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ライブコマースの広がりにより、消費者トラブルも急増。返品に関するトラブルが第1位

独身の日セール、ライブコマースの広がりによって消費者トラブルも比例して増えている。消費者トラブルを解決するプラットフォーム「電訴宝」は、2021年の独身日セールで起きた消費者トラブルの典型事例を公開したと網経社が報じた。

 

消費者トラブル第1位は返品

13年目を迎えた2021年11月11日の独身の日セール。現在では「双十一」という言い方が定着をしている。2009年にわずか27業者が参加するというささやかなセールから始まったが、今日では中国人のほぼ全員が参加すると言っても過言ではない規模のセールになっている。

しかし、多くの人が参加をすればトラブルも起こる。消費者トラブルを解決するプラットフォーム「電訴宝」(ディエンスーバオ、http://show.s.315.100ec.cn)を運営する網経社は、2021年の双十一騎間に146のプラットフォームに関する消費者クレームを受け付けたと発表し、その内容を「2021年双十一期間中国ECユーザー体験及びクレームデータ報告」として発表した。

これによると、やはり圧倒的に多いのが返品トラブルになっている。

この中で、生活サービスに関するトラブルの典型例が紹介されている。

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▲独身の日セールで起きた消費者トラブルの統計。返品に関するものが圧倒的に多く、ライブコマースの広がりとともに虚偽広告のトラブルも増加傾向にある。「2021年双十一期間中国ECユーザー体験及びクレームデータ報告」(網経社)より作成。

 

便の変更をするには紙のバウチャーが必要?

重慶市のある女性が10月24日に、旅行予約サイト「飛猪」(フェイジュー)で、中国国際航空のCA4767(重慶14:30ー済南16:30)のチケットを1560元で購入した。ところが、都合によりCA4616(重慶19:10ー済南21:20)に変更をする必要が出てきた。飛猪の顧客センターに連絡をすると、便を変更するには紙のバウチャーが必要になると言われた。電子バウチャーしかな手元にないため、飛猪で紙のバウチャーの発行手続きをしようと思ったが、その項目が用意されていない。顧客センターは紙のバウチャーがなければ便の変更はできないと言い張るだけで、紙のバウチャーを発行する手続きのやり方は教えてくれない。女性は強い不満を感じた。

 

隔離により行けなくなったコンサートチケット

江蘇省のある女性が10月14日に、11月6日に蘇州で開催されるロックバンド「ニューパンツ」のコンサートのチケットを購入した。10月31日に上海ディズニーランドに遊びにいったため、蘇州に戻ると14日間の自己隔離をしなければならず、コンサートに行くことができなくなってしまった。そこで、新型コロナが原因のキャンセルとして全額を払い戻してもらうことにした。しかし、運営側は、14日間の隔離になることはわかっていたことで、コロナが原因ではなく、個人的な原因だとして、払い戻しを拒否している。

 

チケットに有効期限があることが提示されていなかった

湖北省のある女性が10月13日に、ザリガニレストランの食事券を178元で購入した。しかし、実際にレストランに行ってみると、この食事券は有効期限が10月31日まであることが発覚をした。女性は有効期限に関する提示がなかったとして、返金を求めたが、運営は購入から3日以内の返品しか受け付けていないと拒否をした。

 

年間チケットの内容の説明が不足していた

江蘇省のある女性が、11月7日に、テーマパーク「蘇州楽園」の家族年間パスポートを購入した。しかし、24ヶ月の子どもと蘇州楽園に行ってみると、年齢の問題から、子どもと一緒に乗れるのはメリーゴーラウンドしかないことがわかった。女性は返品を希望したが拒否をされた。そこで、一度は入園したのだから、1回分の入園料を支払うことで年間パスポートを返品させてほしいと交渉したが、これも拒否をされた。

 

責任の所在が不明確

山東省の男性が、美団(メイトワン)で、麻辣燙のフードデリバリーを注文した。しかし、食べている最中に髪の毛が入っていることを発見した。美団にクレームを入れると、美団は直接飲食店に連絡をして当事者同士で解決してほしいという。男性は、美団がトラブル解決にあたるべきであり、食品安全法に規定されている通り、代金の10倍を払い戻すべきだと主張している。

