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ドローン配送の法整備進む。試験営業の段階を終え、正式営業に移る段階に達した深圳市

深圳市のドローン配送が進展している。美団、順豊が定期路線を設定し、正式営業できる状況になっている。深圳市政府も、さまざまな法整備を行い、ドローン配送を試験営業から正式営業に格上げをしようとしていると南方都市報が報じた。

 

3ヶ月で飛行回数は累計20万回

深圳市でドローンによるデリバリーが定着をしようとしている。現在は試験営業という建前ながら、20万回の飛行を行い、実際に消費者に届けた飲食品も2000件に達した。

すでに美団アプリでデリバリーを注文する時に、一部の飲食店では「ドローン配送」が選べるようになっており、受け取りをしたいドローンステーションを選び、そこに配送してもらうことができる。ドローンステーションから3km以内の飲食店のデリバリーであれば15分で受け取ることができる。

従来の配送員による電動スクーターによる配送では30分ほどかかっていた。これが半分の時間に短縮できる。

▲荷物を運ぶ美団のドローン。2022年第2四半期の3ヶ月間で、20万回の飛行を行った

▲美団のアプリでは、ドローンが現在どこを輸送中かがリアルタイムで表示される。

 

11のオフィスビル、マンションと4つのモールを結ぶドローン

飲食店の入っているモールとオフィスビルやマンションを結ぶ路線が設定され、注文が入ると、配送員は、通常通り飲食店で受け取り、それをモールに設置されたドローンステーションに運ぶ。そこからオフィスビルのステーションまではドローンが配送、注文者がステーションに受け取りに行くというものだ。

人によるフードデリバリーでは、本来は自分の家のドアまで、オフィスであればデスクのそばまで届けてくれるが、都市部では現実にはそうはいかない。多くのマンション、オフィスで正門や受付から先にはデリバリー配達員が入っていくことができず、注文者がそこまで取りに行くケースが増えているのだ。

マンションやオフィスでは、事前に来訪予約がない人は中に入れない。宅配便やデリバリーのスタッフも同じで、特にコロナ禍になってからは不用意に未知の人を中に入れないポリシーするにするマンション、オフィスが増えている。

つまり、デリバリーを注文しても、受付のあたりまで受け取りに出向かなければならない。だったら、屋上などに設置されたドローンステーションに取りに行っても同じことだ。

2022年8月末段階で、美団は深圳市に11路線を設置し、11のオフィスビル、マンション、4つのモールを結び、2万人の需要に応えている。

▲ドローンステーションに着陸をするドローン。荷物はステーション内のロッカーに自動的に移される。

▲運ばれた荷物はドローンステーション内のロッカーに自動的に収められる。

 

順豊宅配便のドローン配送路線を66路線

また、宅配企業の順豊(シュンフォン、SF Express)は、ドローンによる宅配便配送網を構築している。2022年12月に深圳市粤港澳大湾区に試験路線を設定して以来、2022年8月末段階で、8.2万回、42.3万kmの飛行を行い、配送した荷物の総重量は170トンに達した。

また、羅湖区の羅湖医院に対して、医療物資専用のドローン路線を設置し、2022年8月末段階で3299回の飛行を行っている。PCR検査などの検体を輸送する専用路線で、運んだ検体は112万件に達している。

順豊は深圳市内に66路線を設定している。深圳市の竜崗区、南山区、福田区、羅湖区、龍華区、坪山区などをカバーしている。また、海を越える路線も3路線あり、珠海市、広州市、中山市などの一部もカバーしている。

これも配送ステーションに設置されたドローンステーションからドローンで、各地のドローンステーションまで配送をする。受取人はドローンステーションまで取りに行くことになるが、公共宅配ロッカーと同じ感覚であるため定着をしようとしている。

▲順豊のドローンは、PCR検査などの検体を輸送することに活用されている。

 

深圳市の法整備も進み、正式営業は目前か

深圳市でドローン配送が定着をしているのは、深圳市が積極的な政策をとっていることが大きい。

今年2022年2月には「深圳市新型基礎情報設備建設行動計画(2022-2025年)」(http://www.sz.gov.cn/zfgb/2022/gb1234/content/post_9628550.html)を発表した。光ファイバーや5G基地局などの設備計画だが、この中にドローン配送網も含まれている。都市の低空物流を安全に運用するため、配送ドローンの統一管理機関、プラットフォームを設立することも明記された。

また、7月には深圳市交通局が「深圳市現代物流基礎設備体系建設政策」を公開し、物流を「低空、地上、地下」の3レイヤーで整備していく方針を打ち出した。

また、中国民用航空中南地区管理局とも調整機関を設置することも決まり、民間航空の飛行路線と低空ドローン路線の調整も行われていく。

法整備も着々と進み、深圳市ではドローンが物流の重要なインフラになる可能性が高くなってきている。