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広州市に無人書店。始まるロングテール商品小売の無人化

広州市のオフィス街に無人の書店「風向未来」がオープンした。スマホ認証で入店、セルフレジによりスマホ決済で購入という仕組みだ。店舗での体験が重要視される書籍のようなロングテール商品は、今後も無人店舗化が進んでいくのではないかと南方plusが報じた。

 

無人コンビニの技術を使った無人書店

無人書店がオープンしたのは、広州市の天河区の中信ビルの5階。高級ショップが立ち並ぶ一角だ。この無人書店「風向未来」は、無人コンビニ「EASY GO未来便利店」の技術が使われている。

スマートフォンのWeChatペイのQRコードで認証をしてドアを開け店内に。書籍にはすべてRFID電子タグがつけられていて、セルレジで精算をすると、出口のドアが開くという仕組みだ。

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広州市のショッピングビル内にオープンした無人書店「風向未来」。内容の濃い人文、経済の専門書が中心に置かれている。

 

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無人コンビニ「EASY GO未来便利店」の店内。この技術が、無人書店にも使われた。

 

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▲EASY GOでは、大きめの電子タグを利用している。無人書店では、ほぼ同じ電子タグが書籍につけられている。

 

店内の静かな環境を重視する無人書店

中信ビルはショッピングモールとオフィスエリアがある高級な雰囲気のある場所。客層を考えて、書籍の品揃えも人文と経済が中心になっている。買い物のついでによる人、オフィスに勤めている人などが主なお客だ。

客数は決して多くないが、それがかえって静かな環境を生み出し、落ち着いてじっくりと本を選ぶことができると好評だ。中国の都市は、書店の数が少ないかわりに多くが大規模書店であるため、書店はいつも混雑をしている。学生などは、床に座り込んで「立ち読み」をしているのが普通で、書店側も目をつぶっているようなところがある。そのため、書店は常にざわついている雰囲気なのだ。

中国の書店は、本を売る商店である前に図書館の役割を果たしている。来店客は、目的の商品を見つけて買って帰るというのではなく、目的の本を決めずに書店を訪れ、自分の趣味と合う本との出会いを期待している。そのためには、じっくりと立ち読みをする環境が必要なのだ。気に入った本を見つけた場合、立ち読みで最後で読み切るのは難しいので、その本を買って帰る。

日本の書籍は、次第に内容がライトになり、薄い新書やコミックであれば、30分程度で立ち読みできてしまうので、あまりに立ち読み環境をよくしてしまうと、タダで読まれてしまい売上が立たないというジレンマがあるが、中国の場合、内容の濃い書籍がまだまだ中心であり、立ち読み環境を快適にすることは売上増につながるのだ。

EASY GOの創業者である王牧牧は、南方Plusの取材に応えた。「書店を無人化することは人件費の削減というメリットもありますが、顧客のIDを認識するということも重要です。顧客の読書傾向を分析して、おすすめの本を紹介することができるようになるのです」。

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▲専門書中心に無人書店であるため、店内は静か。来店客は、じっくりと本を選ぶことができる。状況を見て、ソファを置くことも考えられている。ただ「本を売る」のではなく、「体験を提供して、結果として購入しもらう」のが狙いだ。

 

顧客IDを取得することで精密なリコメンドが可能に

無人書店「風向未来」は、無人化して人件費を抑えるだけでなく、快適な立ち読み環境を提供し、リコメンドを行うことで、顧客の読書体験を豊かなものにしようとしている。

この発想は、他の嗜好品小売業にも応用することができる。例えば、音楽CDや映画DVDの販売店。例えば、Tシャツ専門店。このような業種では、無人化をすることにより、ユーザー体験をかえって向上させられる可能性がある。風向未来が成功するかどうか、小売業の各方面から注目を浴びている。

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▲入店するときは、スマホ認証を行い、自動ドアを開ける。個人IDがわかるため、個人に合わせたリコメンド、マーケティングが可能になる。

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