中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

自動車の運転はAIに教わる。失敗しても怒らない、不機嫌にならないAI教官が人気に

AI教官を導入する自動車教習所が増えている。AI教官は、何度失敗をしても不機嫌にならず、何度でも繰り返し教えてくれるため、上達が早いと教習生の評判がいいからだ。すでに1/3の新規免許取得者がAI教官を利用していると九派新聞が報じた。

 

AIが運転を教えるAI自動車教習所

自動車教習所がAI教官を導入し始めている。人の教官ではなく、AIが自動車の運転を教えるというものだ。

AI教官は2つのステップで運転を教える。ひとつは室内に設置されたシミュレーターで、もうひとつは実車だ。

シミュレーターは、ゲームセンターにある自動車ゲームのようになっていて、表示される風景は実写コースがそのまま表示される。ここで、次に練習をする課程の運転操作を一通り行なうことから教習は始まる。運転手順を覚えるだけでなく、ミスをした場所はAIが指摘をしてくれるので、繰り返し、苦手な部分を練習することができる。

このシミュレーターは、実車教習の直前に行う必要はない。教習生には24時間開放されているため、事前にスマートフォンから予約をして、自分の都合のいい時間に練習をすることができる。夜間は実車教習ができないため、昼間仕事で忙しい人は、夜にシミュレーターで練習し、休日に実車教習をまとめて行うことができるため喜ばれている。

▲室内に置かれたシミュレーター。AIが教えてくれ、何度でもやり直しができる。ここで教程をマスターしてから実車教習に臨むことで、上達のスピードが大きく向上した。24時間利用できるため、時間がない教習生からも好評だ。

▲シミュレーターでは、教習所内のコースが実写映像で表示される。実車教習でも、シミュレーターどおりに操作をすればいいため、上達が早い。

 

教官は同乗しない、AIが同乗する

シミュレーターの教習が終わると、実車教習になるが、教官は助手席には座らない。課程により、車の外から監督をしたり、司令室から音声などで教習を行う。

実車教習では「初級訓練」「ポイント強化練習」「自由練習」「模擬試験」「ビデオ教習」の5つが選べる。これを教官の指示によって選んでいく。

初級訓練では、リアルタイムのAI音声の指示に従って運転操作を行う。バック入庫であれば「ハンドルを左に切ってください」「バックミラーで車線と車が平行になっていることを確認してください」という音声指示が行われ、その動作をすると次の手順に進むことができる。問題がある場合には、AIがその箇所を指摘してくれて「ポイント強化練習」をすることができる。そして、自由練習を経て、模擬試験を行い、合格すればその教程は合格ということになる。

▲AI教官による実車教習。人間の教官は助手席に座らず、車の外で教習を監督する。

▲路上教習では、複数の教習生が組になり、教習生だけで路上に出る。すべてAIが指示をする。教官はリモートで教習を監督する。

 

AI教官は失敗しても不機嫌にならない

教習生の評判は上々だ。シミュレーターが24時間開放されているため、昼間に時間がとりづらい人でも練習ができる。多くの教習生が口にするのは、AI教官は辛抱強いということだ。できない箇所があっても、気分を害することなく、何度でも教えてくれる。特に、中高年になって免許を取得しようとする人は、若者に比べて習得に時間がかかるために、教官に迷惑をかけるのではないかと心配をしている人が多い。しかし、AI教官であれば、何度でも自分の苦手なところを指摘してくれ、練習をすることができる。結果、人間の教官に教わるよりも早く上達すると感じているという。

▲車内のタブレットに表示された教習の進捗度。このようなデータに基づいて、AIは苦手と思われる運転操作を集中して練習させる。

▲AI教官はタブレットと音声で運転手順を指示する。どの運転操作に問題があったかが細かく表示され、自由練習では苦手な運転操作を繰り返し練習することができる。

 

すでに1/3がAIを使って運転を学んでいる

武漢市で最初に「AI教官」を導入した正念自動車学校では、2023年12月に試験導入を行い、2024年1月から正式導入し、対応車を増やしていき、現在40台以上がAI教官対応車になっている。好評であるため、9割以上の実車をAI教官対応車にする予定だ。

北京市上海市杭州市などではAI教官が大規模導入されている。「2023年スマート自動車教習年度報告」によると、過去1年間でAI教習を利用した教習生は1000万人を突破し、これは新規運転免許取得者の1/3にあたるという。武漢市交通運輸局でも、この成功を見て、業界全体に導入を奨励していく方針だという。

自動車の運転はもはや人間ではなく、AIが教える時代になった。そして、運転そのものも人間ではなくAIが行う時代が始まろうとしている。