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デリバリー騎手たちにも広がる交換バッテリー方式。充電待ち休憩がなくなり、報酬もアップ

上海鉄塔が、デリバリー騎手のための共有バッテリーサービスを始めた。市内に1400ヵ所の拠点を設置し、そこで充電済みのバッテリーと交換できる。充電待ち休憩ということがなくなり、騎手の収入もあがることになると上観新聞が報じた。

 

飲食品だけでなく商品も配達してくれるデリバリー

スマートフォンで料理を注文すると、30分程度で自宅や職場に持ってきてくれるフードデリバリー。中国では「美団」(メイトワン)と「ウーラマ」の2社が大手で、近年は小売店の一般商品の配達にも対応をしてくれるようになっている。医薬品や日用品なども、スマホで注文し、わずかな配達料で運んでくれる。

このような配達スタッフは、電動バイクや電動自転車を使うのが一般的であるため、「騎手」(ライダー)と呼ばれることが多い。

▲上海鉄塔はバッテリー交換拠点に騎手用の休憩スペースを併設した。

 

騎手の悩みは電動自転車のバッテリー切れ

この騎手たちの悩みはバッテリー切れだ。フードデリバリーのシステムは成熟をしてきて、1件1件注文を騎手に指示するのではなく、複数の注文を数珠つなぎのように指示をする。騎手は、常にバッグに配達品が入った状態で、ピックアップとドロップ(配達)を繰り返していく感覚だ。

この時、もしバッテリー切れになってしまった場合、配達途中の商品を別の騎手に渡さざるを得なくなる。騎手の報酬は、配達件数に応じて決まるため、大きく減収になるだけでなく、配達が完了できなかったとして、騎手としての評価も下がることになる。システムは評価の高い騎手を優先して配達指示をするために、評価が下がると如実に稼げなくなる。

 

予備バッテリーの所持は道交法違反になる

そのため、騎手は、自分が食事をする間に充電をするが、忙しい日には食事時間を15分程度で切り上げて仕事に戻りたい。しかし、それではバッテリーが持たないということから、予備バッテリーを持ち歩いている騎手が増えてきた。

しかし、バッテリーの携帯は違法行為となり、交通警察に見つかった場合は罰金を取られることになる。バッテリーの発火事故は多少少なくなったものの相変わらず起きており、このような携帯をすることにより、接点に異物が付着をすることも原因のひとつと考えられるからだ。

 

国鉄塔が始めたバッテリー共有サービス

中国の電力設備会社「中国鉄塔」は、この問題を解決するために、騎手用にバッテリー共有サービスを始めた。中国鉄塔の上海市支社である上海鉄塔は、市内に1400ヵ所のバッテリー交換ステーションを設置し、2000個のバッテリー交換キャビネットを設置した。

このキャビネットから充電済みのバッテリーを取り出し、使用していたバッテリーを入れると充電ができる。1つのキャビネットは8個から12個のバッテリーが充電できるようになっているため、上海市全体で常に2万個以上のバッテリーが提供されることになる。

このステーションには簡単な休憩室も設けられ、騎手が休憩をすることもできるようになっている。

この仕組みにより、騎手にとっては充電待ちでいたしかなく休憩するしかないということがなくなり、1日に20件程度多く配達できるようになり、日給にして100元から200元は多く稼げるようになる。また、予備バッテリーを隠して持ち歩く必要もなくなる。

▲共有バッテリーのロッカー。ロッカーから充電済みのバッテリーを取り出し、使用済みのバッテリーを入れる。

 

保証金不要の仕組みも整備

このサービスを利用するには、500元の保証金を納める必要がある。利用料は月額299元で使い放題のサブスクリプションになっている。500元の保証金は、設備を壊すなどのことがなければ、退会をするときに戻ってくるお金だが、この500元を納めることが障壁となってなかなか利用が進まない面もあった。そこで、上海鉄塔では、騎手のステーションごとに、何か問題があった場合は、ステーション側が責任を負い、費用を負担するという契約を結び、そのステーションの騎手であれば、保証金を納める必要なく、サービスを利用できる仕組みを整えた。

これにより多くの機種が加入をし、現在全体の2/3が、この保証金なしの仕組みを利用しているという。サービス利用者は16.5万人となっている。

▲休憩スペースでは、騎手が集まり、情報交換をする場所にもなっている。