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明日、vol. 105が発行になります。
今回は、店舗の未来を考える上で重要な「店舗体験」についてご紹介します。
現在の中国では、街中の店舗が壊滅状態と言ってもいいかもしれない状況になっています。報道によると、実体店舗は約6600万店あるものの、2021年にはそのうちの2000万店が倒産、廃業をしたということです。実に1/3近くが廃業しているのです。もちろん、中国全部がシャッター街になってしまったわけではなく、廃業をした後には別の店舗が入るので、街の様子は以前とさほど変わりません。ある意味、新しい店が現れてくるので、実体店舗は好調だと勘違いをしそうなほどです。
しかし、10年前、20年前と比べると、明らかに街の活気が失われています。
以前の中国はカオスでしたが活気だけはありました。今の中国は整然としてきれいになり、街は静かになりましたが、あの過剰な熱気はもはやありません。
中国だけでなく、世界中で路面店、実体店舗は厳しい状況に立たされています。マッサージなどの体験型店舗、つまり人が行かなければサービスを受けられない店舗はまだしも、商品を並べてお客がくるのを待つ小売店は集客にも限界があり、そのままでは将来はないと見られています。
それは時代の流れとも言え、ECが成長をしてきた10年ほど前からその傾向は見えていましたが、コロナ禍によりはっきりと多くの人が認識するようになりました。そこで、進み出したのが到家O2O、到店O2Oの2つのO2O(Online to Offline)です。
到家O2Oは、商品やサービスを消費者の自宅に届けるサービスです。フードデリバリーや店舗ECなどがそれに相当します。もうひとつの到店O2Oはスマホで飲食店などの予約ができたり、商品の事前注文ができるサービスです。
O2Oというと、何か難しく、投資コストがかかるように思う方もいるかもしれませんが、身の回りを見回してみれば、日本でもこの数年で到家O2O、到店O2Oはかなり浸透してきています。ウーバーイーツや出前館のフードデリバリーは定着をしましたし、飲食を事前に注文して取りに行くセルフピックアップ、また飲食店などの予約サービス、店内からのモバイルオーダーなども当たり前になっています。
「2021年O2Oチャネル白書」(KANTAR)によると、O2Oサービスを利用した経験がある人の割合は全国で74%に達しました。一線都市では81%にもなります。つまり、ほとんどの人が到家O2O、到店O2OいずれかのO2Oサービスを使っていることになります。
▲O2Oサービスの利用経験がある人の割合。「2021年O2Oチャネル白書」(KANTAR)より作成。
店舗経営者にとって、このようなO2Oに対応するのはもはや必須です。といっても、ただ対応すればいいというわけではありません。最も失敗するパターンは、商売のやり方は以前とまったく同じ。O2Oサービスの営業マンがきたから加入をしたというものです。業務オペレーションが二重化されてしまい、手間がかかることになり、手間がかかるということはコストが上がるということです。その上、O2Oサービスの利用手数料まで取られてしまいます。
キャッシュレス決済がその最たる例です。現金決済だけでやっていた店舗が、営業マンに勧められてキャッシュレス決済を導入したものの、現金レジの管理とキャッシュレスの管理の二度手間になり、帳簿は複雑になり、思わぬミスが生まれてしまいます。それでいて、決済手数料を取られるのです。
新しい仕組みを導入したら、既存のビジネスモデルとその新しい仕組みを俯瞰してみて、新しいモデルに作り直していく必要があるのです。これがお店が進化するということです。
▲到家O2Oと到店O2Oの売上割合。モバイルオーダー、予約などの到店O2Oは導入しやすいため早く普及をしたが、近年は店舗ECなどの到家O2Oが伸びてきている。単位億元。「2021年O2Oチャネル白書」(KANTAR)より作成。
まず、実体店舗がどのような現状なのかを飲食店、ショッピングモール、体験店の3つについて押さえておきましょう。
