フードデリバリー「美団」(メイトワン)と、深圳の高層オフィスビル「SIC超級総部中心」は、フードデリバリーのドローン配送の試験運用を行うことで合意した。しかし、ドローン配送は利用者体験の点で課題が多く、今回の試験運用ではその点の検証も行われると深圳商報が報じた。
「人・ドローン・人」形式のドローン配送
SIC超級総部中心は、地上79階、地下4階の高層オフィスビル。大量のデリバリー注文が生まれるため、近隣の商業施設からのドローンによる配達を行う。
ドローン配送といっても、部屋まで届けてくれるわけではない。約1.3km離れたショッピングモールとSIC超級総部中心の双方にドローン発着基地を設置し、基地間をドローンで配送し、その前後は人が担当する。
SIC超級総部中心の顧客がアプリからフードデリバリーを注文すると、ショッピングモール内に待機をしている美団のスタッフが店舗に商品を受け取りに行き、それをモール屋上に設置されているドローン発着場に行き、そこでドローン用ボックスに移し替える。そして、ドローンをテイクオフさせる。
SIC超級総部中心のドローン発着場にも美団のスタッフが待機をしていて、商品を受け取り、顧客のもとに配達するというものだ。
ドローンの飛行時間は4分弱で、合計で注文から10分程度で配達をすることができるという。
ドローンの積載能力が大きな課題
しかし、課題は多い。ひとつは積載量の問題だ。電動バイクで配達をするデリバリー騎手は常に最低でも3から4の注文を同時並行でこなしている。この場合、荷物の重量はだいたい5kg程度になる。
しかし、現在の小型ドローンの積載能力は1kgから2kg程度が基本で、そのままでは1つのドローンが最高でも2つ程度の注文しかこなすことができない。ドローンを大型化することもできるが、その場合は、騒音、墜落のリスクなどから飛行ルートが大きく制限されることになる。
また、ドローンのバッテリー容量による航続距離も問題になる。現在、多くのドローンが30分程度の航続能力を持っている。ということは、ドローン配送を行なった場合、2、3回の配送をこなした後、バッテリー交換をする必要がある。
難しい、顧客宅のベランダへの直接配送
最大の問題は、ドローンで直接利用者の元に届けることはできないということだ。イメージ映像としては、マンションの個別の住居のベランダに届ける様子がよく描かれるが、実際のマンションのベランダに着陸させるのは高度な技術が必要になる上、近隣住民から騒音に対する苦情が出る可能性もある。
また、利用者がベランダでドローンを待ち受けた場合、人体への衝突へのリスクもあり、そこの配慮も必要になる。
美団が構想する「自分で受け取り」方式は不評
美団の構想では、商店が集中する地域と、住宅地、オフィスビル、マンションにドローン発着場を作り、発着場間をドローンで結び、商店から発着場まではスタッフが配送し、受取側は利用者が自分で発着場まで取りに行くという仕組みを想定しているようだ。
しかし、この仕組みは好意的には受け止められていない。なぜなら、人が運ぶのであれば、自分の家まで届けてくれる。オフィスビルなどでは、親切なデリバリー騎手になるとデスクまで届けてくれる。その利便性があるからデリバリーを使っている。
これが近隣の発着場や、高層ビルの中で1階やテラスに設置された発着場に自分で取りに行くのであれば、何もデリバリーを注文をしなくても、コンビニなどで買ってしまえばいいことになる。結局、最後の配送も人が行うスタイルになるのではないかと見ている人が多い。
5年以内に大規模ドローン配送網を計画する美団
今回の試験運用は、このような消費者体験の検証が主体になると見られている。美団は2017年からドローン配送による検証、試験運用を行なっていて、すでに22万回の飛行を行い、飛行時間の累計は60万分を超えている。ただし、実際の配送は2500件しかまだこなしていない。
美団は、商店から周辺3km以内の大規模ドローン配送網を5年以内に実現したいと発表している。