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台湾台北市で、セブンイレブンが無人店舗を試験開業

中国本土で続々と登場している無人コンビニは、隣国にも飛び火をし、韓国でも開業、さらに台湾ではセブンイレブン台北市無人コンビニ「X-STORE」を公開したとIT情報局菊長が報じた。

 

台湾で最初の無人コンビニが試験開業

このX-STOREは、正式開業したものではなく、台北市東興路のセブンイレブン本部内に開店したもので、台湾セブンイレブンを運営する統一超商の社員が利用し、テスト運用をしている。店舗面積は22坪。

韓国でセブンイレブンを運営するコリアセブンは、すでにソウル市のチャムシルロッテワールドタワー31階に無人レジ店を開業している。このX-STOREが正式開業になれば、中国、韓国に続いて無人コンビニが開業することになる。入店には顔認証を行い、支払いはiCash(統一超商が運営する電子マネー)で行う。ポイントを付与するOPENPOINT会員が利用することができる。また、清掃は自動ロボットが行う。

冷蔵陳列棚は、来店客が近づくと自動的に空くが、エアカーテンを使って、冷気を外に逃さないようになっている。来店客が遠ざかると、自動的に閉まる。

商品には電子タグがつけられ、これをセルフレジで精算する方式だ。

また、42坪のイートインコーナーが124席設けられ、コーヒーなどを飲んだり、食事を自分で電子レンジを使って温めて食べることができるようになっている。

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台北市東興路にある台湾セブイレブン運営会社「統一超商」の社内に試験開業したX-STORE。スマホで認証して入場し、セルフレジで清算する。

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▲商品には電子タグがつけられている。個人認証もされているので、誰がどのような商品を購入したか、詳細なデータを収集できる。

 

スタッフが常駐する台湾独自の「無人方式」

このX-STOREは、中国の無人コンビニとは違って「スタッフを常駐させる」という点が異なっていて、ここが普及のカギになるかもしれない。店員は、レジ作業はせず、主な仕事は商品の補充、陳列、管理になる。空いた時間を、来店客の補助、そして試食品を勧めるなどの営業活動に充てることになる。

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▲入場するにはスマホ認証、顔認証など複数の認証方法が用意されている。

 

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▲商品はセルフレジで清算する。電子タグで読み取りを行い、支払いはiCash(電子マネー)で行う。

 

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▲購入した食品はそのままイートインコーナーで食べることができる。電子レンジもセルフで利用する。

 

ITと人を組み合わせることで、幅広い世代に利用されるibon

台湾ではibon(アイボン)と呼ばれる自動発券機がコンビニに置かれている。機能としては日本のコンビニに置かれている自動発券機と同じで、新幹線や高速バスのチケットが購入できるというものだ。しかし、台湾のibonは面白い仕組みになっていて、使いやすいことから、若者層だけでなく、年配の人にも利用される広がりを見せている。

例えば、新幹線のチケットを購入したい時、スマートフォンからibonにアクセスして、列車や座席を選んで予約をするが、この時にユーザー登録などは必要なく、匿名で予約ができる。予約番号が発行されるので、コンビニのibon発券機に行き、予約番号を入力(あるいはQRコードをスキャン)して、発券をし、料金はコンビニのレジカウンターで支払うという方式だ。

ユーザー登録が不要という点がミソだ。パスワードを設定したり、決済カードを登録したりする必要がないので、簡単に予約ができる。年配の人が、こういうITシステムをうまく使いこなせなくなってしまうのは、ユーザー登録やアカウント情報の管理が難しいからだ。

しかも、発見はコンビニのibon発券機で行うので、操作がわからなければ、店員に助けを求めることができる。台湾の人は温厚な人が多く、店員は親切に教えてくれるし、それでレジを待たされることになる他の客も嫌な顔をすることはない。このため、スマホの操作が苦手な中高年でも、ibonを使いこなすことができ、生活に定着することになった。

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▲台湾のコンビニに普及しているibon。ネットでチケット予約をして、ibonで発券し、コンビニのレジで料金を支払う。ユーザー登録などの面倒がないので、中高年、高齢者にも利用されている。わからない時は、コンビニの店員が親切に教えてくれるので安心感があるからだ。

 

台湾独自の「IT+人」方式が成否を分ける鍵になる

この「最後は人がフォローするITシステム」という発想は、他の国にはあまりなく、台湾独特のものであるかのように見える。X-STOREも完全無人化するのではなく、最小限のスタッフを常駐させるというのは、台湾人のこのような感覚から出てきているのかもしれない。

中国の無人コンビニは、両手離しで成功しているとは言えない。利用客にしてみれば、便利に使えればそれでいいので、無人であるか有人であるかは重要なことではない。しかし、「無人」とうたうことで投資資金が集まるために、無人コンビニのスタートアップが続々と登場した。

しかし、台湾のX-STOREは、スタッフを常駐させ、より質の高い接客サービスを提供しようと考えているようだ。中国の無人コンビニの客は圧倒的に若者だが、台湾のX-STOREはibonと同じように、幅広い世代に利用されるコンビニになる可能性を秘めている。

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