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ぜんぜんWellじゃなかった無人コンビニ体験「Well Go」

中国では、無人コンビニの開業が相次いでいる。今、最も投資資金の集まりやすい分野であるため、先行者利益を狙って、「とにかく開業してしまえばなんとかなる」という空気があるからだ。しかし、中には問題が多い無人コンビニもあると移動支付網が報じた。

 

次々と登場する無線タグ、セルフレジ式の無人コンビニ

移動支付網が体験取材をしたのは、広東省深圳市に開業したWell GOの1号店。南山区の天虹総本部ビルの南西の屋外に設置された。面積は12平米とミニサイズ。この中に約300種類の商品が陳列されている。

入店をするにはアプリから事前登録することが必要で、登録後はドアにあるQRコードを専用アプリで読み取ると、自動ドアが開いて中に入れる。商品にはすべて無線タグがつけられていて、欲しいものを手に取り、出入り口付近のレジに置く。すると、自動計算されるので、スマホ決済をすると、再び自動ドアが開いて、外に出られる。

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広東省深圳市に開業した無人コンビニ「Well GO」。空きスペースをうまく利用したコンテナ型店舗だ。

 

商品補充の頻度が多ければ無人にする意味がない

移動支付網では3人の記者が、早速このWell GOを体験してきたが、それは理想とはかけ離れたひどい体験だったという。

まず、12平米、300種類の商品というバランスがおかしいのではないかと記者は疑問を呈する。狭い中に多くの商品を陳列しているために、1種類あたりの商品の個数が少ない。これではすぐに売り切れてしまう。実際に、売り切れになっていて補充されていない商品が目立ったという。

この販売機会損失を避けるためには、補充スタッフが頻繁にやってきて、商品を補充しなければならない。でも、だったら「無人コンビニにしている意味がないんじゃないの?商品スタッフが常駐したっていいんじゃない?」と記者は疑問を呈している。

 

風が吹いたら閉まらなくなる自動ドア

Well Goの自動ドアは、スライド式ではなく、なぜか一般的なドアと同じ開閉式。これがいったん開くと、風が吹いているためにきちんと閉まらない。本来は、入店するといったん閉まって、清算を済ませないとドアが開かない仕組みになっている。しかし、風で開きっぱなしなので、いくらでも精算をせずに、商品を持って外に出てしまうことができる。

もちろん、監視カメラがあり、個人認証もされているので、そのような違法行為をすれば、会員資格が取り消されて、二度と入ることはできなくなる。しかし、サービスを提供する側はこのような不備を放置すべきではない。本来、万引きなどまったくする気がない人であっても、ドアが開いていることに気がついたら、魔がさすということがある。真っ当な優良顧客を犯罪に誘導してしまうことになるのだ。また、精算が済んだものだと勘違いをして、そのまま商品を持ったまま出てしまう人も出てくるだろう。

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▲移動支付網の記者が描いた解説図。スライド式ではなく開閉式のドアであるため、風が吹くと閉まらなくなる。

 

毎回、清算金額が違ってしまうレジ

さらにひどいのは、レジだったという。3人でまったく同じ商品を同じ個数だけ買ったのに、人によって精算金額が違っていた。認識率が低く、精算ミスがあり得ないほど頻発しているという。

おそらくレジの設計に問題があるのだろう。同じ商品でも置き方によって、認識ができない商品が出てしまうようだ。

レジ横には、どうしても認識ができない商品を返却するボックスが用意されているが、そこにはすでに商品がいくつか入っていた。未精算の商品があると、出口のドアが開かないため、購入をあきらめて、商品を返却しているものだと思われる。

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▲セルフレジの様子。置き方などでも誤認識が発生した。毎回、精算金額が違ってしまう。レジ横には、購入をやめる商品を入れる箱が置かれているが、すでにかなりの数の商品が入れられていた。うまく精算ができず、購入をやめたものだと推測される。

 

無線タグの分、割高になっている商品価格

また、無線タグをつけるには、その無線タグのコストとそれを商品につける人件費コストがかかる。そのため、Well GOの商品は、他のコンビニに比べて0.5元から1元程度割高になっていた。

消費者にとっての無人コンビニの利点は、レジに時間がかからないので、レジ待ちをしなくていいということと、人件費コストの分、他のコンビニもよりも安く買えるということだ。しかし、どちらもWell GOでは実現できていない。

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▲使われているRFID無線タグ。この認識率が悪く、トラブルを起こしている。

 

無人コンビニスタートアップの淘汰の時期は近い

今、中国では無人コンビニ事業には投資資金が集まりやすい。そのため、安易に開業している無人コンビニも登場してきている。Well GOがそのような安易なスタートアップなのかは、今のところまだわからない。

自転車ライドシェアのofoは、開業当時、GPS非搭載、電子鍵も非搭載ということで、かなりの数の自転車が私物化されてしまうという問題を起こしていた。しかし、半年ほどで、問題をひとつひとつ解決していき、現在では自転車ライドシェアのトップリーダーとなっている。

Well GOも、現時点ではあまりにもひどすぎるが、今後の改良次第でどうなるかはわからない。Well GOのスタッフたちが、どこまで努力し、工夫できるかにかかっている。

しかし、全体を見ていると、中国の無人コンビニは、あと数ヶ月で淘汰の季節を迎えそうだ。そこで生き残った無人コンビニが、市民生活に定着していくことになる。

tamakino.hatenablog.com

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