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エアコン、空気清浄機完備の26建てのマンション。住人は60万頭の豚たち。高層自動化養豚場が中国の食卓を救う

湖北省鄂州市に26階建ての養豚場が出現した。総面積は80万平米となり、中国で最大の養豚場となる。建設費は40億元で、毎年120万頭の豚を出荷することができると毎日経済新聞が報じた。

 

26階建ての高層豚舎が出現

この26階建ての養豚場を建設したのは、畜産企業「中新開維現代牧業」。豚舎は2棟あり、1つの豚舎で毎年60万頭、合わせて年間120万頭の豚を出荷することができる。

豚は地下1階に搬入され、そこから6基用意されているエレベーターで、目的の階に運ばれる。エレベーターは16平米という広いもので、最大積載量は10トン。豚が1頭240kgだとすると70頭ほどが運べるが、安全を考えて40頭ずつ運ぶのだという。

▲中新開維現代牧業が建設した26階建ての豚舎。2棟目もすでに稼働している。合計で毎年120万頭の豚を出荷できるようになる。

▲豚は地下1階に搬入され、そこから専用エレベーターで目的階に移動する。

 

中国で進む豚舎の高層化

豚の飼育場は、エアコンが完備されており、夏、冬ともに気温は一定になっている。また、空気清浄機も完備され、空気は澄んでいる。飼料などの作業も完全自動化している。

養豚場は不要になった工業用地を利用しており、平屋方式の一般の養豚場に比べて、20倍の土地利用効率を実現している。

このような高層の養豚場は、中新開維現代牧業だけでなく、牧原、新希望、温氏、唐人神、夢牛山、京基智農などの大手畜産企業が始めている。2020年には、四川省で新希望が5階建ての養豚場の建設を2.7億元で行い、母豚6750頭、育成豚4.8万頭、年間16万頭の子豚の出産を行い、年間10万頭の豚を出荷している。

牧原も河南省で高層養豚場のテスト運用を始め、2022年3月には、牧原全体で300万頭の豚を出荷するようになっている。

新希望は、山東省、河北省、浙江省などに10カ所以上の高層養豚場の建設を始めており、種豚8万頭、育成豚24万頭規模にする計画だ。

▲最終的には豚舎を5つ+繁殖施設に増やす計画を立てている。

 

すべてが自動化されたクリーンな養豚場

中新開維現代牧業は、最終的に豚舎を5つに増やす計画で、現在は2棟の豚舎が稼働をしている。5つすべての豚舎が稼働するようになると、年間300万頭の豚を出荷できるようになるという。

豚舎での作業もほぼ自動化をされている。DCS(分散型制御システム)による自動化が行われ、豚舎内には3万点以上の制御ポイントがあり、給餌は自動化をされている。さらに、温度、湿度、通気、有毒ガス濃度をリアルタイムでモニターし、エアコンの調整や集中消毒などがリモートで行えるようになっている。

地下一階には汚水処理システムが設置され、糞などを清掃した汚水を浄化してから、外部の下水に流すようになっている。この作業を自動化するために、養豚場にはわずかな傾斜が設けられており、水が自動的に流れるようにしている。

▲養豚場は、エアコン、空気清浄機完備で太陽光も入る良好な環境。給餌、清掃などの作業は自動化をされている。

▲DCSが導入されているため、豚舎の管理はすべて制御室から行えるようになっている。現場作業は種付け、出産などの繁殖関係のみになる。

 

300人のスタッフで年間60万頭の生産効率

このような自動化が進んでいるため、作業スタッフは各階10人から12人で運営ができるようになっている。そのスタッフの作業もほとんどは種豚の種付けと子豚の出産だ。1棟で300人程度のスタッフで年間60万頭の豚を出荷できることになる。

▲一般的な豚舎。人手が基本であるためにどうしても衛生的な問題が生じる。近年では豚舎が迷惑施設として認識をされるようになり、建設できる場所がどんどん限られるようになっている。

 

近隣苦情により通常の養豚施設は増やせない

高層化することにより、スペースに余裕ができたため、豚の運動場を設置することが可能になった。特に妊娠中の母豚にとっては運動が重要で、豚の健康に寄与すると言われている音楽が流れる中で、母豚は自由に歩き回り運動をし、健康な子豚を産むことができるようになる。運動をじゅうぶんにした母豚は、難産になるリスクが大きく減り、苦しむことが少なくなる。運営企業としても、生産効率があがることになる。

また、通気も完全に制御されているため、不快なにおいが外に出ることがなく、近所からの苦情も出づらい。世界的に豚肉の価格が高騰し、中国の豚肉消費量もあがり続けている。豚舎は迷惑施設となっていて、新規に豚舎を増やすことも難しくなってきている。その中で、高層、自動化豚舎は、豚肉不足を解消する大きな決め手になる。