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突然、速度があがらなくなる新エネルギー車の失速問題。なぜ、速度があがらなくなるのか、その2つの理由

SNSなどで、NEVの走行中、速度があがらなくなる失速問題を報告する人が増えている。失速が起こる原因は2つあり、そのひとつはソフトウェアの問題だ。今や、車の品質にとってソフトウェアの品質が大きな比重を占めてきていると巴渝車世界が報じた。

 

NEVに起こる速度があがらなくなる失速問題

新エネルギー車(NEV)が高速道路を走行中に、突然スピードが出なくなる「失速問題」の報告が相次いでいる。PHEV(Plug-in Hybrid、プラグインハイブリッド)、REEV(Range Extender、レンジエクステンダー)で見られる現象で、特にREEVでの報告が多い。

その報告とは次のようなものだ。「高速道路を100km少しで走っていたら、突然速度が下がり、どうやっても75kmぐらいしか出なくなった。車を再起動して、数時間かけて満充電にしたが、どうやっても速度が出ない。10月の末に買ったばかりで1300km程度しか走っていないのに問題が発生した。みなさんにも、車を買うときは慎重に確かめることをお勧めします」。

▲ある人は、SNSで、高速道路でどうやっても75kmまでしか速度があがらなくなる現象を報告した。

 

充電が間に合わなくなることから起こる

この問題が発生する理由は2つある。問題が発生するのはPHEVとREEVで、特にREEVが多い。いずれも、バッテリー走行を主体としているが、エンジンも搭載し、バッテリー残量が少なくなるとエンジンが発電機を回して充電をする仕組みを持っている。これによりPHEVとREEVは、ガソリンを入れておけば、バッテリー切れを心配することなく走り続けられるというのが魅力になっている。

しかし、特にREEVの場合、エンジンは発電にしか使わないため、発電能力は低めになっている。多くのREEVでは、駆動モーターは330kW程度、エンジンによる発電機は110kW程度の出力になっている。駆動モーターは常に最高出力を出しているわけではないので、これでもじゅうぶんに充電ができていくが、高速道路のように最高出力に近い走行を長時間続けると、充電量が使用量に追いつけなくなる。そうなると、失速が起きることになる。

▲失速が起こると、EV機能が制限されているというアラートが出て、速度があがらなくなる。

 

簡単ではないバッテリー残量の推定

もうひとつはソフトウェアの問題だ。NEVの動力はソフトウェアによって制御されている。このソフトウェアに問題があると失速が起きることがある。

特に重要なのが、バッテリー残量の推定だ。バッテリー残量を正確に知る方法はなく、さまざまな出力データから推定をするため、ある程度の誤差が生まれる。多くの人にとってバッテリー残量は20%なのか50%なのか程度がわかればじゅうぶんなので、実用上の問題は生じない。

ところが、ソフトウェアによっては、この誤差が蓄積していき、実際のバッテリー残量と大きな差が生まれてしまうことがある。表示上は残量30%となっていても、実際は5%程度しか残っていないということが起こってしまう。

こうなると、NEVは走行しようとするが、駆動モーターにじゅうぶんな電力が供給されずに失速が起きてしまうことになる。

▲REEV(レンジエクステンダー)の仕組み。バッテリーが搭載され、走行はバッテリー駆動で行われるが、エンジンも搭載され、エンジンにより発電機が回され、充電をする。ガソリンを入れれば、航続距離を気にすることなく走ることができる。

 

車の品質=ソフトウェアの品質

車の品質というと、ボディーや操作系統、駆動系統などのメカニカルなものを思い浮かべてしまうが、NEVは高度に電子化されているため、もはや品質の多くはソフトウェアの品質になっている。そのため、多くの専門家はソフトウェア技術のあるメーカーの車を購入することを勧めている。

しかし、一般の消費者にとって、メーカーのソフトウェアの実力を評価することは簡単ではない。結局、「評判のいいメーカー」というざっくりとした見方で選ぶしかない。ソフトウェアに関しても、客観的な基準で評価をし、消費者にわかりやすく提示する仕組みが求められている。

消費者は今のところ、こまめに充電をして、バッテリー残量が少ない状態で走行しないように心がけるしか対策がない状況だ。