タイでEVシフトが始まろうとしている。その理由は、エネルギー自給ができているため、ガソリンよりも電気代の方が安いからだ。東南アジア各国は豊富な資源を利用して電気代が安い。中国自動車メーカーはこぞってタイとベトナムに進出を始めたと光明日報が報じた。
東南アジアの自動車大国「タイ」
タイの自動車産業は世界第10位で、長い歴史があり、生産のためのサプライチェーンも成熟をしている。そのため、多くの先進国が、経済発展をする東南アジアに自動車を供給するための生産拠点として注目をしている。
しかも、タイ政府は2016年にEVシフト政策を進め、2030年に新車販売の30%を電気自動車(BEV)またはプラグインハイブリッド(PHEV)などの新エネルギー車(NEV)にする目標を立てている。そのため、NEVの輸入税や消費税の減免だけでなく、バッテリーを中心とした技術開発の支援を行い、充電インフラの拡充にも努めている。
特に重要視されているのが、バスとタクシーのEVシフトで、大都市を中心に車両交換のタイミングに合わせて、NEVの導入を図っている。

エネルギー自給により安い電気代
2023年、タイの新車販売に占めるNEVの販売量は9%に達し、消費者もNEVを買い求め始めた。その理由は電気の方がエネルギー価格が安いからだ。GlobalPetroPrices.com(https://www.globalpetrolprices.com)によると、タイのガソリン料金は1ℓあたり45.51バーツ、電気料金は1kWhあたり4.087バーツになっている。これを燃料車は8ℓ/100km、BEVは15kWh/100kmだという想定で燃料代を計算してみると、100kmを走るのに、燃料車は364.08バーツ、BEVは61.31バーツと、6倍近い差が出る。タイは天然ガス発電を主体にしていて、この天然ガスはほぼ100%自給ができている。さらに、再生可能エネルギーによる発電も増加をし、発電コストは年々下がっている。その上、タイ政府は産業を振興するために、補助金などで電力料金を抑える政策を進めている。これにより、電力料金が驚くほど安く、市民は運用コストのかからないNEVを買い求めるようになっている。
一般的な自動車の所有者は毎月4000バーツから5000バーツ(約2.1万円)をガソリン代に使うイメージだが、NEVにすると、少なくとも1000バーツ程度にまで減る。
今年2024年上半期、タイの自動車販売台数は前年比23.8%の減少となったが、NEVの販売台数は前年比31.64%増と、EVシフトが本格化をしている。

NEVの80%が中国車
この中で存在感を増しているのが、中国のNEVだ。2023年には自動車全体での中国車のシェアは前年の9%から11%に増加をしたが、NEVに限ったシェアではすでに80%に達している。
BYDは2023年1月から、毎月連続して18ヶ月間、BEVの販売台数でトップに立っている。さらに、今年2024年7月には、タイでのBYD生産工場が稼働を始めた。年間生産台数は15万台を計画している。また、長城汽車、上海汽車、広汽埃安(AION)、哪吒などの7つのブランドが、タイでの現地生産の計画を進めている。さらにバッテリー製造の寧徳時代(CATL)も、タイに生産工場を建設するための投資の募集を始めている。
タイでEVシフトが始まっているが、ベトナムでもEVシフトが始まっている。その他の東南アジア各国でも、資源を活かして電気代が安く抑えられているため、石油から電気へのシフトが起こるのは必然だと見られている。その時までに、中国企業は、タイにNEVの生産拠点を整備し、タイから東南アジア各国に輸出をすることを目指している。