 

消費者に不利な覇王条款は無効

広東省のある男性が、11月2日に広東省清遠にある仏岡碧桂園のコテージのチケットを購入した。しかし、実際に予約をしてみると、常に満室で予約がまったくできない。そこで返金をしてもらうとしたが、購入条件に「利用ができなくても返品はできない」と定められていた。男性は、これは消費者に不利な契約を押し付ける覇王条款にあたり、無効な契約条件だと主張して、返金を求めている。

 

購入記録が消えて予約ができない

山東省のある女性が、温泉とホテル、食事のセット券を498元で購入した。そこで、ホテルに予約を入れようとしたが、セット券の購入記録がないという。顧客センターに連絡をしたが、そこでも購入記録がないという。女性は手元にある購入記録などを送ったが、顧客センターは購入記録がない以上、予約はできないと主張するばかりだった。女性は、このような問題は他でも起きており、場合によっては詐欺行為になるのではないかと主張している。

 

連絡が取れず、返品可能期間をすぎる

貴州省のある女性が、10月25日に服を購入した。しかし、商品が到着をしてみると気に入らなかったので、7日間無理由返品制度を利用して返品をしようと考えた。顧客センターに連絡をすると、チャットボットが応対をし、返品手続きをするには人間のスタッフが対応する必要があるという。そこで、人間のスタッフに連絡をしようとしたが、まったく電話に出てもらえない。返品希望の旨を2回にわたってメッセージに残した。しかし、まったく連絡がない。さらに数度に渡ってメッセージを残すと、ようやくWeChatでメッセージが送られてきた。それは、7日間の返品期間をすぎてしまったので返品はできないというものだった。女性は、返品を希望する旨を告げた時は7日以内だったのだから返品を認めるべきだと主張している。

 

フードデリバリーが勝手にキャンセルされた

天津市のある女性が、11月13日17時14分にウーラマでフードデリバリーを注文した。しかし、なかなか配達されてこないので、配達スタッフに連絡をすると、スタッフは間違った場所に届けてしまったため、時間がかかるという。さらに、女性のマンションの敷地内に入ることができないため、玄関のところで待っていてほしいという。女性は同意をして玄関で待っていた。しかし、それでも配達されてこない。18時9分にアプリで状況を確認すると、スタッフの現在地は表示されず、しかも、勝手に注文が取り消されていた。配達スタッフが勝手にキャンセルをしてしまったようだ。女性は配達されてこなかったのだから、返金をしてほしいと主張している。

 

発送してもらえない商品

北京市の男性が、ある商品を購入し、7日以内に発送するということだった。しかし、7日経っても発送がされない。顧客センターに連絡をすると、15日以内に発送するという。しかし、15日経っても発送がされなかった。さらに顧客センターに連絡をすると、発送はしたが、配達スタッフがあなたと連絡がつかなかったため、商品を持ち帰っているという。しかし、荷物番号などから検索をすると、荷物は発送地である深圳市から外に出ていない。あまりにいい加減だと、購入のキャンセルと返金を主張している。

 

紛争解決まで行う消費者プラットフォーム

中国では、消費者権益保護法により、「7日間無理由返品」と「覇王条款」が定められている。ECで購入した商品は、使用すると価値を失う一部の製品を除いて、購入後7日間は理由を問わず返品ができる。また、消費者に不利な契約内容は無効となる定めがある。

しかし、それでも消費者トラブルは起きている。そのため、各地方政府の消費者員会は、クレームの受付プラットフォームを運営している。さらに、「黒猫投訴」(https://tousu.sina.com.cn)「電訴宝」のような民営のプラットフォームもある。

このようなプラットフォームでは、消費者からのクレームを受け付けるだけでなく、法律などの専門家を用意し、紛争解決まで行ってくれる。

消費者トラブルは一時減少傾向にあったが、近年のライブコマースの広がりによって、「話と違う」という虚偽広告、品質問題のトラブルが再び増加傾向にあるという。