テンセントの財務報告書が公開され、従業員の平均年収が約1350万円であることが明らかになった。ネットでは羨む声が多いが、意外にもテンセントの求人広告に掲示されている初任給はそれほど高くない。入社してからの業績次第で、大きく昇給するか、強制解雇されるかが決まるからだとMP頭条が報じた。
テンセントの平均年収は1350万円
3月に、テンセントの2020年Q4および2020年の財務報告書が公開された。これによると、人件費の総額は696.38億元で、従業員数は8万5858人となっている。単純に割り算をすると、平均年収は81.11万元(約1350万円)となり、羨望の声が広がっている。しかも、2019年の財務報告書では人件費531.23億元、従業員数6万2885人であるため、平均年収は84.48万元となり、3万元以上高かった。
▲テンセントのマスコットたち。QQファミリーと呼ばれていて、ぬいぐるみやフィギュアなどの商品も人気になっている。
SNSでは羨望の声が続々
SNSでは、この件についてさまざまな意見が飛び交っている。最も多かったのは、純粋に羨ましいというもの。
・81万元?僕は81千元もないのに。守衛に雇ってくれないかな?
・ペンギンはやっぱりペンギンだった。羨ましい。
ペンギンとはテンセントのマスコットであることから、テンセントの従業員を指す言葉として使われる。また、ペンギンは中国語で「企鵝」だが、これは「企業のガチョウ」と読むこともできる。金の卵を産むガチョウのイソップ童話は中国でも広く知られている。
▲テンセントの平均給与を聞いてのネット民の反応。「81万?僕は81千もないのに。守衛に雇ってくれないかな?」というもの。素直に羨むという反応が多かった。
▲創業時から使われているペンギンのマスコット。デザインは時代に合わせて変えられてきた。俗にテンセントの従業員を「ペンギン」と呼ぶことがある。
過重労働あっての高給だという批判も
一方で、平均という統計手法に異論を唱えている人もいる。
・平均値に意味はない。中央値で見なければ意味がない。
・上級職が130で、従業員は30。それでも平均は80になるよね。
この程度のことであれば、SNS内での暇つぶしにすぎず、他人の給料にあれこれ言うのは余計なお世話でしかないが、議論の方向が996問題に移り、再び過熱をしている。996とは「朝9時出勤、夜9時退勤、週6日勤務」のことで、過重労働一般を指す言葉になっている。
・テンセントでは、5時半が退勤時間だが、企業バスは6時半に出る。誰も強制はしていないが、1時間ぐらいは残業しろという意味だ。
・8時になると東来順(ドンライシュン、羊肉のしゃぶしゃぶで有名な老舗飲食店)のデザート付きの夕食が出る。これは8時まで残業して、食事をしてから帰れということだ。
・10時になると、タクシー代が支給される。これは10時まで残業をして、タクシーで帰宅しろということだ。
テンセントの初任給は安い方
求人サイトで、テンセントの求人広告を見ると、もちろん職種や経験の有無によって給与は大きく異なるが、下は1.5万元、上は6万元程度の範囲に収まっている。年収に直すと18万元(約300万円)から72万元(約1200万円)ということになる。これに残業代が加わることになる。
つまり、テンセントも入社したての給料は決して高くなく、むしろ、一般的なテック企業よりもやや安いほどだ。それだけ、成果をあげた時の昇給が大きいということだ。
▲テンセントの業績評価概要。ポテンシャルと業績の2軸マトリクスで評価される。両方とも低い「1:アンダーパフォーマー」のところには、「速やかに組織から取り除く」と注釈されている。つまり、強制解雇されるということだ。
客観評価は厳しく、毎年5%から10%は解雇される
また、多くのテック企業で、人材の評価と成績の評価による二軸マトリクスでの人事評価が定期的に行われ、両軸とも優秀なハイポテンシャル人材は大きく昇給する。また、最も評価の低いアンダーパフォーマーは、減給ではなく「速やかに組織から取り除く」処置が行われる。つまりは解雇される淘汰制度だ。大体毎年、従業員の5%から10%がこの淘汰制度に引っかかる。
これにより大手のテック企業は、常に新陳代謝をしているが、従業員にとっては厳しいプレッシャーになっていて、これが一見自主的に見える長時間残業を生んでいる。
つまりは、報酬の額だけ聞くと羨ましく思えるが、高給をもらうにはもらうなりの厳しさがあるということだ。