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EVの充電。5分で300km時代始まる。ファーウェイのウルトラファストチャージャーがすごすぎる

ファーウェイが1秒で1km充電できるEV用のウルトラファストチャージャー充電器を発表した。5分で300kmが充電できることになる。ファーウェイは、このウルトラファストチャージャーを年間10万台規模で設置をしていくと汽車洋葱圏が報じた。

 

トイレに行く間に充電可能な5分で300kmチャージャー

ファーウェイがEV(電気自動車)の充電器で技術的な突破を達成した。600kWの出力があり、1秒で1kmの充電ができるウルトラファストチャージャー(https://digitalpower.huawei.com/cn/smartchargingnetwork/ultrafastcharging.html)だ。5分で300km、10分で600kmの充電ができることになる。これまでEVの充電は「食事をしている間」か「寝ている間」にするものだったが、これが「トイレに行っている間」に充電ができることになる。

▲ウルトラファストチャージャーは「1秒1km」。5分で300km分の充電ができる。今後発売されるEVは、1000Vに対応することになる。

 

テスラの350kWに対して、ファーウェイは600kW

現状で、テスラのスーパーチャージャーV3で出力は250kW、北米などでのV4で350kWの出力がある。小鵬(Xpeng)の充電器は最大480kWの出力があるが、小鵬のEVと組み合わせなければこの出力にはならない。

また、理想(リ・オート)の最新充電器では、最新のミニバン「MEGA」と組み合わせることで520kWの出力を出せる。11分で500km分の充電が可能になる。

ここにファーウェイは600kWの出力がある充電器を発表した。しかも、汎用であるため、どの車種でも規格内での急速充電が可能になる。すでにバッテリー側は高電流、高電圧に対応ができているのに、それをじゅうぶんに活かせる充電器が存在しなかった。充電に時間がかかるのは、バッテリーの問題ではなく、充電器の側にボトルネックが存在しているのだ。

▲すでに設置されたウルトラファストチャージャー。従来型に比べ、薄くて小さい。これで600kWの出力がある。

 

ケーブルと本体を液冷で冷やす

ファーウェイの技術的突破には、2つのポイントがある。全液冷技術と炭化ケイ素半導体だ。

充電出力を高くするには、電流と電圧の両方を上げる必要があるが、双方に技術的な課題があった。電流をあげると発熱が起きるため、電気的には出力を高くできるのに、放熱処理ができないために電流を一定程度に抑えるしかなかった。

発熱で問題になるのは、まずはケーブルだ。これまでの充電器では、ケーブルを太くするという古典的な方法で発熱処理を行なっていた。ケーブルが太いということは表面積が増えるということで、ケーブル表面から放熱することができる。しかし、それはもはや限界に達している。

そこで、ファーウェイは、ケーブル内部に液冷管を走らせ、液冷方式で放熱させることにした。これにより、電流をあげることが可能となり、同時にケーブルを細くすることができるため3割ほど軽くなった。

▲従来の充電ケーブルは太くて重い。発熱をするため、放熱効率をあげるために表面積を大きくする必要があるからだ。

 

スタンド本体も液冷をする

この液冷という発想は、テスラのスーパーチャージャーでも採用されている。ファーウェイはそれに加えて、充電スタンド本体も液冷をする「全液冷」にして放熱処理を行っている。これにより、ファーウェイの充電器は一気に600Aにあげることができた。

一般的な空冷の充電器のようなファンも不要となったため、サイズは小さくなり、騒音もなく、また防水防塵構造も設計しやすく、機器としての寿命も伸び、15年以上は問題なく使用できるという。

 

半導体の素材を一新して高電圧対応に

もうひとつの技術的突破が半導体だ。多くの充電器の電圧は400V程度に抑えられている。それ以上にすると、半導体が損傷してしまうからだ。この電圧耐性の弱さは、半導体の原材料がシリコンであることにある。

そこで、ファーウェイは炭化ケイ素という新しい素材で半導体を製造した。この素材であれば1000V程度まで耐えられるという。

ファーウェイの充電器は、600Aと1000Vで、600kWの出力を可能にしている。現在の最新EVは800V対応の時代に入ったばかりなので、ファーウェイの充電器はまだまだ余力がある。寿命と同じように15年先でも使用できるような余裕のある仕様になっている。

▲炭化ケイ素を素材に使った半導体。これにより、高電圧に対応することができ、高出力の充電器が開発できるようになった。

 

中央企業と組み、年間10万台ペースで設置

問題は、この充電器が年間10万台というペースで普及していけるのかということだ。ファーウェイは、充電ステーションを運営する業者に、この充電器を販売していく。

この充電ステーションの運営業者で鍵になるのが「普天新エネルギー」だ。普天は中央企業(国営企業の一形態)であり、やはり中央企業である中国石油に買収をされた。その普天新エネルギーが、充電器の分野でファーウェイと協力体制をとることを表明している。つまり、この充電器は準国家プロジェクトとして普及をしていくことになる。

充電器の価格は高くなるが、運営業者からすれば、半分の時間で充電が済めば売上は2倍になることから、利用率の多い充電ステーションへの導入は早いと見られている。

EVは日常の通勤、買い物などには利便性の高い乗り物だが、長距離移動をするときの弱点を多くの人が気にしている。しかし、長距離移動をする時は、ほぼ高速道路を使うことになる。パーキングエリアに入って、トイレに行って、飲み物を買う間に数百km分の充電ができる。そういう時代がすでに始まっている。