中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

無人操縦のドローン母艦が進水。年内にも正式任務へ。海外メディアは軍事転用可能である点に注目

ドローンを積載し、無人操縦可能な母艦「珠海雲」が進水し、航行試験を始めている。無人操縦で調査海域まで行き、ドローンにより科学調査を行う。しかし、海外メディアは軍事転用が可能性である点に注目をしていると万大叔が報じた。

 

ドローンを積載する無人操縦「母艦」

中国で新たなタイプの”母艦”が進水した。AIによる完全無人操縦で、大量のドローンを積載し、海上からドローンを発着進させることができる。ドローン版の無人操縦航空母艦だ。

完成をしたのは、「珠海雲」(ジューハイユイン)。世界初の無人操縦型のドローン母艦で、全長は88.5m、幅14.0m、型深(高さ)6.1m、型喫水(水中部分の高さ)3.7m、最大速度18ノット(時速33.3km)、巡航速度13ノット(時速24.0km)、排水量2000トン。

▲珠海雲の航行イメージCG。無人操縦で調査目的の海域まで移動し、空中ドローン、水中ドローンを使って、海洋調査を行う。

 

軍用船の製造実績がある企業が製造

製造をしたのは、中船黄埔文沖船舶(http://csschps.cssc.net.cn)。軍用船などの建造実績のある企業だ。広東省南方科学工程実験室と協力し、海洋環境の観測、防災減災、海上風力発電などのデータ収集が可能なシステムも搭載されている。

2021年7月から建造が始まり、11月には完成をし、内装などの工事に入り、2022年5月28日進水をした。年内は海上の航行試験が行われ、順調にいけば年末にも任務に就くことになる。

船体はアルミニウム合金製で、独特の曲線を出すための加工は簡単でなく、さまざまな技術課題を乗り越える必要があったという。

▲2022年5月28日に進水をした珠海雲。現在は航行試験中。年内にも正式任務に就くという。

 

主目的は海洋環境の科学的調査

甲板が広く、まるで海上ピックアップトラックのような形状の珠海雲は、大量のドローンを積載することができる。数十台のドローンを積載することができ、空だけでなく、海中を航行するドローンも搭載し、目的地で空と海上、海中という立体的な科学観測を行うことができる。

また、珠海雲はAIによる自動操縦であるため、遠隔からのリモート操縦、あらかじめ設定したルートを自動航行させることができる。これにより、計画的な海洋環境の科学調査が可能となる。

▲海に浮かぶ珠海雲。後部は甲板のみとなっており、海のピックアップトラックとも呼ばれている。

 

海外メディアは軍事転用可能であることに注目

このニュースは欧米やインドでも「世界初のAI操縦のドローン母艦」として報道されているが、その報道のポイントは中国内の報道とは少し異なっている。多くの報道が、「軍事転用が容易」である点に触れている。つまり、軍事的な測量をするのに利用をすることができ、場合によっては攻撃能力のあるドローンを積載して、武器としても利用することができる。無人操縦であるために、兵士の消耗を考えることもなく、危険な攻撃任務もこなすことができる。そうなれば、ドローン母艦ではなく、航空母艦に匹敵する能力を発揮することになる。

もちろん、中国内での報道は、すべてが「科学調査船」としてのもので、軍事転用に触れているものはない。珠海雲が年末以降、具体的にどのような任務に就くのか、国内外から注目されている。