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レールがない公道を走る次世代路面電車「スマートレール」

レールがない公道を、仮想レール上を走行する「スマートレール」の試験車両が、湖南省株洲市で公開された。レールの敷設が必要なく、低コスト、短期間で路面電車を走らせることができる。2018年の営業運行に向けて、着々と試験走行が行われていると中国新聞網が報じた。

 

道路を走る電車「スマートレール」

このスマートレールは、中車株洲電力機車研究所が開発したもの。見た目は、一般的な路面電車と変わらない。しかし、違いは鉄の車輪ではなく、ゴムタイヤの車輪であり、レールではなく、一般的なアスファルト道路の上を走行する。

レールは、道路上に特殊塗料で描き、スマートレール車両はこの塗料を追跡しながら走行するため、運転手がハンドル操作のようなことをする必要はない。特殊塗料でペイントするだけでレールが敷設できるため、路線計画を立てて、営業までが1年以内という短期間で済む。1年かかるのは、路肩に電車と通信するための設備を一定間隔で設置する必要があるのと、一般車両との混合通行になるため、信号機や走行レーンの整備が必要となるためだ。

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湖南省株洲市で公開されたスマートレール試験車両。色と形から、ネット民の間では「大毛虫」と呼ばれ始めている。

 

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▲地面には軌道の代わりとなるペイントが描かれている。このペイントには特殊塗料が使われ、車両はこれを感知しながら走行する。

 

安く、早く開通できるスマートレール

研究所によると、1kmあたりの建設コストは、一般的な路面電車に比べて、1億元(約16億円)以上は安くなるという。中車株洲電力機車研究所の馮江華(ふう・こうか)副社長、エンジニア長は、中国新聞網の取材に応えた。「一般的な地下鉄の建設費は、1kmあたり4億元から7億元(約114億円)です。路面電車では1.5億元から2億元(約32億円)です。スマートレールの場合は、道路や信号機のわずかな改造だけで済みますから、路面電車の1/5のコストで建設ができます」。

また、運行後に乗客の意見を聞いて、路線を変更することが実に簡単になる。あらかじめ、迂回路の設定を行っておけば、渋滞が発生した、道路にトラブルが起きたという場合に臨時に迂回路を走行することも可能だ。

この列車は最高時速70km。1車両で100人が乗車でき、株洲市は3両編成または5両編成での運行を想定している。この車両編成も固定ではなく、乗客数に応じて、弾力的に運用する予定だ。

電力供給も必要なく、バッテリーで駆動する。10分の充電で25kmを走行できる。


虚拟轨道列车 “智轨”

▲公開されているスマートレールのデモ映像。スマートレールの利点がわかりやすくまとめられている。

 

公共交通が追いつかない新興都市に適したスマートレール

株洲市では、2018年の営業運行を目指して、走行試験と計画を進めている。馮江華副社長は言う。「2020年までに、中国はさらに都市化が進み、100万人都市が新たに80都市誕生します。しかし、そのうちの80%は、地下鉄や路面電車の建設が間に合わず、自動車とバスに頼ることにより、深刻な交通渋滞を招くことになります。これは都市の病気です」。

スマートレールは、このような新興都市に狙いを定めて導入をしていくという。さらに、大都市の補助的な公共交通として、また市街地と観光地を結ぶ観光電車としても適しているという。

都市の公共交通課題を解決するものとして、ライトレール(軽量、高速な路面電車)が注目をされているが、スマートレールは、次世代ライトレールとして注目をされている。中国の中都市では、数年で「道路を走る電車」が見られるかもしれない。


中车株洲新型城市交通工具 全球首列虚拟轨道列车发布 可无人驾驶 | 株洲发布

湖南省株洲市で公開された走行試験の取材映像。線路がないだけで、ごく普通の路面電車と変わらない。音も静かだ。

プラレール プラレールをはじめよう! レールベーシックセット

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