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バッテリー発火事故解消の決め手となるか。台湾Gogoroの電気サブスク方式を採用した電動バイクが発売に

中国で普及をする電瓶車。バッテリーを取り外して充電ができる電動自転車、電動バイクの総称だ。しかし、不適切な取り扱いもされ、充電中の発火事故が社会問題になっている。この問題を解決するため、台湾のGogoroが始めた電気サブスク方式の電動自転車、電動バイクが発売されたと木瓜新車指南が報じた。

 

EVが主流になった自転車とバイク

中国で庶民の足として普及をしている電動自転車。アシストではなく、電力で走行をするが、ペダルもついていて自力で漕いで走ることもできる。時速は25kmまでに制限されているが、免許が不要で乗れる。一方、完全な電動バイクもあり、こちらは時速が50kmまでに制限され、運転にはバイクの免許が必要となる。このような電動自転車、電動バイクを総称して、電動車または電瓶車と呼ばれている。

 

発火事故の原因は不適切な取り扱いとは言うものの…

現在、大きな問題になっているのが、このような電瓶車の充電時の発火事故だ。ほとんどがリチウムイオン電池なので、ひとたび発火をしてしまうと、炎が噴射されるような爆発を起こし、甚大な被害を与える火災事故につながる。最近では、バッテリーが着脱式のものも増え、自宅の部屋の中で充電をすることも増えたため、さらに被害が大きくなっている。

発火事故の原因は、利用者が適切に充電を行なわなかったことだ。バッテリーは安全のために3年で交換することが推奨されているが、多くの人が交換を怠る。劣化が進み、さらに雨水にあたったりすると接点に錆が入ったりする。また、充電をするときは、電圧を調整するために専用の充電器を使わなければならないが、異なる車種の充電器や、市場で買い求めた安価な充電器を使ってしまう。

しかし、日常ツールになっている電瓶車で、すべての利用者に正しい充電法を求めるのは無理がある。例えば、スマートフォンも取扱説明書には、付属または純正の充電器(充電プラグ)で充電をするように指示されているが、実際は、市中で買い求めた充電器を使っている人が多い。消費者に啓蒙をするだけでは解決ができない問題だ。

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▲不適切な充電によるバッテリー発火事故は、爆発というより小型ロケットの噴射のように長く続く。狭い室内で起きた場合は逃げ場を失って死亡事故につながるケースもある。

https://www.bilibili.com/s/video/BV1kk4y167xe

 

注目される台湾Gogoroの電気サブスク方式

そこで、注目されたのが電気サブスク型の電瓶車だ。市内に充電ステーションを設置し、使ったバッテリーをそこに収め、充電済みの新しいバッテリーを自分のバイクに装着する。台湾のGogoroが始めて注目された仕組みで、充電を待つ時間が不要になることから、電瓶車を頻繁に使う人の間で注目をされている。また、充電はステーションで行われるため、不適切な充電をすることもなく、安全性も担保される。

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▲台湾で定着した電気サブスク電動バイク「Gogoro」。街中に設置された充電ステーションで充電済みのバッテリーと交換をすることができる。充電時間が不要になると歓迎されている。

 

宏光MINI EVの五菱が電気サブスク電瓶車を発売

このバッテリー交換式電動バイクが2車種登場している。

ひとつはEV「宏光MINI EV」がヒットしている五菱が発売したP20だ。電動自転車であるため、最高時速は25kmとなり、ペダルがついている。満充電の航続距離は75km。価格は1999元(約3.6万円)。

現在、五菱の地元である柳州市で充電ステーションの試験運用が始まっている。

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▲五菱が発売した電動自転車P20。ペダルもついていて、バッテリ切れでも足で漕ぐことで前に進める。価格が1999元と安いことから、充電ステーションが充実をしてくれば売れるのではないかと期待されている。

 

Gogoroと提携した「換電獣01」

もうひとつが電動バイクメーカー「雅迪」(ヤーディー)とバイクメーカー「大長江」が共同開発をした「換電獣01」だ。台湾のGogoroのバッテリー交換システムを採用している。Gogoroと同じように、スマホがキー代わりになるなど、スマホ連動機能が搭載され、若い層をねらっている。航続距離は131.2km。価格は3499元(約6.2万円)から。現在、杭州市で充電ステーションの試験運用が始まっている。

いずれにしても、充電ステーションの数と密度が充実をすること、充電ステーションの毎月の利用料金などが普及の鍵になる。しかし、悲惨なバッテリー事故をなくす決め手になるのではないかと期待されている。

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▲雅迪と大長江が共同開発をした換電獣01。台湾Gogoroのバッテリー交換システムを採用し、スマホとの連動機能も備えた若者層を狙った電動バイク

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▲換電獣01のバッテリーシステム。台湾Gogoroのバッテリーシステムをほぼそのまま使っている。