中国建材集団光電材料が発電ガラスの量産を始めた。12枚を採用することで一般家庭の電力をまかなえるという。中国は西部で太陽光や水力による発電をしているが、その電気を消費地の東部にどうやって送るかが大きな課題になっている。発電ガラスは電力の地産地消を実現する切り札になる可能性があると封面新聞が報じた。
量産が始まった発電ガラス
発電するガラスの量産が始まっている。成都市の中国建材集団光電材料(https://www.cnbmcoe.com/)が発電ガラスの量産を開始している。太陽電池建築製品の販売も好調で、今年2024年1月から5月までの注文量は前年同期比で40%以上増加したという。
この発電するガラスは、太陽電池材料として使われるテルル化カドミウムを建材ガラスで封じ込めたもの。通常の窓ガラスとして使用し、同時に太陽光発電をすることができる。
現在、発電量は1枚の発電ガラスで1年に310kWhまでになっており、一般家庭の電力消費が月に300kWhから400KWhであるので、この窓ガラスを12枚使えば、家庭の電力を太陽光でまかなえる計算だ。
課題となっている電力の輸送問題
太陽光発電は日射量と広大な設置場所を必要とするため、西部の砂漠地帯に設置が進められている。これまで利用価値の小さかった砂漠地帯を有効活用できることや、同時に砂漠の緑化も進められるため、砂漠地帯の太陽光発電所が次々と稼働をし始めている。しかし、問題なのは、電力を大量に必要としている東部沿岸都市に、電力をどうやって輸送するかだ。電力網の大規模な再構築も迫られている。
そのため、発電場所に近い西部地区に、大電力を消費するAI系のデータセンターを設置する計画が進められ、電力の地産地消が試みられている。しかし、それでも西部で発電した電力の相当量を東部の沿岸大都市に輸送する必要がある。
この発電ガラスは、この問題の切り札になる可能性がある。都市部でも窓ガラスで発電をし、電力の地産地消が可能になる可能性が出てきた。
太陽電池の発電効率20%に迫る発電ガラス
この発電ガラスの技術は、実験室を出て量産を始めたばかりであり、現在も進化をしている最中だ。試験製造を開始した2017年、光から電気の発電効率は12%しかなかった。それが今では16%にまで向上している。現在、試している改良が成功をすれば17%を超える見込みが立っている。一般的な太陽電池の発電効率は20%前後なので、ほぼ太陽電池に近い水準に達している。
また、発電能力だけでなく、ガラス建材としても進化をしている。第1世代は不透明なガラスだったが、第2世代ではカラーバリエーションを可能にし、第3世代では図案を印刷できるようになった。第4世代では大理石紋様を実現し、現在の第5世代では透過光発電に成功をし、透明な発電ガラスの生産に成功している。
建材としての品質基準もクリアしなければならない
中国建材集団光電材料の副総経理兼CTOの干華氏によると、発電ガラスのサイズを大きくすると生産の難易度が急激にあがるため、現在は1.92平米のサイズを基本にしているという。これで年間310kWhの発電をすることができる。
難しいのは、発電能力の向上だけではない。都市建築に窓ガラスとして使ってもらうためには、建材としての要求も満たさなければならない。強度、彩光、保温、遮音などの性能だ。このような基準は国によって異なり、相手国の基準に合わせた性能開発と試験が必要になり、これが輸出の大きな障害になっているという。
2024年6月10日から14日まで、国際標準化機構(ISO)の建築用ガラス技術委員会(ISO/TC160)の年次総会が四川省成都市で開催された。中国建材集団光電材料ではこの総会に働きかけ、発電ガラスの国際基準の導入を訴え、各国の委員から合意を得ることができた。この国際基準が策定されれば、中国の発電ガラスが一気に海外でも使われるようになる。
中国では「3060」が国家目標になっている。これは2030年までに二酸化炭素排出量を減少に向かわせ、2060年までにカーボンニュートラルを達成するというもので、各国営企業、民間企業がこの目標から逆算をして技術開発を行っている。都市に発電ガラスが普及をするのは、想像よりも早いかもしれない。