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困窮する人に無料のオムレツを提供する「卞姐オムレツ」。その輪が広がり始めた上海

困窮する人に無料でオムレツを提供しているオムレツ店がある。しかし、「無料のオムレツを食べさせてくれ」とは言い出しづらいだろうと考え、「Aセット」という名称にしている。他の客と同じようにレシートも出し、その額が0元になっているだけというものだ。このような無料で提供する飲食店の輪が広がり始めていると新民晩報が報じた。

 

困窮する人に無料提供するオムレツの店

上海市で、無料で食事を提供する飲食店が増えている。「卞姐オムレツ」では、店頭にこういう掲示がある。

無料のオムレツ

もしあなたが上海で収入が途絶え、困難に直面しているのであれば、この店で寄り添いセットを注文してください。食べ終わったら、そのまま帰ることができ、支払いは必要ありませんし、遠慮をすることもありません。

今後、あなたの状況がよくなったら、必要としている人を助けてあげてください。

▲卞姐オムレツの掲示。困窮をしている人であれば誰でも無料でオムレツが食べられる。

 

個人店だからできる無料サービス

こんなことをしたら、みんな無料で食べてしまうのではないか。このオムレツ店が、卞永愛さんの個人店舗であることが大きい。時々、若者がやってきて、この掲示を見て「オムレツが無料で食べられるの?」と尋ねてくる。しかし、卞永愛さんは「食べられますよ。困っている人には無料で提供しています。ところで、あなたのアリペイの残高を見せて」と笑いながら尋ね返すと、多くの若者は笑って、普通のお金を払うオムレツを注文してくれる。

▲無料でオムレツを提供している卞永愛さん。困窮する人の自尊心を気遣い、「Aセット」という名称で無料のオムレツを提供している。

 

困窮する人の自尊心を守るには

店主の人柄とオムレツの美味しさにより、卞姐オムレツは繁盛をした。そして、長楽路と陝西南路の交差点にやや大きめの店を出すことになった。ここは、人通りも多くかなりの数のお客がやってくる。その中で、無料のオムレツを続けるのは難しいのではないかと思い始めた。たくさんの人が行列をしたり、食事をする中で、「無料のオムレツをください」とは言い出しづらいのではないかと心配したのだ。

すると、娘の潘君さんが、ネットで知った話をしてくれた。ある店に、客の食べ残しをもらえないかという人がくるようになった。店主は、どのみち残飯として捨てるものなのだからかまわないけど、食べ残しではあまりにひどいと思い、饅頭をひとつ取って、それをあげようとした。すると、その人は断ったのだ。その人は食べ残しを食べ、その後、厨房に入り、食器をきれいに洗って返した。

つまり、追い詰められた人にも自尊心がある。他人に頼らざるを得ないが、でも、施しを受けることに抵抗があるという矛盾した気持ちに引き裂かれている。そのことに思いが至った店主は、「無料のAセット」を用意し、困った人は黙ってAセットを注文すれば、他の客と同じように店内で食べることができるようにした。もちろん、支払いは必要ない。

▲無料のオムレツを提供している「卞姐オムレツ」。無料の場合も、他のお客と同じように注文してもらい、席で食べてもらう。0元であるということ以外は他の客とまったく同じであるため、恥ずかしい思いをしなくて済む。

 

無料である以外は他のお客と同じ

卞永愛さんはその話に感動をし、Aセットの仕組みを取り入れることにした。卞姐オムレツにはいつも行列ができている。無料のAセットが欲しい人も、他の客と同じようにこの行列に並んでもらい、注文する時に「Aセット」と言ってもらう。スタッフもレシートを切り、テーブルに置く。ただし、金額は0元になっている。

0元という点が違うだけで、それ以外は他の客とまったく同じにする。卞永愛さんは、そうすることで、困っている人の自尊心を尊重しようとした。

 

有名な書家が揮毫をしてくれる

ある日、「卞姐オムレツ」に60歳ぐらいの身なりがきちんとした人がやってきて「Aセット」を注文した。困っているようには見えなかったが、人にはそれぞれ事情があると考え、無料のオムレツを提供した。その人は、食べ終わると、「ほんとうに無料で提供しているんですね」と言った。

この人は、有名な書道家の朱敬一氏で、「代金の代わりに」と言って、額を取り寄せ、揮毫をした。その書は「甜蜜的負担」(優しさにあふれた責任の意味)というものだった。

▲上海では、困窮する人に無料で提供する飲食店が増えている。多くの店が無料セットに名前をつけ、周りの客に気づかれずに無料の食事ができるようにしている。

 

寄付はもらわない卞姐オムレツ

現在、このような話がSNSで拡散し、「卞姐オムレツ」は繁盛をしている。それは、卞永愛さんにとっても嬉しいことだが、困るのは食事をして多く支払おうとする人が出てきたことだ。その人にしてみれば、少しでもお店の助けになればと考えてのことだ。

しかし、卞永愛さんはそれをもらってしまうと、何のためにAセットを提供しているのかわからなくなると感じている。Aセットを注文する人は、1日に10人ぐらいで、そのぐらいの負担であれば、お店の経営には問題がない。自分ができる範囲の中で、自分ができる人助けをしている。それが、寄付をもらってしまうと、話が違ってくる。寄付をしてくれるのではなく、自分ができる人助けを探してほしいというのが卞永愛さんの願いだ。

上海では、このような「Aセット」を提供する飲食店が増え始めている。