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今回は、種草経済についてご紹介します。
「種草」(ジョンツァオ)とは、種まき、作付けといった意味です。この場合、「種」は動詞で「植える」の意味、草は植物、作物のことです。田んぼに稲の苗を植えていくようなイメージです。
ネットで使われる種草という言葉が意味するのは、SNSやショートムービーを使って商品やサービス、ブランドの宣伝、露出をすることを言います。いずれの場合も、SNSプラットフォームが持つ拡散力を利用して、その商品やサービスの情報を必要としている人に到達するのが目的です。
マスメディアの場合、視聴者のうち誰がその商品やサービスを欲しているかはわからないので、全員を網羅するような形で情報を届けます。そのため、コストがかかり、コンバージョン(購入率)は非常に低いものになります。一方、SNSやショートムービーではその商品やサービスを必要としている可能性が高い人にソーシャルマップ経由で拡散をするため、低コストで高いコンバージョンが期待できます。
このようなことは、日本でもツイッターやインスタグラムの公式アカウントなどでごく当たり前に行われています。このような商品、サービス、ブランドの情報を拡散すること全般が「種草」と呼ばれますが、これは広義の種草です。
一方、狭義の種草とは、ショートムービーやSNSの投稿に商品タグを埋め込み、直接購入や資料請求などに結びつけることです。公式アカウントが直接行うこともあれば、アフィリエイト広告のような仕組みを利用して、一般の投稿主に商品タグを埋め込んでもらうこともあります。
このような仕組みがどこで始まったのかは定かではありません。しかし、はっきりと種草が利用されるようになったのは、SNSの「小紅書」(シャオホンシュー、RED)です。小紅書はインスタグラムとよく似ていて、テキスト、写真、ムービーなどを投稿することができ、気に入った投稿主をフォローすることで、その人の投稿が自分のタイムラインに表示されるようになります。その投稿の中には商品を紹介したものも多く、タグをタップすると、商品の購入ページや、小紅書内のショップのページに飛べるようになっています。
小紅書がこのような種草で成果をあげたため、ショートムービーの「抖音」(ドウイン)、「快手」(クワイショウ)なども取り入れ、大きな流通総額を獲得するようになりました。
現在のところ、種草が盛んなのは、小紅書、抖音、快手の3つで、種草経済と呼ばれるようになっています。
この種草の仕組みはバナー広告の進化系です。バナー広告は、ウェブの空きスペースなどに表示される画像で、クリックをすると、商品購入ページや資料請求ページなどのいわゆるランディングページに飛ぶというものです。
しかし、スマートフォンがネットデバイスの中心になると、バナー広告は使い勝手が悪くなりました。スマホの画面は狭いので、バナー広告を入れるスペースを確保しづらいのです。それでも無理にバナー広告を入れると、ウェブの表示スペースが削られ、ユーザー体験が悪くなります。そのため、アプリ開発者、モバイルウェブ開発者は、どこにバナー広告スペースを取るかで苦労をしています。
一方、種草では記事そのものが広告のようなものなので、広告スペースの場所を考える必要はありません。その代わり、記事の内容を考える必要があります。
例えば、次のリンクは、小紅書の欧陽娜娜(オーヤン・ナナ)の小紅書です。
欧陽娜娜は台北出身のチェリストですが、父は元俳優で台北市議会議員、母は女優、姉も女優、妹はバイオリニストという有名一家で、日本でも活躍した歌手の欧陽菲菲(オーヤン・フィーフィー)は叔母にあたります。
このリンクからは投稿のごく一部しか閲覧できませんが、小紅書アプリで見ると、すでに340以上の投稿がされていて、860万人以上のフォロワーを獲得しています。いわゆる網紅(ワンホン=インフルエンサー)の一人です。
彼女の投稿は、「帰ってきたよ」という言葉から始まるのがパターンになっていて、忙しく活動をして、自宅に帰ってきた時に「今日はこんなことがあった」「こんな面白いグッズを見つけた」と紹介する内容になっています。その中に、だいたい全体の1割から2割ぐらいに、商品タグが埋め込まれているものがあります。タップをすると、化粧品などのメーカーの小紅書アカウントのホームに飛ぶという仕掛けです。
もちろん、メーカーから依頼を受けて報酬をもらって紹介をしているわけです。普段、化粧品、食べ物、ファッション、音楽などの話題が多いので、その中に化粧品の種草記事があっても違和感はありません。また、多くの網紅が依頼をされたらなんでも紹介するのではなく、自分のキャラクターと適合するかどうか、紹介しても自分のキャラクターに傷がつかないかを考えます。
小紅書だけでなく、ショートムービープラットフォームなどでも、このような販売業者と網紅のマッチングプラットフォームを用意していて、そこで網紅のファン層の構成などを見て、販売業者が依頼をし、条件などを打ち合わせて、種草が成立します。
種草により、商品が売れると、その利益は三者で分け合うことになります。
1)販売業者:商品が売れれば利益があがります。
2)プラットフォーム:小紅書などのプラットフォームは販売手数料を徴収し、重要な収入源になっています。
3)投稿主:投稿主にも手数料が配分されます。トップクラスの網紅になると、大量に商品を販売することで莫大な手数料を稼ぎ出します。
このような種草経済が広がっているのは、網紅だけではありません。ごく普通の人でも工夫をすることで人気の投稿主となり、手数料収入で生活をしていけるようになります。そのため、投稿の収益化を図ろうとする人は山ほどいて、そのような人に収益化手法を教えるオンラインセミナー、スクールなども山ほどあります。
このようなSNSなどを使った販促活動というと、「インフルエンサーの起用」ばかりに目がいきますが、力のあるインフルエンサーはそれなりの有利な条件での契約を求めてくるため、数は売れても利益が上がらないということも起こります。そこで、各企業が注目をし始めているのが、このような普通の人々です。マイクロインフルエンサーやKOC(Key Opinion Comsumer、影響力のある消費者)と呼ばれます。種草経済では、このようなKOCをどのように活用していくかが大きなテーマになっています。
今回は、小紅書を中心とした種草経済についてご紹介をします。
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