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電気自動車EVはオワコンなのか?中国で克服されるEVの弱点

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今回は、中国EVがどこまで進んでいるかについてご紹介します。

 

「vol.215:BYDのEVは欧州市場で成功できるのか。スイスUBSの衝撃的なレポート」で、中国の電気自動車(EV)が欧州市場で大きなシェアを取る可能性があると予測するレポートをご紹介しました。BYDが低コストで高品質のEVを製造できる理由についてもご紹介しました。

このメルマガの内容を整理して、ビジネス+ITに「なぜBYDは世界を獲れた?「BYD・テスラ・VW」3車分解比較で判明、圧倒的コスパの秘密」(https://www.sbbit.jp/article/st/134787)という記事を書きました。これがYahoo!ニュースに転載をされ、たくさんの方からコメントをいただくことになりました。

その多くは「学びがあった」という好意的なもので、コメントをしてくださった方にはお礼を申し上げたいと思います。とても励みになります。

一方、批判的な意見もありました。その多くが「EVはもうオワコンになっているのに、この筆者は知らないのか?」というものです。EVの普及が踊り場に差し掛かっているのは事実ですが、「EVは失敗だった、終わった」というのはかなり極端な見方で、そう考えている人が多いことにかなり驚きました。

個人としてEVを選択するかどうかはまったくの自由です。EVが嫌だという人は燃料車やハイブリッド(HEV、PHEV)を買えばいいだけです。しかし、メディアまで「EVは失敗だった」と書き始めたことに二度驚きました。

例えば、「【言わんこっちゃない!】世界でEVの逆回転始まる!中国の弱点を攻めるトヨタの粘り勝ち」(https://carview.yahoo.co.jp/article/detail/722dd48536e4d8e7aa4b2ce62fedc5feb66bb89f/?page=4)などという記事もあります。

 

EVがオワコン、失敗と感じている方々は次のような事実を根拠にしているようです。

1)欧州市場において、ハイブリッド(HEV)の伸び率がEVの伸び率を上回った。

2)米国市場において、HEVがEVの販売台数を抜いた。

3)これによりトヨタのHEVが売れ、過去最高益を記録した。

4)1月、シカゴに寒波が襲来し、充電器が凍結し、多数のテスラ車が充電できず立ち往生した。

5)メルセデスベンツが2030年以降も燃料車を開発、販売すると方針転換した。

6)アップルがEVの開発を断念した。

 

欧州でEVの伸び率が鈍化をしたのは当然です。9月にはフランスでEV補助金の対象車の条件が厳格化されました。国内メーカーを守るため、中国EVを補助金対象から外すための措置だと言われています。また、12月にはドイツで補助金が1年前倒しで終了しました。補助金予算を新型コロナ対策費から支出していたことが、憲法裁判所によって違憲だと判断されたためです。

補助金が少なくなれば実質価格が高くなるのですから、伸び率が鈍化するのは当然です。それでもEVは前年よりも伸びているのです。あくまでも伸び率鈍化です。EU各国は新たなEV促進の枠組みを構築しなければならなくなっています。

 

アップルが自動車製造プロジェクト「タイタン」を放棄しましたが、「EVが売れていないから」という理由づけは、かなりピント外れの見方です。アップルがつくる自動車は、コアファンに向けた高級車になるはずで、EVが売れていようが売れていまいが、アップルカーの売れ行きにはほとんど影響しません。

2015年、腕時計をしない人が増える傾向が進んでいる時代に、アップルはアップルウォッチを発売しました。そして、腕時計としては驚異的な売れ行きを示しました。アップルウォッチは腕時計の形をしていますが、腕時計とは別物で、それがアップルのねらいなのです。アップルカーも同じように、EVには見えるけど、EVとはまったく別物という線をねらっていたはずです。「EVが売れていないからやめよう」などという発想はしないと思います。

 

アップルのタイタンプロジェクトはベールに包まれていて、その中身は誰にもわかりませんし、断念をした理由も誰もわかりません。しかし、報道から推測すると、EVということよりも自動運転の開発に行き詰まりを感じたようです。ティム・クックCEOは「自動運転技術が最も重要な根幹の技術であり、すべての人工知能プロジェクトの母だ」とコメントしたことがあります。つまり、アップルはアップルカーでAI人材を獲得し、そこからさまざまなAIプロジェクトを派生させようと考えていたようです。

アップルがやるのであれば、ハンドルもペダルもない、L5完全自動運転を目指したはずです。車というより、動く部屋でなければインパクトがありません。しかし、L5自動運転は技術的に無理なのではないかという見方が一般的になってきています。L5自動運転は砂漠やジャングルといったオフロードでも自動運転走行できなければなりません。オート三輪や歩行者が交通法規も守らずに飛び出してくる中国やインドの裏町も自動運転走行できなければなりません。あらゆる環境に対応できる完全自動運転というのは無理なのではないかと考えられるようになっています。

一方、「条件つき自動運転」であるL4はすでに実現できています。例えば、高速道路だけであるとか、キャンパスやマンション、公園などの閉鎖区域内であるとかです。また、シャトルバスのように固定ルートを走行する場合も実現できています。あらかじめ道路条件が限定できるため、ハンドルをなくした完全自動運転ができるわけです。

おそらく、アップルはここを悩んだのではないでしょうか。アップルカーが、遊園地の乗り物のように限定された区域しか走行できないものになるのか。どこでも走れるようにしようとするとハンドルをつける必要がある。どっちを選ぶべきなのかという議論が内部でされていたことでしょう。実際、断念報道の前には、L5自動運転を放棄して、テスラやファーウェイと同じL2+自動運転(人間が運転の主体となる自動運転)に方針転換をするのではないかという観測報道もありました。しかし、ハンドルとペダルがある一般的な自動車では、アップルのブランドイメージやミッションにそぐわないのだと思います。そこに莫大な資金を投じることは意味があるのかという話になり、だったら、最初から現実性のあるAIプロジェクトに直接投資をした方がいいということになったのではないかと思います。アップルが断念をしたのは完全自動運転であって、EVであるかどうかは問題ではなかったと思います。

 

EVの欠点と言われているのは次のようなものです。

1)充電ステーションが少なくて充電できない

2)航続距離が短い

3)火力発電でつくった電気で走ってもエコじゃない

4)充電に時間がかかる

5)寒冷地では出力が落ちて使い物にならない

6)自然発火をするので危険

7)バッテリーが劣化をしてエコじゃない

8)製造とリサイクルの過程で大量の二酸化炭素を排出するのでエコじゃない

 

EVにはこのような問題があるのは事実ですが、EV先進国(もはやそう言っていいかと思います)である中国では、すでにこのような課題に対して克服されつつあります。簡単に言えば、「EVはオワコン」とおっしゃっている方は、5年くらい前のEVの状況に基づいて「EVは使えない」と判断してしまっています。

では、中国ではどのように克服をしているのでしょうか。今回は、中国EVで、どのような技術や工夫が行われているのかをご紹介します。

 

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