中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

レッドオーシャンのフードデリバリーに、バイトダンスと京東が参入。そのねらいとは

成長が止まりレッドオーシャン化しているフードデリバリーに、バイトダンスと京東が新たに参入をした。3社は、フードの向こう側にあるクイックコマースでの成長をねらっていると零售商業評論が報じた。

 

レッドオーシャンに京東とバイトダンスが参入

美団(メイトワン)が65%以上のシェアを持つ外売(ワイマイ、フードデリバリー)。すでに利用者数は5.45億人となり、5線都市と呼ばれる地方小都市までサービスが普及し、市場としてはこれ以上の成長が望めないレッドオーシャンになっている。

ところが、EC大手の「京東」(ジンドン、JD.com)が2025年2月に京東外売をスタートさせた。さらには中国版TikTok「抖音」(ドウイン)も2023年10月に「小時達」をスタートさせ、当初はデリバリー企業「ウーラマ」に配送を委託していたが、独自の配送網の構築に動き始めている。

これにより、一気にフードデリバリーの競争が激化をしている。いったい、成長が望めないデリバリー市場になぜ続々と新規参入が起きているのか。

▲デリバリーの世界は、美団、バイトダンス、ウーラマ、京東の4社が競い合うことになった。

 

ねらっているのはクイックコマース

各社がねらっているのは、フードデリバリーの向こう側にあるクイックコマースだ。クイックコマースというと生鮮食料品のイメージがあるが、スマートフォンから文房具から酒から生花まで、オンラインで注文して30分で配達をするというサービスだ。

2025年の予測では、フードデリバリーの成長率は6.80%まで低下をしているが、飲食品ではない一般商品も配達するクイックコマースは28.59%もの伸び率になる。フードとコマースの両方を扱うことで、総合的な成長率は13.83%にもなる。

フードデリバリーとして成長してきた美団は、さらに成長するためにクイックコマース「美団閃購」をスタートさせた。EC大手の京東は、クイックコマースによりEC販売を拡大するためにフード+コマースの「京東外売」を始めた。抖音は、ライブコマースを拡大するために「小時達」を始めた。

三者三様の思惑により、それがデリバリー部隊を構築するという同じ行動に結びついている。

▲フードデリバリー(青)の成長は止まっているが、飲食品以外のクイックコマース(緑)が伸びている。両方に対応することで、高い成長率を維持することができる。

 

店舗在庫も扱うOMOを目指す美団

美団は、すでにデリバリー騎手が745万人いるという資産を活かして、オフライン店舗を活用する「美団閃購」を正式にスタートさせた。これは2018年頃から試験営業を繰り返しながら構築してきたものだ。

全国3万ヶ所に前置倉を設置した。配達すべきエリアに小さな倉庫を確保し、そこにあらかじめ在庫をしておき、注文が入るとそこから配達をする。これにより30分配送が可能になる。また、MINISO、ワトソンズなどの提携店舗を増やし、店頭在庫も配達をする。

これには、前置倉に何を在庫すべきか需要予測をする必要があり、提携店舗の在庫情報をリアルタイム共有する必要がある。このシステム開発に時間がかかった。

▲美団閃購のミニプログラム。セブンイレブンなど、直接店舗の商品を注文することもできる。オフライン店舗はこのOMO策に注目をしている。

 

京東は自社ECの30分配達を確立

京東は、自社のECで販売している商品を30分で配達する。以前から、特定の商品に関しては「秒送」サービス、または宅配企業「達達」に委託をして、短時間配送をしていたが、このリソースを統合して、30分配送を生鮮品、電子機器、医薬品などにも広げ、さらに飲食店の飲食品の配達も行う。

ただし、比重はクイックコマースにあり、フードの提携飲食店は厳選をしている。飲食店を評価し、特に優れた飲食店としか提携をしない方針で、申請して受理される率は40%程度だという。つまり、質の高い飲食品とEC商品を配達することになる。

▲京東の創業者、劉強東氏は、自ら配達ライダーとなって飲食品を届けた。プロモーションであるのに、1日で97件の配達をこなし、ライダーとしても優秀であることを証明した。

 

バイトダンスはライブコマースの満足度向上を目指す

抖音は、ライブコマースの満足度を高めて、「ライブコマース+30分配達+高満足度」のループを完成させ、利用頻度をあげることをねらっている。例えば、新発売のスマートフォンのような商品は、消費者の関心度は購入時に最高となり、以降、徐々に低下をしていく。翌日配送、翌々日配送では、関心度が下がった段階で商品が手元に届くことになり、満足度が低下をしてしまう。

しかし、注文して30分で届くと、関心度が高いうちに商品に触れることになり、高い満足度が得られる。これにより、消費の頻度があがるのではないかという仮説を立てている。

思惑通りに行けば、ライブコマースの視聴率とGMV(流通総額)の両方を高めていくことができる。

 

ウォルマート系サムズクラブも独自のクイックコマース

ウォルマートもこのクイックコマースに積極的に乗り出している。ホールセラー「サムズクラブ」は、中国に55店舗を展開し、安くて品質がよく、サムズクラブでしか買えない人気商品が多く、高い人気を維持している。

しかし、問題は店舗数が少ないために、大都市しかカバーできていないことだ。そこで、宅配企業「極速達」に委託をし、500以上の前置倉を配置し、近隣への1時間配送を行っている。サムズクラブでは、すでにオンライン売上が48%を突破しているという。

ウォルマートは、リーチができていない地方都市にダークストアを設置し、近隣への1時間配達を行っている。オンライン注文率は48%に達している。

 

オフラインとオンラインが深く融合するOMO

このクイックコマースの最大の特徴は、オフライン店舗がプレイヤーのひとつとして組み込まれていることだ。オフライン店舗とオンライン店舗(EC)は、これまで、同じパイを奪い合う関係で、ECの普及とともにオフライン店舗は減少をしてきた。しかし、オフライン店舗の店頭の商品が30分配達されることにより、オンライン小売とオフライン小売は深く融合するOMO(Online Merge with Offline)の世界が完成をする。

そのためには、最後の1km、配送の毛細血管と呼ばれるライダーによる配達網が必須で、いよいよ、フードデリバリーにより築かれた資産を活用して、小売全体がOMOを実現しようとしている。理想通りに進めば、中国は、なんでもスマホで注文すれば30分で配達される社会になる。オフライン店舗はショールーム化、体験化が進み、休日に楽しい体験をしにいく場所となり、そこで新たな商品と出会う場所になっていく。

小売業の形が大きく変わろうとしている。

 

バックナンバーポッドキャスト放送中!

open.spotify.com