ファーウェイの利益は600億元で、テンセントの利益は1590億元と2.5倍になる。しかし、納税額はファーウェイが1000億元、テンセントは200億元と少ない。テンセントはなぜ納税額が少ないのか。それはタックスヘイブンであるケイマンに登記をしているからだと華夏時報が報じた。
利益は少ないのに税金をたくさん払っているファーウェイ
中国のビッグテックの中で、騰訊(テンセント)の2020年の売上は4820億元。一方、華為(ファーウェイ)は8900億元とテンセントの2倍ほどある。ところが、利益を見ると、テンセントは1590億元もあるのに、ファーウェイは600億元しかない。ファーウェイはたくさん稼いでも利益は小さいということになる。
しかも不思議なことに、納税額を見ると、テンセントは200億元程度であるのに、ファーウェイは1000億元程度を納税している。ファーウェイは大きな売上を上げているのに利は薄く、なおかつ税金をたくさん払っている。テンセントは売上は小さくても、大きな利益を出し、税金は少ししか払わない。なぜ、このような差がつくのだろうか。
利益率の違いは商品の違いによる
利益率が大きく異なるのは、テンセントがネット企業、ファーウェイがハードウェア企業であるという違いによるものだ。ハードウェアは、1台製造して1台売ってようやく利益が出る。ヒット商品となり、1億台が売れても、1億台を製造しなければならない。一方、テンセントはゲームとネット広告が主要なビジネスで、ゲームは1本つくって、それがヒットすれば、その1本を何億人もの人が遊ぶことができる。これにより、ヒットゲームをもつテンセントは、大きな利益をあげることができている。
納税額の違いはタックスヘイブン
納税額に違いが出る根本的な理由は、本社の登記場所だ。ファーウェイは本社のある深圳市坂田基地が登記地だが、テンセントは本社は深圳市にあるものの、登記上の場所はタックスヘイブンであるケイマン諸島になっている。このため、登記料程度しか支払う必要がなく、大きな節税ができている。これにより、テンセントの実質的な納税額は低く抑えられている。
タックスヘイブンに登記をし、税金を節約している。これは中国人にとって、背信行為に映らないのだろうか。それを指摘する人は少なく、アリババを始めとする多くのネット企業がタックスヘイブンを登記地にしている。中国のネット産業は、商務部が定める「外商投資産業指導目録」(ネガティブリスト)の禁止類に指定をされている。つまり、外国人が株主になることができない。ネット企業が集めた個人情報などが、外国人株主の手にわたることは情報の安全保障上大きな問題になるからだ。
しかし、タックスヘイブンに登記をした企業は、国際企業となり、外国人が自由に株主になることができる。一方、このケイマン諸島の会社とテンセントの国内の事業会社は契約により事実上の子会社化をされているため、契約によって利益は移転できるものの、中国政府が気にする個人情報に関しては、国際企業には渡らないようになっている。
海外のお金で国内のインフラを構築した中国
このような統治方式=VIEスキーム(変動持分事業体)をとることで、海外の資金を導入して中国国内でビジネスを展開し、同時に個人情報に関しては中国国内から外に出さないということが可能になる。
これは中国人の目から見ると、「外国人のお金を使って、中国でビジネスを成長させる」ということになる。テンセントも納税額は少ないものの、別の形で中国社会に貢献をしていると感じている人が多い。
テンセントは従業員数だけでも7万人いる。それだけの雇用を生み出していることだけでも、中国社会に大きく貢献している。
ただし、その見方も変わり始めている。テック企業が成熟をすると、今度は「国内のビジネスで得られた利益が外国人に渡っている」ということになるからだ。中国政府は、VIEスキームについても問題視をし始めていて、今後規制が厳しくなっていくものと見られている。