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中国の無人コンビニBingoboxが、1年で5000店舗出店を計画

Amazon GoなどのICT技術を使った無人店舗が話題を呼んでいるが、中国ではすでにBingoboxが10店舗を運営し、今後1年で5億元(約83億円)を投じて、5000店舗を開設する予定だと澎湃新聞が報じた。

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▲Bingoboxの外観。ガラス張りで、開放的な店舗デザイン。コンテナ設置方式なので、設置も移動も簡単だ。

 

すでに10店舗が営業中のスタッフレスコンビニ

現在、中国では24時間営業の無人スーパー、無人コンビニのスタートアップが乱立し、激しい競争をしている。その中で、頭ひとつ抜けてきたのが、Bingobox(ビンゴボックス)だ。昨年8月、広東省中山市に1号店を開設し、現在、中山市と上海市で合計10店舗を運営している。

Bingoboxは、店舗をコンテナ方式にしているので、簡単に設置、移動ができる。中型ボックスと大型ボックスの2種類が用意され、中型は4.8×2.6m、大型は6×2.6mの大きさがあり、それぞれ500種類、800種類の商品陳列が可能。

コンテナ方式なので、場所さえ確保できれば簡単に設置ができ、場合によっては人の流れによって、場所を移動することもできる。

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▲店舗内は、広くはないが、飲料、菓子類など500種類から800種類が陳列されている。

 

低コストで商品価格も安く設定されている

入店をするには、入り口でスマートフォンのWeChatペイのQRコードを読み込ませて本人確認をすると、自動ドアが開き中に入れる。店内の商品にはすべてRFIDタグ(近距離無線タグ)がつけられている。商品を選んだら、出口近くの精算用スキャナーの上に置くと、自動精算され、スマホのアリペイ、WeChatペイなどで支払いをすませると、出口の自動ドアが開く仕組みだ。

また、店内での行動は、顔認識機能がある監視カメラでモニターされているため、すでに数万人の利用者がいるが、万引きや故意による商品破損などは1件も起こっていないという。

RFIDタグの製造コストと商品への貼り付けコストは、1件あたり0.3元から0.5元程度で、全商品にタグをつけるコストは、スタッフ1人を雇用するコストもよりも小さいとBingoboxは説明している。また、コンテナ方式であるために、開店に必要な初期コストは、一般コンビニの1/4であり、営業コストは15%以下。どの商品がどれだけ売れたかというPOSデータもリアルタイムで取得するため、商品補充などの作業も効率的に行える。そのため、一般コンビニで2.5元で販売されている缶コーラが2.2元など、販売価格も一般コンビニよりも安く設定できる。

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▲店舗内は狭く、7、8人程度でいっぱいになる。左の入り口で、スマートフォンを使って本人確認をすると、ドアのロックが解除され、中に入ることができる。

 

暑さ対策、違法建築問題などトラブルも

ただし、問題も起きている。商品の誤認識により、精算金額が間違っているというトラブルが数件起きた他、上海欧尚店では、連日の暑さにより、チョコレート製品が溶けるというトラブルが起き、7月7日に営業をいったん停止した。防犯と開放的なデザインの両面から、ガラス張りの店舗デザインにしたため、直射日光が店内に入り込み、商品に悪影響を与えてしまった。エアコンは設置されているものの、利用客からも「店内が暑い」というクレームがあがっていた。「欧尚店は人気となり利用客が多かったため、エアコンの許容量を超えてしまいました。実際、10店舗のうち、このような問題が生じたのは欧尚店のみで、他の9店舗は通常通り営業しています」。

店舗前に遮光の日傘を設置する、店内のエアコンを増強するなどの措置を取り、13日に営業を再開したが、今度は上海市城市管理行政執法局から注文がついた。Bingoboxの店舗は、コンテナを運んできて置き、地面に止めているだけで、基礎を打っているわけではない。このため、建築コストが下がり、人の流れを見て、場所を簡単に移動できるという利点が生まれている。しかし、城市管理行政執法局では、基礎を打っていない建築物は違法建築の疑いがあると通知したのだ。現在、執法局の担当者とBingoboxで協議をしている。

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▲出口近くのスキャナーに商品を置くと、RFIDタグを読み取って自動清算が行われる。支払いはアリペイ、WeChatペイなどのスマホ決済。

 

1年で5000店舗の強気の出店計画

このようなトラブルはあるものの、Bingoboxは「1年以内に5000店舗」という強気の計画を進めている。必要な資金は5億元とされるが、中国系ベンチャーキャピタルからすでに1億元は調達済みだ。

集合オフィスビル、住宅小区(居住者のみ入れる集合住宅)などからの出店要請も多く、また地下鉄の出入り口の空きスペースを利用した出店も多く計画されているようだ。

中国のセブンイレブンは現在1500店舗、ローソンが1000店舗。最も出店数の多い国内系の易捷(イージエ)でも2万5000店舗。しかも、易捷はBingobox中型程度の小規模店舗が多い。1年後、中国のコンビニ地図が塗り替えられている可能性もある。

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