コロナ後の経済回復により、店舗に人が戻り始めている。その決め手になっているのが即時小売で、店舗の商品を最短30分で宅配してくれるサービスだ。手ぶらで買い物が楽しめる体験が鍵になっていると鈦媒体が報じた。
実店舗に人が戻ってきている
この10年、ECの成長が続く中で、実店舗は圧迫を受け続けてきた。特にショッピングモールには空き店舗が増え、多くのモールが存続の危機を迎えていた。しかし、実店舗の人気が再び高まってきている。
人民日報は「新技術、新システムの応用、新サービス、新業態が実店舗の人気を再び盛り上げている」(http://gs.people.com.cn/n2/2022/0126/c183342-35112855.html)という記事を公開した。
その理由の最大のものは即時小売だ。フードデリバリー「美団」(メイトワン)、「ウーラマ」などが、店舗の商品を30分で届けてくれるサービスを行なっている。ショッピングモールでは宅配便や市内配送を利用して、24時間配送サービスを無料提供しているところが増えている。
複合型モールと相性のいい即時小売
中国のショッピングモールの多くは都市型モールであり、近年のトレンドは複合型だ。カフェ、飲食店の比率を増やし、さらには映画館やゲームセンターなどの娯楽施設も備えている。さらに、若者の間で人気のマーダーミステリー、密室脱出ゲーム、さらにはVRゲームなど、自宅では楽しめない娯楽施設が、集客の目玉となりつつある。
この数年で増えたのが、買い物をして商品を24時間配送してもらい、その後は食事や娯楽を楽しむというものだ。ショッピングバッグを自分で持って歩く必要がないため、手ぶらで買い物や食事、娯楽を楽しむことができる。コロナ禍で来店客が減少し、生き残るために対応した配送サービスが、ショッピングモール復活の鍵になろうとしている。
スーパー、コンビニでは即時小売で新しい商圏を獲得
スーパーマーケットやコンビニといった日常使う店舗でも、即時小売が広がっている。ウォルマート、カルフール、永輝といったスーパー、昆倫好客、セブンイレブン、ローソン、ファミリーマート、美宜佳などのコンビニが続々と即時小売に対応をしている。コロナ禍による業績悪化を取り戻す手法として注目されている。
その中でも目に見える成果が出ているのがローソンだ。中国のローソンは5000店舗を突破し、中国コンビニ第6位の規模となっている。日系コンビの中ではファミリーマートの2900店舗に大きく差をつけ、頭ひとつ抜け出している。ローソンでは2018年から即時小売に対応することで、売上が10%増加した。
重要なのは、店舗の顧客と即時小売の顧客の重複率は10%以下であるということだ。つまり、今まで店舗にこなかった顧客が即時小売を利用してローソンを利用することになった。新たな顧客を獲得し、商圏を拡大している。また、2022年の即時小売注文は前年よりも183%増加し、3倍近くになろうとしている。
また、ライバルのセブンイレブン中国も、厳茜会長が、即時小売を中心にした戦略に力を入れていくと述べている。
また、中国系コンビニで、業界2位の「美宜佳」(メイイージャー)は、2万6000店舗を展開しているが、そのほとんどの店舗で2017年から即時小売に対応をしてきた。
すでにオンライン売上は月に2億元を超え、月に390万個の商品を即時小売で配達をしている。2021年の統計でも、美宜佳の即時小売の売上は14.85億元となり、他のコンビニを圧倒している。
宅配を前提にしたコンビニも登場
この流れを受けて、即時小売を主体に考えるコンビニチェーンも登場している。2022年に深圳で創業された「哆鯨選」(ドゥオジンシュエン)は現在20店舗を展開しているが、バックヤードを持っているのが特徴だ。美団の「美団閃購」と提携をしている。美団閃購は即時小売のためのソリューションで、注文用のミニプログラムから配達までのシステムとサービスを提供している。
この他にも北京では「佳美楽購」(ジャーラー)、杭州では「近距離梨」(ジンジューリーリー)などの同じコンセプトのコンビニが登場している。
このような即時小売を主眼にしたコンビニの場合、店頭に陳列をするのはよく動く商品である飲料やスナック菓子などだけで、その他の商品はバックヤードに密に配置をすることができる。そのため、SKU(Stock Keeping Unit、商品品目数)は通常のコンビニの3000に比べて、5000と多様な商品に対応ができる。そのため、化粧品や靴下、靴、帽子、デジタル製品、医薬品などにも対応している。
フランチャイズオーナーからも注目される投資効率
このような即時小売コンビニはこれからも登場してきそうだ。美団閃購を利用すると、店舗は200平米ほどで、基本は倉庫として、その一部を店舗とするだけでいい。杭州市のような新一線都市であれば、客単価40元、1日500人が見込め、粗利率25%だとすると月15万元ほどの利益が見込める。
手軽で固いビジネスとして、フランチャイズ店のオーナーたちからも注目をされている。哆鯨選のようなスタートアップも登場してくることになる。
即時小売が小売業の起爆剤になる可能性も
この即時小売は、中国国内小売では2017年頃から対応が始まり、コロナ禍により軌道に乗り始めた。このため、外資系小売にとっては、それまでのオンライン志向から180度転換するようなこの流れに乗り遅れたところがある。しかし、今ではスターバックスのような飲食、無印良品、デカトロンなどの衣料が対応を始めている。
その多くが、即時小売をトータルでサポートしてくれる美団の「美団閃購」ソリューションを利用している。美団はこの即時小売で再び成長をする可能性が高くなっている。
即時小売が、小売業の次の成長への起爆剤になろうとしている。