中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

中所得国の罠にはまるタイ。かつてのアジアの虎は、なぜ低迷を続けるのか

東南アジアの急成長の中で、タイの落伍が目立つようになっている。なぜ、かつてのアジアの虎は眠ってしまったのか。中所得国の罠にはまってしまったからだと東方財経が報じた。

 

眠りについたアジアの虎、タイ

90年代、バンコクはアジアで最も活気のある都市だった。当時のタイは、毎年2桁成長をし、アジアの虎と呼ばれた。

しかし、現在は色褪せている。2025年、タイのGDP成長率はわずか1.6%で、東南アジアが4%成長する中で、完全に落伍をしてしまっている。いったい何が起きているのだろうか。

▲タイのGDP成長率の推移。90年前後は非常に高く、東南アジアの成長を牽引したが、現在ではお荷物になろうとしている。

 

3つの柱の収入源がすべて低迷

タイの経済は、観光業、製造業、個人消費と3つの柱からできていた。この3つの柱が同時に崩壊している。全方位的な失速がタイの経済を低迷させている。

 

1)微笑みの国から危険な国へ

観光業のGDPへの寄与率は、これまで10%を超えていた。ピークの2019年には4000万人のインバウンド観光客が訪れたが、新型コロナで大きく減り、2025年は3290万人と以前の水準に戻っていない。

観光客が減った理由は治安の悪化だ。ミャンマーとの国境付近では、特殊詐欺グループが大規模なアジトをつくり、近辺では拉致事件などが起きている。これにより、バンコクなどの都市でも女性が誘拐されるという誇張した話が広がるようになり、最大グループである中国人インバウンド客が激減した。

また、経済成長をしたことで、タイの通貨であるバーツの価値が上がり、インバウンド旅行客にとっては宿泊、飲食、交通のすべての旅行コストが上昇することになった。これもインバウンド客が遠のく要因になっている。

▲観光資源は世界有数の豊富さ。しかし、インバウンド客が回復し切らず、観光業も低迷している。

 

2)東南アジアの工場から外資が離脱

かつてのタイは東南アジアの工場であり、自動車や電子部品などの製造業がGDPの半分を支えていた。しかし、近年、多くの外資企業がタイから撤退している。より人件費が安いベトナムやマレーシアに移転しているのだ。

最大の原因は、タイの製造業が低付加価値の受託製造段階にとどまり続けたことだ。当初はそれで成長できたが、どこかの段階で技術レベルを上げて、高付加価値製造へと転換しなければならなかった。一方、成長とともに人件費は上昇してくる。タイは、製造拠点としての魅力を失い、外資が離脱し、しかも強い自国ブランドも少なく、製造業が衰退し始めている。

▲タイはかつて東南アジアの工場だったが、高付加価値製造に転換することに失敗した。

 

3)中所得国の罠にはまる個人消費

90年台は低付加価値の製造業を呼び込むことで経済成長をし、賃金はあがり、多くの市民が農村型生活から都市型生活に転換をし、個人消費も当初は順調に伸びていた。

ところが、高付加価値製造への転換が進まなかったために、賃金は2000年以降ほぼ伸びなくなっている。しかし、外的要因により物価は上昇し、個人の消費欲もあがり続け、同時に個人ローンなどの金融サービスが広がったため、借金をして生活するのが常態化した。しかし、それも限界に達し、現在は、家計債務がGDPの90%近くになるという借金の多い国になっている。

これが消費マインドを害し、個人消費が伸びなくなってしまっている。

▲バンコクの街並みは、近代的な都市に変わろうとする途中で止まってしまっている。

 

少子化という将来の不安

さらに、未来に対しても課題が山積みになっている。最も深刻なのは少子高齢化だ。2025年には出生率が75年ぶりの低水準となり、相対的に高齢者人口の割合が増え続けている。

これにより、多くの製造業が人手不足の問題に悩まされている。また、高齢者は消費よりも貯蓄を好む傾向があるため、個人消費はさらに落ち続けている。

 

政治は人気取りのバラマキに終始する

これに対して政府は、現金補助や半額補助などの目先の個人消費刺激策をとっている。短期的な効果があり、政治家の票に結びつくからだ。しかし、財政は悪化し続け、国債などの利息支出は財政予算の11%を占めるようになっている。これは信用格付けの世界で言われる警戒ライン12%に限りなく近づいている。実際、国債信用格付け機関は、タイの格付けを何度も下げる修正を行っている。

 

ポテンシャルは高くても逆転が難しいタイ

タイに逆転のチャンスがないわけではない。製造インフラは整っており、製造産業基盤もある。高度な労働力がある。さらに美しい自然があり観光資源は豊富だ。しかし、2006年の軍事クーデター以来、王党派と改革派政党の権力闘争が続き、首相が短期間で変わっていき、長期的な改革政策を打てない状況になっている。

かつてのアジアの虎、微笑みの国は、今や集中治療室に入らなければ健康を取り戻すことができない状態になっている。

 

バックナンバーポッドキャスト放送中!

apple.co

 

ビデオ版バックナンバーも放送中!

www.youtube.com