中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

22日間、新疆ウイグルへのEV旅。燃料費はガソリン車の1/3。かかった費用をすべて公開した旅行インフルエンサー

旅行に関する配信を続けている驢姐姐。念願だったEVを自分で運転して新疆ウイグルに行くという旅を、SNSで毎日配信した。燃料費はガソリン車の1/3程度で済んだということが話題になっている。かかった費用は、すべて驢姐姐旅行記で公開された。

 

EVを運転する3900kmの旅

驢姐姐(リュー姐さん)は旅行関連の配信者。以前から中国各地に旅行に行き、ライブ配信やムービーを配信し、人気となっていた。その驢姐姐が念願だった新疆ウイグル自治区に自分でEV車を運転していくという旅を実現した。

新疆ウイグル自治区は、中国の最も西の端にあり、北京標準時では生活実態に合わないため、2時間の時差がある新疆時間が使われているほど離れている。驢姐姐が住んでいる浙江省杭州市からウルムチ市までは約3900km。高速道路がつながっているが、それでも休みなく走っても39時間はかかる。

▲NIOのEVを購入し、22日間かけて新疆ウイグルを往復した。毎日、SNSで配信をし、この旅行が話題になっている。

 

EVでウイグルに行く思い切った旅

その長い距離を車を運転して旅をするだけでもたいへんなことだが、さらに、驢姐姐は運転する車に「蔚来」(ウェイライ、NIO)のes6を選んだ。今年で新エネルギー車に対する政府補助金がほとんど打ち切られるため、驢姐姐としてはEVを購入して、ウイグルに行く夢を実現するのは今しかないと思い切ったという。

その旅行記はもちろん各種SNSや動画共有プラットフォームを通じて配信されたが、驢姐姐はこの旅行にかかった費用をすべて公開している。果たして、EV旅行は燃料車に比べて安上がりなのか、それとも高くつくのか。その点で、驢姐姐の旅行記が話題になっている。

 

充電代は従来の燃料代の1/3以下

旅行の行程は、往復で22日間。走行距離は9800kmにも及んだ。この行程で、充電は合計46回。1日2回は充電をすることになる。

充電量は合計で2969kWh。充電費用は3985.42元となった。ただし、NIOが提供する無料充電が11回使えたため、実際に支払ったのは3389.71元(約7万円)となり、1kmあたりの費用は0.35元(約7.3円)となった。驢姐姐が以前に乗っていたジーラングラーでは1km当たりのガソリン代が1.2元であったので、1/3以下、一般的な燃料乗用車と比べても半分程度になった。

往復ともに高速道路を利用し、40ヶ所の料金所を通過し、35のETCゲートを通過した。合計で高速代は2934.91元となった。また、下道でも有料道路が五ヶ所あり、175元を支払ったため、通行量は合計で3109.91元となった。

▲驢姐姐はどこで充電したかもすべてSNSで配信した。ウイグルでも充電ステーションはじゅうぶんにあり、事前に場所と空き状況を確かめておくことで問題を感じたことはなかったという。

▲充電場所、充電量、料金などもすべて公開をした。燃料車の1/3のコストで済んだという。

 

キャンプに適した場所はなかなか見つからない

驢姐姐はキャンプの配信もしている。そのため、今回の旅行でもテントを携行し、可能な限りキャンプをしようとしたが、実際には適した場所はほとんどなかったという。結局バルクルで一晩テント泊ができただけで、3日は車中泊、その他はすべてホテルに泊まることになった。

驢姐姐が使うテントは、EVの後部に接続できるタイプもので、これであると、気候が厳しければ車のエアコンや暖房を使うことができる。ただし、気候はよく使う必要はなかったという。

キャンプをする機会が少なかったために、カナス湖では昼間にテントを張って、キャンプを楽しんだ。

▲バルクルではテント泊ができた。車の後部に接続し、エアコンをオンにすることで暖をとることができる。今回は気候がよかったためエアコンは必要なかった。

▲テントの横で、お茶を入れる驢姐姐。

▲カナス湖の風景があまりに素晴らしかったため、テントを張って、大自然を楽しんだ。

 

ペット可のホテルはまだまだ少ない

驢姐姐の今回の旅行は、愛犬を連れていた。このため宿泊に問題が生じた。グレードの高いホテルのほとんどはペット不可だからだ。そのため、スマートフォンでホテルにペット可であるかどうかを問い合わせ、予約を入れたが、実際にチェックインをしてみるとその場で断られたりと、ペットへの対応がまだまだ遅れていると感じたという。

あるホテルでは、ペット可ということでチェックインをした後、部屋に向かおうとすると警備員がペットを連れていることを咎め、支配人が出てきて、結局、1階の端の最も条件の悪い部屋に強制的に替えられるなどのトラブルもあった。

それ以来、理解のある民宿や小さな家族的なホテルを中心に泊まったため、宿泊費は安くあがった。合計で3495元となった。

▲カナス湖では、愛犬と一緒に大自然を楽しんだ。

▲宿泊をした場所と、その価格。高速道路では車中泊もした。ペット可の宿泊施設が少ないことが不満に感じたという。

 

ウイグルでは果物が安くとびきり美味しい

驢姐姐の計画では、毎日テント泊をし、朝はお粥をつくって食べ、昼と夜はその土地のものを食べるという計画だった。そのため、朝食用に300元ほどの食料を買って車に積み込んでいた。

食事にかかる費用は安く、昼食、夕食、その他のおやつとしての果物などを食べても1日100元にもならない。購入した食材と合わせてだいたい2500元ほどで済んだ。

驢姐姐はウイグルはスイカやハミウリ、葡萄といたた果物が安く、甘みがあって美味しいという。驢姐姐は普段は果物を食べすぎると、お腹が下ることが多かったが、ウイグルではどれだけ食べてもお腹が下るようなことはなかったという。

観光地はどこも入場料が必要になり、駐車場代が必要なところもある。ウイグルの観光地の入場料は決して安くない。8つの観光地を参観し、2つが無料で、6つが入場料が必要だった。合計で2210元となった。

▲朝は携行したお粥を食べ、昼と夜は土地のものを楽しむ。ウイグルの羊肉は安く、そして美味しい。

 

ウイグルでも充電ステーションは問題なし

この22日間の旅行費用は合計で1万4704.62元(約30.5万円)となった。新車であるので、車の保守費用などが不要ということもあるが、ガソリン代は大きく節約ができる。また、充電ステーションも数はまだまだ決して多くないとはいうものの、事前にスマホで検索をしておき、計画的に利用すれば不自由は感じなかったという。昼食の時や観光地を見学している間に充電をしておけば問題を感じない。

EVの充電が問題になるのは、時間に追われて移動をしようと考えるからだ。充電時間の30分から1時間が、大きな損失をしているかのように感じてしまう。目当ての充電ステーションがいっぱいだと、計画通り行程が進まなくなることに腹を立ててしまう。

しかし、そもそも自動車はEVであろうが、燃料車であろうが、渋滞に巻き込まれるリスクが常にある。時間通りに移動をしたいのなら、自動車で移動するより飛行機や高鉄を使った方がよっぽど早く、計画通りに移動ができる。自動車はそもそも時間に余裕がある移動の仕方であり、そのような使い方ではEVにも何ら問題は感じない。むしろ、お金が節約でき、環境負荷を減らすことができる素晴らしい移動ツールになる。

▲素晴らしい風景のカナス湖。