中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

BATがBATである理由。トラフィック制御からの視点

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明日、vol. 033が発行になります。

 

中国のビジネスやテックに関心がある方であればBATという言葉はご存知だと思います。米国のテックジャイアントを表すGAFAと同じように、中国のテックジャイアントを表す言葉です。

Bは百度バイドゥ、Baidu)、Aはアリババ、Tはテンセントを表しています。この3社は、中国インターネット協会と中国工信部が毎年発表している「中国IT企業100強ランキング」の1位から3位を占めています。

ただし、このBATという言い方はもはや適切ではないという意見も増えてきています。ひとつは百度が近年売り上げを落として、新たな事業の柱である人工知能がまだまだ収益が得られる段階に達していないことから、BATのBを消すべきではないかという人もいます。

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▲中国インターネット教会が毎年発表している中国IT企業100強ランキング。BATが常に上位3位を独占し続けてきた。アントフィナンシャルはアリペイを運営するアリババ傘下の企業。

 

また、多くの方がお気づきだと思いますが、ファーウェイ(Huawei)がこのランキングには入っていません。ファーウェイはあくまで製造業であるということと、未上場であるためにランキングから除外されているのです。ところが、売上高で見ると、2019年の売上ではファーウェイは8588億元(約13.2兆円)もあります。これはBAT3社の合計とほぼ同じなのです。

ファーウェイは通信設備、電子機器などのメーカーなので、IT企業、ネット企業と言われると少しずれますが、テクノロジー企業であることには間違いありません。そうすると、BATよりも巨大なジャイアントであると言えます。そこから、BATではなくHATという言葉を使うべきだと言う人もいます。

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▲ファーウェイの売上高は圧倒的。BAT3社の合計に匹敵する。しかし、ファーウェイは製造販売であり、投資は内部に向けて研究投資をする。独自性が強い。BATという言葉は、単なる企業規模だけで使われている言葉ではないのだ。

 

また、最近では、BATの地位を脅かす存在としてTMDという言葉も使われるようになっています。Tはバイトダンス(最初の成功したアプリ「今日頭条」=toutiaoからTと呼ばれます)、Mは美団(Meituan)、Dは滴滴出行(Didi)です。さらに、Tik Tokを擁するバイトダンスの成長が著しいことから、BATのBはバイトダンスに入れ替えるべきだと言う人もいます。

 

つまり、BATが必ずしも中国テック企業の3強というわけでもなくなってきているのです。それでも、中国のテック企業を理解するにはBATを中心に考える必要があります。

なぜなら、BATを中心に戦略提携が行われ、その他のテック企業の多くが「アリババ系」「テンセント系」「百度系」に分類できるからです。

例えば、2014年にはタクシー配車の「滴滴」と「快的」の2社がシェアをめぐって激しいクーポン合戦を繰り広げました。一時期は、クーポンを利用すると実質無料でタクシーに乗れるようになってしまい、近所のスーパーに買い物に行くのにもタクシーを利用するというという人まで現れたほどです。

滴滴はテンセントの投資を受け、快的はアリババの投資を受けていました。2社は潤沢な資金を活かして、赤字覚悟の大盤振る舞いをしました。

2015年には、外売(フードデリバリー)の「ウーラマ」と「美団」が激しいクーポン合戦を行いました。ウーラマはアリババの投資資金を受け、美団はテンセントの投資資金を受けています。ここに百度百度外売が加わり、激しい消耗戦を繰り広げました。

つまり、中国で新しいサービスが熾烈な新顧客獲得合戦をする時には、多くの場合、BATの巨額資金が流れ込んでいるのです。その意味で、BATはやはり中国のテックビジネスを動かしている存在なのです。

 

BATが重要なもうひとつの理由が、トラフィックの流れです。ネット企業は、インターネットというサイバー空間にいる消費者をいかに自社のサービスに呼び込むかがビジネスの要諦になります。このトラフィックを、BATはうまく分け合っていて、中国のネット空間は、このBAT3社によって支配されているといっても過言ではありません。

BATは互いの領域を侵さないように棲み分けていますが、時々、国境線を越えて侵入をしていきます。すると、侵入された方は全力で押し戻す。そういうことが繰り返されてきて、BATの棲み分けが成立しています。

これは、中国人が大好きで、日本人にもファンの多い、三国志の魏呉蜀のパワーバランスとまったく同じ構造になっています。

このトラフィックの棲み分けを理解することは、中国のテックビジネスを理解する上できわめて重要です。そこで今回は、トラフィックという観点でBATを理解してみようと思います。これを理解すると、BATの熾烈な競争の構造が理解できるようになると思います。また、このトラフィック構造は、中国だけのものではなく、原理のようなもので、米国や日本でも同じような構造になっています。これを理解しておくことで、中国以外のネットビジネスの競争の背後にあるものが見えてくるようになると思います。

 

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