飲食は非常に苦しい立場に追い込まれています。特にコロナ前に急拡大をしていた飲食チェーンが大量閉店に追い込まれています。接客に特徴がある火鍋チェーン「海底撈」(ハイディーラオ)は、2021年だけで300店舗を閉店しました。これは全店舗数の2割にあたります。また、中国茶ミルクティーで急成長した「茶顔悦色」(チャーイエンユエスー)も500店舗まで拡大していましたが、2021年に80店舗の大量閉店をしました。
ただし、飲食店は苦しい時期であることには違いありませんが、それほど悲観的にもなっているわけではないようです。なぜなら、海底撈や茶顔悦色が大量出店していたのは、「お客が押し寄せてどうしようもない」という需要に応えるためではなく、どこでも見かけるという状況をつくり出し、消費者のマインドシェアを取りに行く戦略だったからです。お店は広告看板でもあるのです。つまり、「お客がたくさんくるから店舗を増やして対応する」のではなく、「店舗を増やせばお客がたくさんくる」をねらっていました。これがコロナ禍により人流が少なくなったため、うまく機能しなくなったということです。集客効果が見込める状況ではないのだから縮小するというのは合理的な判断です。
一方、閉店する飲食があれば、その後に入居する飲食もあります。飲食業に対する投資案件は2021年はむしろ増えていて、「酒」「茶」「麺」「コーヒー」「ベーカリー」の5つが「新5大飲食」として注目されるようになっています。
ショッピングモールは、2021年に大幅増加をしました。面積8万平米(東京ドーム1.7個分)以上のモールが510ヶ所もオープンしました。そのため、新しく開店したモールに人が集まり、一見、好調のように見えますが、かなり深刻な状態です。そもそもコロナ前からモールは過剰になっていて、新しいモールには人が集まっても、古いモールは閑古鳥が鳴くという状況になっていました。それが2020年はコロナ禍によりモールの開店計画が延期となり、感染状況が落ち着いた2021年に開店が集中しました。
そのため、モールの数は増えたものの、過当競争となり、多くのモールが苦境に立たされています。聯商網が55のモールに対して行なった調査では、2021年Q3が赤字のモールが11ヶ所にものぼり、赤字幅も前年の15倍に拡大をしています。
新しいモール、駅チカで人流の多い場所にあるモールは、人が入っていて好調に見えますが、その陰で、古いモール、立地の悪いモールは深刻な状況になり、今後は閉鎖れるか、別の業態に転換が進んでいきそうな状況です。いずれにしても、中国のショッピングモールは、現在の経済状況では明らかに飽和状態になっています。
体験型店舗でコロナ前に大きく伸びていたのがKTV(カラオケ)とミステリー体験店舗です。昔のKTVは女性がそばについてくれるというキャバクラのようなものでしたが、その後、日本と同じ健全なKTVが登場するようになり、パーティールームとして定着をしました。しかし、日本と同じように、コロナ禍で避けられ閉店が続いています。2021年3月の統計では全国で6.4万軒で、これは7年前の半分になってしました。
体験型店舗でやはりコロナ前に伸びていたのが、ミステリー体験店舗「劇本殺」(ジューベンシャー、シナリオ殺人)です。これは芝居とゲームを融合させたようなもので、スタッフとグループ客が役割を与えられて、隠された殺人犯をあてるというものです。日本でもコロナ禍前には脱出ミステリーなどの体験施設にブームの兆しがありました。中国でも、ピーク時には3万店を超え、大きなブームになる兆しが見えているところにコロナ禍が起こりました。室内に長時間いることが避けられ、多くの店舗が休業に入り、そのまま廃業をするケースが増えています。
このような体験店舗は、実体店舗としては今後も有力な分野であるだけに、人流が戻るにともに復活をしてくる、さらにはまた別のエンターテイメントが登場するのではないかと期待されています。
では、店舗はどのような工夫をすれば、コロナ後を生き抜いていくことができるでしょうか。ビジネスセミナーなどでは2つの処方箋がよく語られます。ひとつは「店舗体験」で、もうひとつは「対象消費者の明確化」です。
この2つは具体的にどういうものでしょうか。今回は、店舗の未来をつくるために必要な店舗体験についてご紹介します。
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