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主要テック企業が過去最大級の新卒採用計画をスタート。大きく変わる人材に対する考え方

テック企業の就活シーズンが始まり、主要企業の採用計画が過去最大級になっている。ひとつは、コロナ禍、政府による規制などがあったにも関わらず業績が好調なことがある。もうひとつは、企業の人材に対する考え方が変わり、優秀な人材は育成すると考えるようになったからだと三石財経雑談が報じた。

 

過去最大の採用計画を進める主要テック企業

9月になり、中国の就職活動のシーズンが始まった。騰訊(タンシュン、テンセント)は、技術、プロダクトなど5種類の職種で7000人の新卒生を採用する計画を発表した。昨年は5000人であったため、40%拡大したことになる。

今年は「史上最大の採用計画」をうたうテック企業が多く、どこも大型の採用計画を進めている。バイトダンスは4000人以上、アリババは113職種、アリババ傘下のアントグループは昨年の2.5倍、京東(ジンドン)は昨年よりも3割多い。また、今年初めて、新卒採用に参加をした小米(シャオミ)はいきなり5000人の採用計画を公表した。

 

優秀な人材は見つけるのではなく育てる

各社が採用計画を拡大する理由は2つある。ひとつは人材に対する考え方が大きく変わったことだ。以前は、優秀な人材というのはすでに存在するという見方だった。そのため、優秀な人材は、優秀な学生や他社から高給で引っ張ってくるという考え方だった。

しかし、スキルは高くても、企業文化になじめない人は、結局パフォーマンスを発揮できないということを実感するようになり、テック企業は、優秀な人材は育てるものという考え方に変わっている。これにより、新卒を大量に採用し、育成に力を入れるようになっている。

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▲各テック企業の初任給を年収換算した最低値と最高値(単位:千元)。オファーにはSP、A、Bなどのランクがあり、部門やオファーランクで報酬は大きく違ってくる。

 

規制があってもテック企業の業績は好調

もうひとつは、各テック企業の業績が好調であることがある。百度は2021年Q2の財務報告書を公開したが、市場の売上予測である310億元を上回る314億元だった。独占禁止法による巨額の罰金を支払ったアリババも2021年4月ー6月の売上は2057.4億元となり、34%の増加となった。純利益は428.4億元となり8%の減少となったが、巨額罰金として支払った分を考慮すると、20%前後利益が伸びていることになる。

 

年に18ヶ月支給も増加傾向

初任給も上昇をしている。多くのテック企業では、開発、アルゴリズム、製品などの部門ごとにSP、A、Bというランクづけをしたオファーを出す。この部門とランクにより月給が決まる。また、月給はボーナスを含め、年に14ヶ月分から18ヶ月分支給される。テンセントの場合は、16ヶ月支給と18ヶ月支給の2通りで採用をする。これにより年収が決まってくる。

今回主要テック企業の採用で、最も報酬が低いのは、小米、京東のプロダクト部門のBオファーの18.2万元(約310万円)だった。一方、最も報酬が高いのは拼多多のアルゴリズム部門のSSPオファーの68.4万元(約1180万円)だった。もちろん、SPオファー以上は研究職であり、大学院などでの研究実績も問われるため、誰もなれるわけではなく、募集も数名にすぎない。

多くの学生にとって、初任給が年収換算で30万元(約520万円)を超えるかどうかが焦点になっているようだ。