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中国を中心にしたアジアのテック最新事情

若者はショッピングモールに行くとNPCになる。決まった行動を取るだけで買わなくなった若者たち

ショッピングモールの苦境が続いている。根本的な原因が、若者がモールにはきてくれるのにほとんど消費をしてくれないという現象だ。この現象は、NPC化と呼ばれている。RPGゲームに登場する村人のようにゲームには参加せず、決まりきった行動しかとらないキャラクターのことだ。若者がお金を使いたくなる商品、サービスを提供できるかどうかがモール復活の鍵になると略大参考が報じた。

 

苦境が続くショッピングモール

ショッピングモールが苦境に陥っている。コロナ禍により、人出の多い場所を避ける空気が生まれたことと、現在の景気の悪さが要因であると言われる。しかし、モール危機の信号はコロナ禍前から発信されていた。どこのモールも代わり映えのしない出店であり、ECで購入する人が増えていったからだ。

そこで、各モールは飲食、eスポーツ、脱出ゲーム、ライブハウスといった体験型店舗の割合を増やしていった。しかし、モールの管理費(家賃に相当)は高く、飲食店のように利の薄いビジネスは利益を出すことが難しく、現在は飲食店の撤退が続いている。

中国チェーンストア経営協会の全国447モールの調査によると、2024年3月で空室率は9.1%に達している。8%が危険水域と言われている中で、あまりにも悪い数字だ。中指研究院の調査では、全国主要100モールの平均家賃は、2019年下半期には1平米あたり25.9元だったものが、2024年上半期では24.37元と5.9%下落をしている。しかし、それでも空室率は高止まり、ないしは増え続けている。

▲ショッピングモールを運営する主要な上場企業の売上高推移。ほぼすべての企業で減収傾向が続いている。

▲各ショッピングモールの入居率の推移。入居率92%が危険水域だと言われる。80%を切ると、誰の目にも寂れたモールに映るようになり、来客数が雪崩落としのように減少していくことになる。

 

若者にフォーカスしたら業績はさらに悪化をした

その中で早くから手を打っていたのが、北京市の朝陽大悦城だった。若者にターゲットを絞り、若者が好みそうな店舗を入居させていった。ミルクティーの覇王茶姫、奈雪之茶を始めとして、日用雑貨のMUJI、KKV、ぬいぐるみのthe green party、玩具のILOVETOY、TOP TOYなどだ。この施策により、若者の来店客数は如実に伸びてきた。ところが、売上高は45億元から50億元に上昇した後、44億元、42億元と下がってきてしまい、若者施策を始める前より悪化をしてしまった。

▲朝陽大悦城は若者に特化する戦略を行ったが、業績はかえって悪化してしまった。

 

NPC化する若者の消費アルゴリズム

この原因は、若者のNPC化であると言われる。NPCとはNon Player Characterの略で、RPGゲームに登場する村人など、決まりきった行動、決まりきったセリフしか言わないキャラクターのことだ。

確かに若者は休日になるとモールに行くが、そこではNPC化をする。友人とおしゃべりをしながらモール内を歩き、喉が渇いたらミルクティーを買い、飲みながら歩く。名創優品、KKV、the green partyなどの店舗が視野に入ってくるとフラグが立つ。そして、店舗の前にくるとトリガーが発動し、店舗の中に入る。しかし、店舗内での行動は決まったアルゴリズムに支配されている。SNSで出回っている情報によると、

ステップ1:店舗に入る

ステップ2:商品に感嘆をする

ステップ3:価格を見る

ステップ4:価格や商品に対する不満を友人と話し合う

ステップ5:店を出る

というものだ。

そして、地下のグルメ街に行き食事をし、最後にスクラッチくじを買って、削って外れたことを確認して帰宅をするというものだ。

▲若者はなぜかスピードくじはよく買う。しかし、あたることはほとんどなく、外れたことを確認して帰宅する人が多い。

 

お金を使わない=素敵な生活

中国は長い経済成長が続き、教育水準も向上してきた。今の若者はみな、高い教育を受けている。そのため、報酬のいい仕事に就きたいと願っている。しかし、そうそううまく仕事は見つからない。その反動で、今の自分の仕事に不満を持っている人が多く、多くの若者が「自分が望む額の報酬をもらっていない」と感じるようになっている。これが消費マインドを萎縮させ、お金を使わない生活をすることが意識の高いとまでみなされるようになっている。

「モールでNPCになる」も、その考え方がSNSで広く拡散し、ゲーム的に楽しまれたり、それこそが今の時代の意識の高い生活方式だと肯定的に捉えられている。

 

人気のグッズ店は中高生が中心

現在、各モールは谷子店(グッズ店)の導入を急いでいる。アニメやゲームのキャラクターグッズで、缶バッジやカード、フィギュアなどがよく売れていて、若者を呼び込む要素になっている。しかし、グッズの単価は安く、購入しているのは若者よりさらにひとつ下の世代である中高生が中心になる。客流を獲得するという観点では、今までモールにあまりこなかった層を呼び込むことができるが、おこづかいの範囲内で買い物をするグッズ店は営業収入という点では難しいものがある。

モールは、若者が消費をしたくなる商品やサービスを発見しなければならなくなっている。