1話数分で50話、100話連続するマイクロドラマがブームとなっている。ヒット作も出る一方、粗製濫造も目につくようになり、一過性のブームで終わってしまうのではないかという見方も出てきていると極目新聞が報じた。
マイクロドラマ撮影のメッカとなった横店影視城
微短劇(マイクロドラマまたはショートドラマ)のブームが過熱状態となっている。春節期間、ショートムービープラットフォーム「抖音」(ドウイン)では、ショートドラマの累計視聴回数が8億回を超えた。これまでの累積で視聴回数1億回を超えたマイクロドラマも8本となった。今年2024年1月に、国家広播電視総局が審査を通したマイクロドラマは297本にものぼった。
このような撮影の基地となっているのが、世界最大とも言われる映画スタジオ「横店影視城」だ。浙江省金華市に横店集団が設立した映画スタジオで、総面積は330ha(東京ドーム70個分)で、中には王宮がまるごと再現されている。チャン・イーモウ監督やジャッキー・チェンなどもこのスタジオを使って映画を撮影したことがある。
この横店影視城に2023年9月にマイクロドラマ専門のスタジオビルがオープンしている。このビルは、すでに1000以上の撮影チームが利用しているという。金華市では、周囲の農村の住民が、撮影のエキストラ俳優を務めるアルバイトが人気となっているが、今年に入ってからエキストラ不足まで起きているという。
テレビよりも面白い中毒性のあるマイクロドラマ
マイクロドラマはなぜ人気があるのか。1話は1分か2分で、それが50話、100話と続く。10話ぐらいまでは無料で、それ以降は課金が必要となるため、ついつい見てしまうという。また、映画やテレビドラマと異なり、縦動画であることから、暇な時間に1話、2話を気軽に見てしまい、続きが気になって見続けてしまうようだ。
内容も刺激的だ。暴力、復讐、血飛沫、犯罪、性表現などが盛り込まれるのが常識になっている。
このような刺激的な表現は、テレビドラマでは厳しい制限があるが、誰でも見られるテレビドラマとは異なり、課金をするために年齢ゾーニングがしやすいマイクロドラマでは、このような制限も緩やかになる。テレビでは見られない表現があることが魅力のひとつになっている。
また、1話1分程度といっても、優れた製作者はその中で必ず逆転を入れ、最後の10秒は必ず次に続くサスペンス要素を入れる。全体を通して見れば、ありふれたストーリーかもしれないが、演出のうまさにより次を見たくなり、また次が見たくなる。批判的な人は、精神的な興奮剤にすぎないという人もいる。
コロナ禍で仕事を失ったクリエイターには福音
しかし、このブームが続き、ひとつの娯楽ジャンルとして定着するのかについてはさまざまな見方がある。マイクロドラマが、映画やドラマ関係者にとって福音になっていることは確かだ。コロナ禍で撮影ができなくなり、多くの人が生活費を稼ぐことすら難しくなってしまった。そこに、小さな予算で、当たれば大きいマイクロドラマに業界は久々に沸いている。
撮影は100話程度を1週間で撮影してしまうのが標準だ。スタジオのレンタル代を節約するためだ。そのため、昼夜ぶっ通しの24時間体制で撮影をする。スタッフはスタジオ内で仮眠をとり、とにかく撮影を早く終わらせる。
また、盗作とは言えないものの、似ているストーリーが大量に登場するのも特徴だ。ひとつヒット作が出ると、すぐにそのまがい物のようなマイクロドラマが大量生産される。マイクロドラマの撮影には、有名な監督も参入しているが、名前を隠している例もあるという。これが自分の作品リストに加わると、監督としての経歴に傷がついてしまうと考えられているようだ。
ヒットするのは10本に1本。娯楽として定着をするか
マイクロドラマ業界では「一九の法則」ということが言われるようになっている。10本制作したら、ヒットするのは1本で、9本は赤字というもので、1本の黒字で9本を補填する。
マイクロドラマはお金を稼ぐことが目的となっているため、消費者を騙すようなマイクロドラマも目につくようになってきた。「9.9元で残りのドラマをすべてアンロック」という表示が出て9.9元を支払ったら、20話ほど見たところで、「ここから先は168元の支払いが必要」という表示が出るなど、騙すようなものもあり、視聴者からの苦情も増え始めている。
マイクロドラマがお金を稼ぎやすい娯楽商品になっていることは間違いない。しかし、それだけに粗製濫造が進んで、いつか飽きられてしまうのではないかと不安視する人もいる。そのため、業界内にはガイドラインを設けようという動きもあるようだ。マイクロドラマが娯楽のひとつのジャンルとして定着するかどうか、あるいは消えてしまうのか、大事な時期を迎えている。