中国科学院の古脊椎動物・古人類研究所は、化石を3Dモデル化するソフトウェア「媧魚」(Vayu 1.0)を開発し、無料で公開をした。古生物研究を加速させることになると中国新聞網が報じた。
古生物研究でも求められるデジタル可視化
開発をしたチームのリーダー、盧静研究員によると、古生物の世界でもデジタルデータ化と可視化は必須になってきている。X線やCTスキャンによるデータをデータとして扱うのではなく、高い精度で可視化をし表現をする必要が出てきている。時代が変わり、学問は学者の間だけで共有するのではなく、一般市民とも共有し、特に子どもたちに科学普及教育を行うのが学者の大きな使命のひとつとして考えられるようになってきているからだ。
医療分野の3D可視化ソフトは化石には向かない
すでに医学や建築などの分野で、スキャンデータを3Dモデル化するソフトウェアはたくさんある。しかし、それぞれの分野に特化をしたもので、化石の3Dモデリングに向いているとは言えない。このようなソフトウェアは、古生物学者にとっては操作が複雑で、特別な工夫をしないと化石のモデリングには利用できないのだ。このような操作や工夫は、古生物学者本来のスキルとは無関係で、大量の化石をモデリングしたいという場合に大きな障害になっていた。
化石の可視化専用ソフトウェア
このような問題を解決するために、盧静研究員のチームは化石専用の3Dモデリングツール「Vayu 1.0」を開発し、無償で公開をした。化石や生物の3Dモデリングに特化されており、古生物学だけでなく、考古学、生命科学、医学などの分野でも利用できるという。
また、3Dモデリングをするだけでなく、必要な着色をして動画を作成するところまでが自動化されている。研究分野だけでなく、博物館の展示、学校での科学普及教育、SNSのショートムービーでのプレゼンテーションなどにも利用できる。
配布は、中国科学院の英文ページ(http://admorph.ivpp.ac.cn/download.html)から行われる。また、技術詳細は「古脊椎動物学報」に論文「Vayu 1.0, a new set of tools for visualizing surface meshes」として発表されている。