、帰りは空という状態が生まれます。これは非常に効率が悪いのです。
そこで、ここにドローン路線を設定してしまい、人ではなくドローンに配達させます。これにより、人間の騎手は非効率な配達をしなくて済むようになり、配達ネットワーク全体の効率を高めることが可能になります。
では、それで配達ネットワークの効率は確保されるでしょうか。まだまだ問題があります。中国では同じ業種の店舗が集まる傾向があります。飲食店であれば「美食街」を形成していることが多くあります。また、ファストフードは繁華街の歩行街、モールなどに集中する傾向があります。一方、そのような場所は住むのにはあまり適していないので、住宅はそれ以外の場所に広がっています。
すると、ここでも美食街→住宅という路線に集中をし、非効率さが生まれてしまいます。しかし、飲食品だけでなく、スマホや医薬品も届けるという即時小売にサービスを拡大すると、電子機器の店舗は飲食店とは別の場所に「電子街」を形成していますので、ピックアップ地点が分散をしてくれるようになります。つまり、即時小売でさまざまな商品を配達することで、配達ネットワークの効率があがっていくのです。しかも、多くの商品は飲食品よりも単価が高いため、美団はより多くの手数料収入を得ることができます。
フードデリバリーが、即時小売に進出をしていくことは必然で、美団、ウーラマともに2016年頃から即時小売のサービスを提供するようになっています。それがようやく消費者に認知され、さらにライブコマースとの相性が良いことなどがあり、ここへきて伸びてきているのです。
ただし、新たな開発も必要になります。即時小売は、店舗在庫をピックアップして配達するというのが基本になります。つまり、即時小売を本格的に提供するには、店舗在庫の情報を知っておく必要があります。それがわからないとピックアップ地点を決められないからです。
この辺りをどのように行うのかというのも即時小売の大きなポイントになります。
そして、次に大きいのが、即時小売はECだけでなく、店舗小売やライブコマースの販売を加速する効果があるということです。ライブコマースで、「今、買えば30分に自宅でお届け」と言われれば買いたくなってしまう人は多いはずです。
また、店舗では、商品を届けるということはクーポンやチラシも同梱できるということで、購入客に再び利用してもらう、店舗にきてもらうというプロモーションをするチャンスが生まれます。
即時小売については、「vol.156:あらゆる商品が1時間で届けられる時代。デリバリー経済がさらに進化する中国社会」(https://tamakino.hatenablog.com/entry/2022/12/25/080000)でもご紹介しましたが、この時は、配達する側の問題に焦点を当ててご紹介しました。今回は、即時小売を利用する小売店、ライブコマースの側に焦点をあてて、即時小売を考えてみたいと思います。
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