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街の中を走る“低速”リニアモーターカー

中国上海市で、次世代リニアモーターカーの試験走行が始まっている。このリニアは時速120kmという”低速”で走行する。次世代リニアは「低速」が最大の特徴なのだという。早ければ1年後には、路線建設に着手すると新華社大連が報じた。

 

リニア先進国が手がける次世代リニアは「低速」

中国はリニアモーターカーの最先端国だ。上海市郊外の竜陽路と上海浦東国際空港の約30kmを7分20秒で結ぶトランスラピッドは、営業最高時速430km、試験での最高速度は501km。リニアの営業路線は、英国、ドイツ、日本などもにもあるが、いずれも最高速度は100km程度に抑えた運行をしている。超高速での営業運行をしているのは、世界でもこの上海のトランスラピッドのみだ。

当然、さらなる高速を目指したリニアの建設も計画されているが、今回公開されたのは、一転して最高速度120kmの”低速”リニアであるという。なぜ、低速のリニアが必要なのだろうか。

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上海市内と上海浦東国際空港の間30kmを結ぶ超高速リニア。営業最高速度は時速430km。超高速営業運転リニアは、世界でもここにしかない。

 

リニアには、静か、力持ち、安いのメリットがある

中国工程院、西南交通大学の銭清泉(せん・せいせん)教授は、新華社の取材に応えた。「我が国は、リニア技術で世界でも最高水準を誇ってきました。低速リニアは、新しい時代のリニアなのです」。中国工程院では、すでに8年間、低速リニアの開発研究をしてきたという。

銭清泉教授は、低速のリニアの利点は3つあるという。ひとつは低騒音であること。現在、鉄道系ではリニアが最も低騒音であるという。2つ目は、登坂能力が高いこと。地下鉄の場合、30パーミルの登坂が限界だが、リニアであれば100パーミルまで登れるという。また、カーブでの走行速度も早いため、複雑な路線でも走行することができ、トンネルなどを使わない路線計画が立てられる。建設コストが通常の鉄道に比べて大幅に下がる。3つ目は、レールの磨耗がないので、ライフタイムのメンテナンスコストは一般の鉄道に比べて安くなる。

銭清泉教授は、低速リニアは、このような利点を持っているため、都市交通に向いているのだという。

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▲試験走行が開始された低速リニア。最高速度は120kmで、登坂能力も高い。イメージとしてはモノレールのように都市の中を走ることになる。

 

路面電車と同じ運搬力、地下鉄より安い低速リニア

鉄道系都市交通は、従来路面電車と地下鉄が主体だった。低速リニアの建設コストは、路面電車よりは高いが、地下鉄よりは安くなる。運搬能力は、路面電車とほぼ同じで、地下鉄よりは小さいと見積もられている。

都市の場合、高架、地下道などが複雑に絡み合い、鉄道を新設しようとすると頻繁に上り下りをさせなければならなくなる。それを避けようとすれば、深い深度に地下鉄を建設するしかなく、建設費は莫大になり、利用者の利便性も悪くなる。

登坂能力の高い低速リニアは、都市の基本鉄道としてではなく、後付けで建設する補助路線に向いているのだ。

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▲走行音は静かであるため、都市交通に向いている。レールの磨耗もないので、ライフタイムでのメンテナンスコストは一般的な鉄道よりも安くなるという。

 

急激な都市化に追いつけていない公共交通網

中国では今、農村に囲まれた小さな町の人口が急激に増加し、都市化するという現象が起きている。農村から次々と町に人が移り住んでくるからだ。しかし、そのような新興都市は、都市計画をする暇もなく、無秩序に拡張されていっているのが現状だ。

そこで、スマートレールのような新しい公共交通の開発も進められている。この低速リニアもそのような新時代の都市交通のひとつとして考えられている。この低速ニアは、上海だけではなく、北京、天津、武漢成都などさまざまな都市で試験運行が始まっている。2020年には、少なくとも5都市で、低速リニアが開業すると見込まれている。

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