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今回は、アプリ内課金をめぐるアップルとテンセントの対立についてご紹介します。
中国で、微信(ウェイシン、WeChat)を開発した騰訊(タンシュン、テンセント)とアップルが対立をして、かなり深刻な事態になっています。WeChatはアップルが定めるアプリ内課金を回避する手段をアプリ内で提供していました。これはアップルの規約違反にあたります。ただし、後ほど詳しくご紹介しますが、米国連邦地裁で「アップル以外の決済手段を認めないことは、カリフォルニア州不正競争防止法に違反をしている」という判断が下されているため、その他の国でもアップル以外の決済手段を認めざるを得なくなっています。テンセントはおそらく中国でもアップルのアプリ内課金(In-App Purchase、IAP)以外の決済方法を認めさせるために、意図的に行っているのだと思われます。これは、テンセントとアップルの駆け引き、喧嘩です。
しかし、現状では、テンセントがアップルの規約に違反をしていることは確かで、アップルはそのような回避手段を停止するように警告しました。警告に従わない場合は、アップストアでのアプリの更新が停止されることになります。つまり、iPhone向けにWeChatが配信されてなくなってしまうことになります。これは大ごとになりますが、テンセントはこのIAPを回避する手段を停止しないままにしています。そのため、アップルがいつ配信停止にしてもおかしくない状態にあります。
現実問題として、アップルが特定のアプリを突然削除してしまうということはまずありません。マルウェアが含まれていたなどの緊急性がある場合に限られます。通常の配信停止は、そのアプリがアップデートされた時に、そのアップデート申請を認めないというやり方になります。アップデート前の古いアプリはそのままダウロードできる状態のまま残されることが一般的です(こちらは審査をいったん通過しているからです)。ですので、すぐにWeChatが使えなくなってしまうわけではありませんが、アップデートされなければ半年か1年で利用する人は激減してしまうことは間違いありません。
WeChatのアップデート情報を見ると、バージョン8.0.52が9月24日に配信されていますので、この段階ではアップルが譲歩をしたようです。
このメルマガの読者であれば、WeChatが配信停止になったら中国では大ごとになることは想像がつくかと思います。WeChatは日本で言えばLINEにあたるアプリですが、その存在感はLINE以上であり、国民的なアプリになっています。利用者数は13.7億人ですから、スマートフォンユーザーであれば全員が使っていると考えて間違いありません。
連絡先を聞くときは、もはや電話番号でもなくメールアドレスでもなく、WeChatアカウントです。対面であればQRコードをスキャンしたり、互いにフルフル(スマホを振る)してアカウントを交換します。遠隔であれば、自分のアカウントのQRコードを送るのが一般的です。連絡先情報としては、電話番号や住所よりもよく使われるようになっています。若い男女がナンパをする時のセリフも「スキャンさせて!」になっています。もちろん、WeChatのアカウントを教えてという意味です。
さらに、WeChatペイというスマートフォン決済が内蔵されています。アリペイと並ぶ二大決済手段のひとつです。特にミニプログラムの存在が、この決済の利便性を大きく高めています。ミニプログラムとはWeChatの中から利用できるアプリ内アプリで、鉄道や航空機のチケットも購入できますし、ホテルや飲食店の予約をすることもできます。モバイルオーダーをすることもできます。
例えば、ラッキンコーヒーのミニプログラムを使うには、WeChatの中で「ラッキンコーヒー」と検索をしてミニプログラムを見つけ、起動をすると、そのままモバイルオーダーをすることができます。アカウントはWeChatのアカウントが流用されるのでログイン操作は必要ありません。決済手段は自動的にWeChatペイが適用されるので、カードなどを登録する必要はありません。初めてラッキンコーヒーを利用する人でも、いきなりモバイルオーダーができてしまうのです。
このようなミニプログラムが700万種類も用意されていて、すでに178万種類のiOSアプリよりも広大な生態圏を形成しています。今では、消費者向け企業がサービスを運営するのであれば、アプリ開発よりもミニプログラム開発を優先するようになっています。
さらに、WeChatは公的分野にも踏み込んでいます。多くの公的カード(年金、保険証など)はすでにWeChatの中に電子証として保存できるようになっています。一部の地域では、運転免許証の電子副本も保存できるようになっています。最も重要な身分証は、公式の身分証アプリに電子身分証が保存できるようになっていて、WeChatと紐付けをすることで、WeChatでさまざまな身分確認ができるようになっています。
つまり、WeChatは、連絡、決済だけでなく、認証に関しても重要なアプリになっているのです。これが使えなくなるというのは大ごとで、中国で生活をしていく上で大きな不便を被ってしまうことになります。もし、WeChatがiPhoneで配信停止になったら、多くの人がとりあえずAndroidスマホを買ってきて、そちらでWeChatを使うことになるでしょう。iPhoneはサブ機としてしか使いようがなくなり、iPhoneの中国市場でのセールスは深刻な打撃を受けることになります。そのため、アップルも簡単には配信停止はできませんし、それがわかっているテンセントもIAP以外の決済手段を認めさせようとして駆け引きをしているのです。
テンセントとアップルは、実は2017年にもIAPを巡って対立をしています。有名なエピックゲームズとアップルの対立が起きたのは2020年ですから、中国では早くからアップルのIAP問題=アップル税問題が起きていました。この時は、今回とはまた異なる視点の問題です。
その後、エピックゲームズやSpotify(スポティファイ)などの問題が起きることになります。今回は、まず2017年のテンセントとの間に起きたアップル税問題に遡り、その後、エピックゲームズやSpotify、さらにはテンセントとの第2ラウンドの問題に触れ、アップルのアプリ内課金の仕組みのどこが問題になっているのかをご紹介します。
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