「まぐまぐ!」でメルマガ「知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード」を発行しています。
明日、vol. 051が発行になります。
今年2020年の11月11日独身の日セールも、それぞれのECが大幅な記録更新をして終了しました。アリババの天猫(ティエンマオ、Tmall)は11日単日だけで3723億元(約5.9兆円)を売り上げ、昨年の2684億元から39%増という大幅な記録更新になりました。
しかし、今年で12年目となり、干支が一回りした独身の日セールは金属疲労を起こして限界にきているとよく言われます。その理由の最たるものが返品率の高さです。中国メディアの報道によると、服飾品で30%を超え、その他の日用雑貨でも30%近いと言われます。返品率は公表されていないので正確にはわかりませんが、多くの消費者がこの数字には納得します。なぜなら、多くの人が自分も返品をするからです。
日本では、ECで購入したものを返品するというのは、商品に何か問題があった場合だけですが、中国ではEC購入テクニックのひとつとして定着しています。
例えば、洋服や靴を買う場合、表示されているサイズが本当に自分に合うかどうかわかりづらいものです。そこで、3サイズぐらいを購入して、実際に着てみて、合うものを残し、それ以外を返品してしまいます。
また、色違いなども、現物を見ないと素材との関連で判断できないことも多いため、複数の商品を注文して、気に入ったものを残して、それ以外を返品します。返品は何も悪いことではなく、賢い買い物のテクニックのひとつになっているのです。販売業者もこのような返品は織り込み済みで、返品送料を無料にしたり、返金処理を早くするなどの工夫をしています。
また、独身の日セールでは、大量の返品が発生することがよく知られています。その原因は満減券と呼ばれるクーポンにあります。満減券は、例えば「1000元購入すると300円割引」という利用条件が設定された定額クーポンです。日本でもまったく同じものがあります。「300円割引!」というクーポンがあって、下の方をよく見ると、小さな字で「ただし、1000円以上ご利用の場合に限ります」と書いてあります。
このような満減券は、人気商品だけでなく、さらなるついで買いを呼び込むために利用されます。例えば、人気の売れ筋商品が960元である場合に、「満1000元減150元」のクーポンを配布します。960元の商品を買おうとしてこのようなクーポンを発見した消費者は考えます。追加で50元のものを買えば得ができる。合計金額は1010元になりますが、クーポンを適用して支払額は860元になります。クーポンなしで960元を知らうよりも100元も得ができるのです。
これでも販売業者は損をしません。販売業者には不良在庫になっていた50元の商品をはかしたい、あるいはその50元の商品を消費者に使ってもらって再購入を促したいなどの思惑があるからです。広告費やプロモーション費用を考えれば、ほとんど経費なしで商品を広めることができます。
しかし、消費者にとっては、その商品は本当にほしいものではありません。クーポンを使うために支払額合わせのために購入しただけです。中にはそれが思いがけず気に入ってファンになる人もいるでしょうし、箱も開けずに捨ててしまう人もいるでしょう。でも、多くの人は、その50元の商品を返品してしまうのです。そうすると、クーポンの適用額にはならなくなってしまいますが、多くの販売業者がうるさいことは言わず、素直に50元の返金に応じます。すると、この人は960元の商品を買おうとして、結局810元で購入できたことになります。販売業者は「返品をした」というデータが取れ、その消費者のプロフィールデータの分析精度が上がります。
そのようなことで、独身の日の返品ですら、消費者、販売業者双方が認める買い物テクニックのひとつになっているのです。
しかし、返品戦略はもはやあまり賢いテクニックとは呼べなくなっているかもしれません。これをゲームのように楽しんで、1元でも安く買うことに夢中になっている人もたくさんいますが、うんざりしている人も同じようにたくさんいます。
クーポンは満減券だけではありません。それが特定の店舗だけに適用できるのか、カートに対して適用できるかの違いもありますし、さらに割引率が決まっている条件付き定率クーポンもあります。また、紅包(ホンバオ)と呼ばれる現金送付(還元ポイントのような感覚)もあります。
さらにこれが利用できるタイミングであったり、「この商品を買ったら有効」など、さまざまな条件が複雑に組み合わさることになります。これはもはや「頭痛を起こす難解なパズル」とも言われていて、最適な組み合わせを見つけることは至難の業になっています。
なので、独身の日セールと言っても、数年前まではテンションがあがって、会社を休んで作戦を立てていたような人が、今では、日用消耗品をまとめ買いするだけになっていることも増えています。
独身の日セールは「得ができるから買う」というよりも、「他の時期に買うと損をするから買う」感覚になっているのです。
「中国ダブル11ネット購入消費信任洞察報告」(iResearch)では、ネット利用者に「今年2020年の独身の日セールで使う金額は、昨年のセールよりも多くする予定か、少なくする予定か」と尋ねました。
結果は40.9%の人が「多くなる」と答えましたが、「変わらない」と「少なくなる」を合わせると46.1%にもなります。数年前までは、11月11日は「中国人が買い物に熱狂する1日」と表現して間違いではありませんでしたが、現在は素直に「買い物に熱狂する日」とも言えなくなっています。
▲2020年のセールでは、昨年と比べてどのくらいお金を使う予定かを尋ねた結果。「多くなる」が40.1%いたが、「変わらない」「少なくなる」も増えている。「中国ダブル11ネット購入消費信任洞察報告」(iResearch)より作成。
となると、ひとつの疑問が湧いてきます。それは、なぜ多くの人が冷めているのに、アリババは昨年比39%増もの好成績をあげることができたのだろうかということです。
それには、アリババのしたたかなデータてクロノジー戦略がありました。今回は、今年の独身の日セールでどうして大幅な記録更新が可能になったのかをご紹介します。
続きはメルマガでお読みいただけます。
毎週月曜日発行で、月額は税込み550円となりますが、最初の月は無料です。月の途中で購読登録をしても、その月のメルマガすべてが届きます。無料期間だけでもお試しください。
今月発行したのは、以下のメルマガです。
vol.049:自動車に関心を示し始めたZ世代
vol.050:系列化が進む中国主要テック企業
登録はこちらから。
https://www.mag2.com/m/0001690218.html