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マトリクスアカウントとは何か。店舗アカウントからの発信で、集客力を向上させる

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今回は、マトリクスアカウントについてご紹介します。

 

マトリクスアカウントとは「矩陣号」(ジュージェンハオ)という機能のことで、行列アカウントと訳されることもあるようです。矩陣というのは、数学の行列の中国での呼び方です。しかし、マトリクスアカウントという言い方がいちばん理解しやすいと思われるため、この記事ではマトリクスという言葉を使います。抖音で盛んに使われる機能であるため、その国際版であるTikTokにも実装される可能性はあります。アカウントの流量を増やし、ファン数を獲得することができるばかりでなく、中国ではチェーン店舗がマトリクスアカウントを運営に利用する例が増え始めています。

 

ツイッターやインスタグラム、TikTokなどで、ブランドの公式アカウントを設置する場合、それを複数人で共有するということはごく普通に行われています。一人でアカウント管理することは難しく、複数人のチームでコンテンツをつくっていく必要があるからです。

このような時、一般的に行われるのが、IDとパスワードを共有するという方法です。3人のチームでひとつの公式アカウントを運用する時、IDとパスワードを3人で共有し、3人の誰もがアクセスできるようにするのが一般的です。

しかし、このようなやり方には、さまざまな問題があります。ひとつはSNSのアカウントというのは本来は個人に紐付けをされるため、ログインに携帯電話の番号を利用することが増えていることです。例えば、ログインしようとすると、登録をしてある携帯電話番号に検証コードがショートメッセージで送られ、それを入力する必要があるという二要素認証も増えてきました。このような場合は、メインで管理している人に連絡をとり、検証コードを教えてもらうか、そもそも二要素認証を使わない設定にしておく必要があります。

もうひとつはパスワードが流出する危険性がつきまとうということです。関係者が互いによく知っている少人数であればともかく、あまり話をしたこともない別の部署の人とも共有しなければならない状態だと、誰がどう管理しているかわからず、流出の危険がつきまといます。ブランドの公式アカウントの場合、乗っ取りを受けて、反社会的なメッセージでも発信されたら、ブランドに傷がつくという大問題になります。

そのため、公式アカウントの共有パスワードは毎月変えるのが鉄則で、なおかつ主要メンバーに伝えなくても推測できるものにする必要があります。例えば、ツイッターのパスワードであれば、基本になるキーワードを決めておき、そのキーワードがtigerであれば、23年3月分は、twi+wc+tiger+2303とつくり、twiwctiger2303とします。wcというのは23番目のアルファベット、3番目のアルファベットで年月を表しています。これであれば、23年4月のパスワードは教えてもらえなくてもtwiwdtiger2304となることがわかり、いちいちメールなどで連絡しなくても済むことになります。

文字と数字の両方で年月日を入れておくことがミソです。このパスワードを盗んだ人物は4月になってパスワードが変えられていることを知ると、最後の2303が年月を表しているのだと見て、twiwctiger2304というパスワードを入れてみますが、wcのところが間違っているために弾かれます。なかなかwcが年月を表しているとは気がつかれません。

同じようにインスタグラムも共同管理をしているのであれば、inswctiger2303とパスワードがつくれます。

もちろん、パスワードのつくり方まで知られてしまうと意味はなくなりますが、毎月変える、新パスワードをやりとりしない、知らない人には推測ができないという要素を入れることでアカウントが乗っ取られる確率を下げることができます。

 

本来は、子アカウントがつくれればいちばんいいのです。公式アカウントの下に子アカウントがA、B、Cと3つあり、創作チームの3人がそれぞれにIDとパスワードを決めてアクセスをして投稿する。利用者からはどの子アカウントから投稿をしても、公式アカウントに投稿されたように見えます。

これは管理の利便性だけの問題ではありません。インプレッションやリツート数などの計測をするときも、子アカウント別に表示をされれば、非常に解析がしやすくなります。現在は、A、B、Cの誰が投稿しても、公式アカウント全体としての計測しかできないため、解析データを手動またはスクリプトをつくって投稿者別に分類整理して再集計しなければなりません。

コンテンツを創作するスタッフが複数いる場合、スタッフ別に解析を行い、どのような投稿が受けるのかを考え続けることはきわめて重要なことです。1つのアカウントを共有する方式だと、このような解析もやりづらくなります。

 

なぜか、ツイッターやインスタグラムといったSNSは、こういうビジネスユースの対応をしてくれません。ツイッターの場合は、TweetDeckを使えばひとつのアカウントを複数人で共同管理することができる機能が使えますが、ツイッター自体が仕様をさまざまに変えていて、TweetDeckが今後も利用できるかどうかが不鮮明です。きちんとビジネスアカウントに対応しているのは、日本ではLINEぐらいです。

中国では、このような複数人でひとつのアカウントを共同して利用する仕組みを提供しているのが原則です。抖音だけでなく、当然ながらWeChatの公衆号(企業公式アカウント)、快手(クワイショウ)、小紅書(シャオホンシュー)といった種草(コンテンツに商品タグを直接貼り付けることができる)系のSNSでは常識になっています。

このようなひとつのアカウントを共有する仕組みがマトリクスアカウントです。今回はこのマトリクスアカウントを使うとどのようなメリットがあるのか、そして実際にマトリクスアカウントを利用してチェーン運営をしている例をご紹介します。

 

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